映画評「マイマイ新子と千年の魔法」

☆☆☆★(7点/10点満点中)
2009年日本映画 監督・片渕須直
ネタバレあり

新年あけましておめでとうございます。本年もよろしくお願い申し上げます。

小説家・高樹のぶ子の自伝的小説を片渕須直が映像化したアニメ映画。

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昭和30年頃の山口県防府市、小学3年生の少女・新子は想像力豊かで元気もいっぱい、千年前に国府のあった往時を偲ぶ。そんなある日東京からやって来た上品で内気な少女・貴伊子に興味を覚えて後を付け鍵っ子の為誰もいない家に上がり込んですっかり親しくなり、彼女を通して貴伊子も他の児童に溶け込み、子供らしさを取り戻していく。

貴伊子が“子供らしさ”を失ったのは、母親を幼い時に失い父親がいない昼間はは鍵っ子として現実的な対応をするうちに大人びた性格が身に付いたのではないかと想像されるが、ここでは“子供らしさ”とは“想像力”と言い換えて良い。“想像力”は即ち魔法でもあり、その点で片渕監督と無縁ではないという宮崎駿の「となりのトトロ」と通底する。

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背景もほぼ同じで、まだ日本の原風景が残っていた時代、過去を偲ぶ一方で未来を想像する楽しみのあった時代をたっぷりと画面の中に蘇らせ、我々大人の観客に子供時代にあった筈の想像力に思いを馳せさせる力がある。かつて僕は「となりのトトロ」を“大人にならないと解らない子供時代の素晴らしさを描いた作品”と称したが、本作もほぼ同じことが言えると思う。
 ただ「トトロ」は一見子供向けであるだけにそういう見方をした観客はそれほど多くなかったとは思われる。その逆に本作は明らかにそうした方向性が見える代わりに、残念なことにご覧になった方が極めて少ないらしい。「キネマ旬報」のベスト選出で殆ど無視されたのは触れた方が少ないからではないかと推測される。

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新子が、少女時代に防府に国守として赴任した父親・清原元輔についてきたという噂のある清少納言と自分をダブらせるお話の為に千年前との(頭の中での)行き来が激しいのだが、流れが途絶えがちになるのでさほど感心しない。

それより、男児たちと協力して作り上げたダム池に舞い込んできた金魚を貴伊子が化粧水で死なせてしまったり、警官である或る年上男児の父親を自殺に追い込んだ女のいる酒場に殴りこんだり、大好きな女先生が不倫の果てに別の男性に嫁いでいく、といった具合に大人の世界を覗かせる部分の方が強い印象を残す。新子の成長を促す様々な出来事である一方、残念ながら成長は多くの人間にとって想像力を失っていく第一歩でもある。

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このように大人と子供の境界を描いている点でも「トトロ」を彷彿とするが、要素を絞り切って展開した「トトロ」の純度に及ばない。とは言うものの、優れた作品なのでもっと多くの人に触れてもらいたいものであります。ジブリとか宮崎駿という冠を被せればきっと数十倍もヒットをするのだろうがなあ。

本作を新年最初の記事にしたのは「子と千」を縮めると【新年】になるからです。

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この記事へのコメント

南瓜
2011年06月26日 21:02
マイマイ新子と千年の魔法は絶対に観るべき映画です!!
私は高校2年ですが、そんな私でも感動して、何回も観たくなる映画です。

友達や家族に会いたくなりました。

優しく、爽やかで、ふわふわした気持ちにさせてくれる素晴らしい映画です!!
コトリンゴさんの主題歌も本当に素晴らしくて、思わず涙が出てきました。

もっともっと、色んな人にみてほしいです!!!!!!

いちばんすきな映画です。
オカピー
2011年06月27日 15:50
南瓜さん、初めまして!

今は、人間の嫌な部分を嫌らしく見せる映画が多いので、この人間の良い部分を見せてくれるこの作品が、公開当時余りヒットしなかったのは残念ですね。
その後じわじわと口コミで多少ご覧になった方が増えたようですが、ジブリ等とは比較になりませんからね。

>友達や家族
普通の人にとって友達や家族は大事なものです。本当の友達はなかなかできないかもしれませんが、家族は間違いなく家族ですから、大事になさってください。
僕は四月に母を失って、色々としてくれた母に対して何をしてあげただろうかと後悔ばかりしております。

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