映画評「ジュリー&ジュリア」

☆☆☆(6点/10点満点中)
2009年アメリカ映画 監督ノーラ・エフロン
ネタバレあり

アメリカでは知らぬ者がいないと言われるほど有名らしい料理研究家ジュリア・チャイルドの半生と彼女のレシピ集に影響された女性公務員ジュリー・パウエルの日々を交錯させる一種の女性映画。

1949年外交官の夫(スタンリー・トゥッチ)と共にパリにやってきたジュリア(メリル・ストリープ)は食べることが好きで、英語で書かれた本格的なフランス料理レシピ集がないことに不満を覚え、それなら自分で作ってしまえと料理教室に通うことから始め、料理の上手い友人たちと本を発行することを決めるが、原稿通りに構成すると百科辞典のように分厚くなる為に出版社に敬遠されてしまう
 片や、9・11の遺族からの電話対応に追われる公務員ジュリー(エイミー・アダムズ)は編集者の夫(クリス・メッシーナ)の愛情に恵まれながら似たような毎日にうんざりし、作家志望の前身を生かしてジュリアの著書に載っている524のレシピを1年間で実行した結果をブログに綴ることを思い付く。

テーマは理解のある夫に恵まれた二人の女性が平凡な日常から生きがいを見出す姿を交互に描くことで、その対照と類似により面白可笑しく彼女たちの人生航路を見せようという寸法。

僕は料理に全く興味がなく日本の料理家も碌に知らないわけで、ましてアメリカの料理家など知るはずがないが、便利な世の中になったものでYouTubeで本物のジュリア・チャイルドの映像は観られ、メリル・ストリープのそっくりさんぶりを楽しむことができる。
 個人的にはそれより、ジュリーが365日で524もの料理を作ってその結果をブログで報告する作業は、年間400本強の映画を観て映画評をブログに綴る僕の日常と重なるところがあり、シンパシーが湧く。但し、前述通り料理が素材なので興味津々というところまでは行かない。

映画は後半ジュリアがいかに出版に漕ぎつけるか、また、ジュリーがいかにブログから新聞、新聞から出版へと駆け上って行くかをオーヴァーラップさせる。
 その為にマッチカット(例えば、ベッドで場面を繋ぐ。片や二人片や一人の対照となっている繋ぎが印象的)やそれに準ずる場面の繋ぎ(例えば幕切れ)が増えて映画的な魅力が増して来るが、実話故に不満が残る部分も少なからずある。

その中でどうもすっきりしないのが、ほがらかなジュリアがジュリーの行為を不快に思ったらしいことに対応する映画的展開――例えばジュリーがジュリアに会いに行く――がなかったこと。何故ジュリアが不興を覚えたのか全く解らないままジュリーの片思い的に終わるのでは作劇的に些か締りがない。構成として二人が完全に平行に描写される現状通りの展開のほうが美しいのは確かなので、ジュリアが不快に思ったというエピソードは紹介しないほうが良かっただろう。

といった次第で、ノーラ・エフロンとしては失敗作だった前作「奥さまは魔女」よりはずっと良いが、脚本作の「恋人たちの予感」や脚本・監督作「めぐり逢えたら」の頃のひらめきがまだ蘇らない。

ダウト~あるカトリック学校で~」の再共演組メリルとエイミーの演技は楽しめる。

今年のオカピー映画賞女優部門ではメリルかエイミーかで悩むことになりそう。

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