映画評「ワイルド・レンジ 最後の銃撃」

☆☆☆★(7点/10点満点中)
2003年アメリカ映画 監督ケヴィン・コストナー
ネタバレあり

「ダンス・ウィズ・ウルヴズ」があれほど話題になったケヴィン・コストナーが再度挑戦した本格西部劇にも拘らず、こちらは日本では殆ど話題にならなかった。出来が悪いのかと思って観てみると、そんなこともない。斜陽ジャンルである西部劇ということと大きな賞レースに縁がなかっただけで軽視されたのだろう。

1880年代、ロバート・デュヴォールを筆頭とする牛追いの四人組がある町の近くに牧草地帯にやって来、その一人エイブラハム・ベンルービが町へ遣いに出た時大牧場主マイケル・ガンボンの息のかかった連中に痛めつけられる。ガンボンは救出に現われたコストナーたちに「出ていけ」と脅迫して解放するが、一行が出ていくそぶりを見せないと一味はベンルービを殺し、まだ少年のディエゴ・ルナに重傷を負わせる。
 かくして一歩も引き下がれない状態に陥ったデュヴォールとコストナーはガンボンと保安官を含むその一味と決闘に臨むことになる。

実にクラシックな西部劇で、1916年生まれの原作者ローラン・ペインがいつ頃どういうつもりで書いたのか全く解らないが、僕は傑作「シェーン」(1953年)の面影を見出さずにはいられなかった。
 勿論細部は全然違う。しかし、一種流れ者であるコストナーが人妻である(と一時は思い込んだ)医師の妹アネット・ベニングに慕情を寄せ、それにも拘らずに死を賭して決闘に向う、という構図はこちらのほうが事情がシンプルとは言えアラン・ラッドとジーン・アーサーの関係を思わせるし、少年ディエゴ・ルナはブランドン・デ・ワイルドの代りみたいに思えて来る。

また、序盤からじっくりショットを積み重ね観客をゆったりしたペースに巻き込むのは「シェーン」の手法を踏襲しているような感じがする。ここを冗長と思ったらこの作品の狙いが掴めていないということになる。後段で心理の流れを描く為に序盤を快テンポで進めるわけにはいかないのである。

環境描写も抜群・・・とここまではご機嫌だったのに、些かがっかりさせられるのが決闘のカット割り。昨今の映画では珍しい例ではないが、誰が誰に向けて発砲しているのか全く分からない。そもそも人数が多いから難しい部分があるとしても、もう少し何とかならなかったかい、とコストナーに文句の一つも言いたくなる。

とは言え全体としては非常に上首尾で、変る時代に沿うように牛追いを止めることを暗示して映画は終わる。一つの時代即ち西部開拓時代の終焉を描いて、西部劇ファンならずともじーんとするに違いない。

「シェーン、カムバック!」ならで「ウェスタン、カムバック!」と言いたくなりますね。

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この記事へのコメント

2010年10月08日 16:01
コストナー自体が賞後のいわゆる
“不振”(笑)で客離れのせいも
あるかと私は見ています。
でも彼は映画の見せ所・旨味を
ちゃんと把握できている方と
私は感じていますよ。

>誰が誰に向けて発砲しているのか
全く分からない。

私もこれにはかなり不満でしたね~。
目指す敵をひとりひとり倒していけば
いいはずの流れでしょう、この感じでは~。

しかし、重鎮デュヴォールの座りのよさと
A・ベニングとのほんわり大人恋模様も
あって私は好きな西部劇の一作に入れました。
^^
オカピー
2010年10月09日 00:36
vivajijiさん、こんばんは。

>賞後のいわゆる“不振”
急に凋落したような感じでしたよね。
ある人はコストナー(の出演作品)は野球映画以外は良いと仰っていますが、僕は野球映画が一番良いと思っていまず。^^
「フィールド・オブ・ドリームス」は言うまでもなく、「ラブ・オブ・ザ・ゲーム」なんかも大好きでした。「さよならゲーム」も格下ながら捨てがたい味あり。
監督作では「ポストマン」はこけましたねえ。日本映画の「ポストマン」もダメでしたが。(笑)

>誰が誰に向けて
でしょう?
これが昨今の映画ですよね。しかし、それ以外は良かった。

>デュヴォール
フランス語系の名前なのでフランス風に発音すればデュヴァルでしょうが、英語式に発音すればデュヴォール。アメリカでは一般的にこう発音しているはずですが、僕に合わせて戴き有難うございます。<(_ _)>
いつの間にか大物になっていましたね。
日本で認識されたのは「ゴッドファーザー」が最初だと思いますけど、それでもまだまだ脇役に過ぎなかった。
いつの間にねえ。(笑)

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