映画評「戦場のレクイエム」

☆☆★(5点/10点満点中)
2007年中国映画 監督フォン・シャオガイ
ネタバレあり

女帝<エンペラー>」で内容・手法共に首を傾げたフォン・シャオガイが作った実話ベースのお話である。

1948年、国民党と内戦を繰り広げる中国共産党人民解放軍の中原野戦軍第2師団第139連隊第3大隊第9中隊は熾烈を極める淮界戦役で苦戦を強いられ、炭坑跡を守ることになったチャン・ハンユー率いる中隊は彼を除いて全滅する。
 生き残った中隊長は撤退を知らせる集合ラッパを聞き洩らしたという後悔の思いに苛まれながら国共内戦、朝鮮戦争を辛うじて生き抜くが、いざ生還してみると第9中隊は存在そのものが認められず、戦死者は失踪扱いになって絶望する。
 やがて中隊の存在は認められるものの、連隊長が彼の中隊を犠牲に他の部隊を救おうとしたことを知って激怒、部下が戦死したことを証明しようと埋ったと思われる炭坑跡にできた山を一人で崩し始める。これがこのまま続けば菊池寛「恩讐の彼方に」になるが、そうなる前に中隊全員の戦死が解放軍により認められ、彼の辛苦は報われる。

という物語で、なかなか世評は高いが、僕には気に入らない点が多い。

まずは前半の激しい戦闘場面における揺れるカメラである。先日「サバイバル・フィールド」の映画評で【揺れるカメラ=臨場感】という観念は映像言語という観点から問題があると指摘した。しかし、そんな難しい話でなく、本作の戦闘場面は純粋に見づらい画面だから問題なのだと指摘しておく必要がある。しかも本作の揺れる映像は手持ちだからというより(固定カメラを)わざと揺らしているように見える箇所があり益々気に入らない。非常に潜在能力のあるいぶし銀のような映像なのだからじっくり見せても十分臨場感や迫力を出せるはずで、揺れる映像の流行には本当に閉口させられる。

そんなわけで些かしんどいと思いながら観ていくと、後半はドラマ的に見応えが出て来る。部下の死に対して抱く頗る大きな責任感が行動の原動力となっていく男の半生には胸が熱くなるものがある。

しかし、僕の最終的な印象は余りよろしくない。人民解放軍の過ちを追及する内容に見せかけて、所謂プロパガンダ映画のように露骨ではないにしても実は過ちを認める解放軍や共産党を大いに誉め称えている体制寄りの作品としか思えず、余り感心できないのである。

中国現代版四十七義士でした。

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この記事へのコメント

2010年10月07日 01:33
こんにちは。
なんか、最初の方の市街戦の戦闘シーンでは、どちらがどの陣営かわからなくて見ていて混乱しました(笑)。外国の人が、日本の武士集団の戦闘シーンを見ても、同じように混乱するかもしれませんね。
オカピー
2010年10月07日 20:05
kimion20002000さん、こんばんは。

黒沢明の「乱」のように色で区別してくれると有難いですよね。
どちらにしても内戦で「勝てば官軍」てなわけで、国民党が勝っていたら中国どころか世界は全く変わっていたでしょうね。

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  • ★「戦場のレクイエム」

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