映画評「ノウイング」

☆☆★(5点/10点満点中)
2009年アメリカ映画 監督アレックス・プロヤス
ネタバレあり

アイ、ロボット」が結構気に入ったアレックス・プロヤスのSF映画。構成を考えるとディザスター(パニック)映画という紹介は些か引っ掛かる。

宇宙物理学者ニコラス・ケイジが、小学生の息子が50年前校庭に埋められたタイムカプセルから取り出して持ち帰った紙に書かれていた数字の羅列に興味を覚えて分析するうちに、9・11同時テロと日付と被害者の数が一致するのに驚く。殆ど全ての数字は何らかの大災害のデータと一致し、阪神淡路大震災もそのうちの一つとして登場する。
 
さらに、数字が発生場所を具体的に示すことも突き止める。残された数字は現在の彼にとって未来の予言であり、正にその日時・場所で飛行機事故現場に通りかかり、何故か懸命に救助を始める。
 その心理を探れば、ホテル火災で亡くなった妻を救えなかった為に全ての出来事は偶然により起こり人間には避けられないという信念を持つようになった彼がその信念をひっくり返される現象に出食わし、そうであるなら妻の悲劇を繰り返すまいとする衝動に突き動かされているということになるだろう。

この辺りまではミステリー仕立てでなかなか面白いが、50年前にその数字を書いた婦人の娘ローズ・バーンと協力することで気付いた太陽の異常活動が原因で地球の生命が全滅することが予言されていることが判ってから、がっかりさせられる。主人公若しくは他の一般人類がどうやっても生き残れないと解ってしまった以上観客はもはや一般的な意味でのサスペンスを感じられないからである。辛うじてどういうお話になるかというサスペンスだけが維持される。

また、「フォーガットン」のように宇宙人らしきものが絡んでくるのは良いとして、宇宙人若しくは神の通信をそれとは知らず受けてきたケイジの息子チャンドラー・カンタベリー君とローズの娘ララ・ロビンスンだけが救出されるという、“ノアの箱舟”と“アダムとイヴ”を併せたようなお話をこんな形で見せられても非キリスト教信者である僕らには抹香臭いだけで有難くない。

お話自体にも疑問が湧く。未来が解る宇宙人(若しくは神)が謎を解けない人物に暗号(数字)を与え、当該人物ではない主人公が謎を解き、その人物たち以外は救われないという展開では、宇宙人の行動は意図不明になる。大部分の人間を救うことができないことが解っているのに暗号みたいな情報を送る意味は何なのだろう? 送られた子供たちは意味も解らないし、解ったところでどうにもならない。宇宙人は時期が来た時に救うべき人間を救えば良い。お話の為のお話になってはいないだろうか。
 物事の発生は偶然ではないように思わせる展開なのに彼が数字の謎を解くに至る経緯は偶然のように感じられる。せめて大昔に数字の羅列を書く子供を主人公本人にしてその彼が成長して数十年後宇宙物理学者になった時数字の羅列の意味が解り始めるという展開なら(物語はぐっと単純化されるが)宇宙人の目的もはっきりし、お話の整合性は大分増しただろう。

母娘役ローズ・バーンとララ・ロビンスンのそっくりぶりが本作一番の驚きでした!

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この記事へのコメント

2010年10月23日 21:04
 こんばんは!
こういうのも見られるんですね(笑)
と言いつつ、ぼくもDVD出たときに見てしまいました(笑)

なんか特に印象に残らない、画面がやたらと暗かったなあ…、
という感じでした。

ニコラス・ケイジっていう人は仕事を選ばないようで、コミカルなものもシリアスなものもナンセンスなものもなんにでも出てきますね。

なんでも挑戦するのが好きな俳優さんなのでしょうかね?

ではまた!
オカピー
2010年10月24日 00:30
用心棒さん、お久しぶりです。

>こういうのも
僕が何でも観るのはご存知のくせに(笑)。

謎解きものは好きなので途中までは面白く見ましたが、旧約聖書の勉強をさせられているような気分になる終盤は有難くなかったですねえ。
しかも、謎を解いても結果は変わらないわけだから、構造論的に言えば“映画になっていない”です。
最近アメリカには厭世的とも言える作品が多くなっていますね。これも9・11のPTSDかな。

>ニコラス・ケイジ
刑事役をやれば良いのに(なんて洒落は寒いですね)。
一本出演すれば豪邸が建てられるんだから、稼げる時に稼いでいるのでしょうよ。^^
この間TVで、彼が住んでいたという豪邸を観ましたが、ミニシアターもあって羨ましい。
こちとらCDを置く場所すら碌にないというのに。
2010年10月25日 00:03
 こんばんは!
>ミニシアター
羨ましいですよね。大きな画面ですし、気楽に映写されているのを観られるのは映画ファンにはたまらない状況ですなあ。

>CD
うちもCDとDVDで部屋が溢れかえっています。未整理のDVDを整理していたら、同じものがあったというのもある始末で、どうしようもなくなってきています。

そうそう。この前『市民ケーン』を書いたんでTBしようと思ったんですけど、オカピーさんは書いてらっしゃらなかったんですか?ぼくの探し方がまずかっただけですかね?

最近またクラシックをぼつぼつ見出していて、ジョン・エプスタインの『アッシャー家の末裔』、パウル・ヴェゲナーの『巨人ゴーレム』、ベンジャミン・クリステンセンの『魔女』、ヘルツォークの『フィツカラルド』などを再び見ようかなあと思っています。

ではまた!
オカピー
2010年10月25日 20:12
用心棒さん、こんばんは。

>『市民ケーン』
いえ、ブログ用には書いていませんね。
10年くらい前に再鑑賞した時に書いたものを上げようと思えば上げられますが、改めて観て書いた方が良いでしょうね。
この作品に関しては内容把握に今一つ自信がないです。

>『アッシャー家の末裔』『巨人ゴーレム』
おおっ!
気になりながらも二作とも未だに未見ですよ。
ビデオ貸して下さい(笑)。
フリッツ・ラングの「ドクトル・マブセ」も見なければいけないんだけど。
2010年10月25日 22:16
 こんばんは!
『市民ケーン』の記事が出来上がりましたら、どうぞお知らせください。すぐに参りますからね(笑)

 アッシャー、ゴーレム、マブゼとも所有しております。スカパーで数年前に三本とも放送されました。来月は『黒蜥蜴』もついに放映されるようです。ご近所だったら、お互いに貸し借りできますし、一緒に見れるのになあ(笑)

 ヒッチコックなども初期作品の『快楽の園』『山鷲』『ウィーンからのワルツ』以外はすべて持っています(笑)

うまくいきませんねえ(汗)

ではまた!
オカピー
2010年10月26日 20:37
こんばんは。

同じ県に住んでいたら一年に一度くらい映画祭りをするでしょうね。^^

>『市民ケーン』の記事
WOWOW/NHK-BSで観られる新作(要は日本の劇場で公開されたうちの未鑑賞作品)はなるべく観ようとしているので、なかなか旧作の再鑑賞が許されないのですが、最近観る作品が余りに“映画的につまらない”のでもっと比率を変えようかと思っちゃいますね。
ということで「市民ケーン」は努力目標にします(余り当てになりません)。<(_ _)>

「アッシャー」「ゴーレム」は既に安いですが、「マブゼ」のDVDはまだ高いですね。もう少し待ってみようっと(笑)。

>スカバー
って凄いんですね。へぇー。\(◎o◎)/

>ヒッチコック
僕も似たようなものですが、用心棒さんも好きねえ(笑)。
「快楽の園」はBS放送を録画したものは持っています。
「山鷲」は確かフィルムが散逸したのでは?
「ウィーンからのワルツ」はまあ良いでしょう(笑)。
2010年10月26日 23:07
 こんばんは!
最近ワンコインDVDがかなりリリースされているので、ヨーロッパのクラシックをもっと販売して欲しいですね。

安くで『霊魂の不滅』『魔笛(もちろんベルイマン版)』やアンジェイ・ワイダの作品群とかが出たら、すぐに買っちゃいますよ(笑)

>好きねえ
好きですよ(笑)
ヒッチコック劇場まではさすがに手が回りませんが、ヤフオクも使いながら、諦めないで探し続けていますよ。

今日はマン・レイ展を観に行き、『ひとで』など彼の主要作品をすべてスクリーンで観てきました。ではまた!
オカピー
2010年10月27日 19:44
用心棒さん、こんばんは。

>ヨーロッパのクラシック
欲しいですねえ。
「霊魂の不滅」なら多少高くても・・・ベルイマンにいかに影響を与えたか観てみたい。

>ヒッチコック
輸入盤で一部再生できないのがあって腹が立ちました・・・
ヒッチコック劇場については、ヒッチコック自身の監督作品だけは確保しておきたいです。
昨年のBSでの放映は数も少なかったし、新ヒッチコック劇場が中心で、期待はずれでした。

>マン・レイ
東京に住んでいた頃どこかの自主上映でやっていたけど、遂に観ませんでした。^^;
不勉強で悪しからず。<(_ _)>

それでは。
2010年11月03日 23:42
こんばんは。

この作品は、前半はとても引き込まれて夢中で鑑賞していましたが、いかんせん、テーマというのかな、あまりにも大きすぎて、最後はなんといっていいのか・・・。

仰るとおり、ストーリーの整合性には疑問も多くあり、首をかしげる作品でした。

まあ、
2010年11月04日 00:00
私がよく記述することですが、映画的なテンションが維持できていないんですよね。
最初はミステリーとして面白かったんですが。

ご指摘どおり、途中でがっかりさせられるんですよね。

オカピー
2010年11月04日 00:33
イエローストーンさん、こちらへもようこそ。

終末思想も結構ですが、脚本を書いた方は映画におけるサスペンスの意味が余りお解りになっていないのではないかなあ。
主人公が助からないと解っていてそれ以上お話を続ける映画的価値があるとも思えないですがねえ。何故なら、自然ドキュメンタリー以外の映画はどんな形にしろ人間を描くものでしょう?
何かの説教なのかもしれませんがね。

その意味では、助かるかもしれない人間を追い続ける「2012」のほうが多くの観客に見せる意味があると思います。

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