映画評「あの胸にもういちど」

☆☆☆(6点/10点満点中)
1968年イギリス=フランス映画 監督ジャック・カーディフ
ネタバレあり

日本初公開時はアラン・ドロン人気に頼るものだったはずだが、今となっては出番の少ないドロンよりマリアンヌ・フェイスフルのセクシーぶりを楽しむに尽きる。彼女が下着を付けずに黒いレザースーツを着るのが話題(アメリカではそこからタイトルNaked Under Leatherが付けられている)で、「ルパン三世」の峰不二子は彼女をモデルにしたという説は、原作のコミックがこの映画より古いので明らかな流言である。しかるに、下記の画像がこの作品の公開より3年後に始まったアニメ第一シリーズのエンディングの絵を思い出させる(?)ように、アニメ版については多分に影響を与えた可能性が高い。

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新婚の人妻マリアンヌが朝まだきハーレー1200に乗ってアルザスから結婚前から懇ろだった愛人の大学教授ドロンに逢いにドイツに向う。その途上バイクに乗っている間や休んでいる間に彼女の脳裏を横切る回想や想像の場面が次々と展開していき、優柔不断な夫ロジャー・マットンと強引なところのあるプレイボーイのドロンとの間で揺れ動くヒロインの心境が綴られる、という図式でござる。

アンドレ・ピエール・ド・マンディアルグの原作はあるいは多少文学的なものかもしれないが、本作においては――アメリカにおけるソフトポルノ扱いはひどすぎるにしても――彼女の心境はどうもお飾り程度。

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しかし、監督をしたジャック・カーディフは元来優秀な撮影監督(本作でも兼任)なので、お話はともかく、画面はサイケな処理を加えたり、アングルをいろいろ変えた撮影を駆使して見応えがあるし、エロティックな場面を含めてムードは捨てがたい。オートバイの疾走場面に爽快さがある一方で、ヒロインの恍惚の表情には麻薬的な匂いが漂う、といった具合にカルト的にはなかなか楽しめる。

およそ40年後「やわらかい手」のマリアンヌは無軌道だった青春時代の不摂生がたたって見るも無残な体形に変わり果てたものの、波乱万丈の人生を糧にして見事な演技を披露して強い印象を残した。

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以下は本作に直接関係のない余談。

本作を再鑑賞(多分三度目)して思い出したのが30年ほど前に観た題名すら憶えていないドラマ(ソフトポルノ?)。観始めた映画は最後まで観ることを信条としている僕が生涯に唯一最後まで観ることができなかった大愚作で、お話の構成が似ているのである。製作年度が解らないので何とも言えないが、本作の影響下に作られた可能性が無くもない。
 かの作品は主人公が故障した車を押している最中に過去の睦みごとを思い出すという形式で進行。それは良いとして、殆どが車を押しているという見栄えのしない場面の連続でげんなりしているところにたまに入るベッドシーンがエロ気不足、観るべきところが一秒たりともなかった。


ハーレーばかりがバイクじゃない。彼女が練習に使っていたドロン氏のバイクは英国のノートンでした。

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この記事へのコメント

2010年09月02日 01:07
オカピーさん、こんばんは。
最近のわたしは、メルヴィル&ドロンの原点に立ち返り、珍しく月3記事もアップしちゃいましたよ。
でも、やっぱ、ファン評でしかなく、客観的な作品評まで至りませんです。
さて、こちらの作品は、おっしゃる通り、結構カルト・ファンが多いと聞いています。隠れた名作に入るんでしょうかね。何せ題材が深いですから、そういった意味で、案外わたしは気に入っています。
何と言ってもラストシーンはショッキングでした。あのショットだけでも、映画的価値はあると思っていますよ。
最近、「太陽は知っている」を久々再見し、ジェーン・バーキンの助演に目を奪われ、この作品や「冒険者たち」などが連想されちゃってます。
ほんと、ドロンは、素敵な女優と共演してますよ。
では、また。
オカピー
2010年09月03日 00:21
トムさん、こんばんは。

こちらからはなかなかお伺いできませんが、悪しからず。

>ファン評でしかなく
そんなことはありませんが、レビュー(批評)というよりは研究文と言った方が近く、読み応え十分です。
いずれにしても、中途半端な客観性より良いと思いますよ。

>題材が深い
すみません。「彼女の心理描写は飾り」といったニュアンスで悪口言っております。<(_ _)>
しかし、アメリカではソフトポルノ扱いで評価は甚だしく低いので、それに比べればずっと高評価なのですじゃ。^^)v

>ラストシーン
トムさんの解釈はとても面白い。^^
シュエット
2010年09月07日 10:06
お久しぶりです。
以前は毎晩少なくとも1本は録画映画を観ていたんですけれど、最近は観ない日も多くなった。暑さのせいと録画作品も過去作品ばかりのこの頃ですが、オカピーさんは猛暑の残暑にもめげず頑張って更新されてますねぇ!(敬服!)
さてさて、私も「柔らかい手」を観た後早速に再鑑賞したのが本作。友人などは若い時にみたこの映画の皮スーツ姿の彼女が脳裡に焼きついていて、数十年後の彼女の体型の変化はショックだったようで。でもいい味を出していたわ。中年になってからの彼女は。いい女!そう思う。
本作記事あげたみたいだからTBしますね。
でもこうやって再鑑賞してみると、中味は違っても若い時ってこんな風に無軌道だったんだなって我が若かりし頃と重ね合わせてなかなかに楽しめた映画でもありました。衝撃的なラストシーンがあってこそでもあるでしょうね。(おっトムさんと同じだ!)
シュエット
2010年09月07日 10:29
再び失礼致します。
本作記事あげたと思っていたけど、「やわらかい手」で写真とちょこっと触れた程度だったわ。ということでTBなしです。
オカピー
2010年09月08日 00:14
シュエットさん、こんばんは。

暑い中入院中の父親のところへ行って帰るともうぐったりで、観るのはまだしも書くのはしんどいですが、残業を100時間していた時代でも続けたことですから、頑張りますよ。

>中年になってからの彼女は
男女を問わず太っている人間は(性格がルーズそうで)苦手ですが、マリアンヌの場合は実に素敵な演技者として帰ってきましたね。
80年代にカムバックした時は声が変わっていてびっくりされた方も多かったとか。僕はFMで洋楽を良く聴いていましたが、何故か記憶にないんだなあ。

>若い時
僕はひたすら怠惰でした。
勉強しないと卒業できない大学でしたので、最低限の勉強はしましたけど、まあ誉められる大学時代ではなかったなあ。

>衝撃的なラストシーン
解決方法がないと作家たちがやりたがる手法ですが、本作の場合はどうなんでしょ?(笑)

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