映画評「ラ・ジュテ」

☆☆☆★(7点/10点満点中)
1962年フランス映画 監督クリス・マルケル
重要なネタバレあり

テリー・ギリアムの「12モンキーズ」の元ネタになったというフランス製のSF映画。人類が核戦争の恐怖に一番震えていた冷戦最中に作られた異色作である。監督は「AK ドキュメント黒澤明」を後年作ることになるドキュメンタリー畑のクリス・マルケル。一応お話をば。

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第3次世界大戦の後人類は地下で暮している。地下世界では勝者が敗者となった人々を次々と過去に送り込んで資源や薬を持ち帰らせようとして実験を繰り返し、あまたの失敗の後少年時代の記憶に苛まれている男(ダフォ・アニシュ)という適材を得て遂に成功する。
 当の本人は過去で知り合った美女(エレーヌ・シャトラン)に夢中になるものの、役目を果たすと抹殺される運命にある。彼が勝者の殺し屋に撃たれた時少年時代記憶に残されたのは彼女の前で彼自身が撃たれる情景と気付く。

かくしてお話が円環するタイム・トラヴェルもので、いずれにしても、こう書いてくるとそこそこ面白そうな娯楽作品と思われるにちがいないが、実際にはモノクロのスティル・ショット(静止画)にナレーションをかぶせて展開させた29分間の“芸術作品”である。

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少年時代兄の友人から貰った創元文庫とハヤカワ文庫のハードSF小説を次々と読んた時に覚えた印象を思い起こさせる。妙に冷たく形而上的ということである。しかし、書籍と違って映画は頭をひねらずともイメージが勝手に与えられるし、短編につきインパクトを覚えているうちに終ってくれるのが大変有り難い。

意味の解る邦題にしてください。

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この記事へのコメント

2010年06月06日 19:18
未だ一度しか観てないので二度目で印象は変わるかも知れませんが。

時空を超えるお話、意識と無意識の揺らぎ。リアルタイムで観ればかなり面白く感じたでしょうが、「ターミネーター」や「マトリックス」を観た後ですので、鑑賞前の意気込み(SFでしたので^^)がシラッとするほど冷静に観れました。
観賞後にふと浮かんだのが、静止画の連続というのは漫画の世界と同じということ。漫画は静止画に吹き出しで台詞が入り、紙芝居のように楽しめるのですが、コレはナレーションで済ませたので“語り”としてはあまり面白く感じませんでした。カットの繋がりもさしてダイナミックでもなかったような・・・。
ズームやラップなど、も少し動きのある映像を予想していたのも一因ですかな。
オカピー
2010年06月07日 00:47
十瑠さん、こんばんは。

製作当時既にH・G・ウェルズの映画化「タイムマシン」でタイムトラヴェルものがあったとは言え、本作のアプローチはぐっと哲学的で、特にヌーヴェルヴァーグを好むような方々には受け入れられたでしょうね。
尤もこの作品自体が広義のヌーヴェルヴァーグでしょうが。

この実験的な手法が最初から狙ったものなのか、資金不足による苦肉の策なのか解りませんが、結果的に相当アピールしたでしょう。
僕の想像通りゴダールの「アルファヴィル」も影響下にあるようです。

>ナレーション
本作の場合は一応文句を言いませんが、ナレーションはやはり映画作家の文学への依存でしょうから、基本的に感心できませんね。
本作について言えば、映画というより写真付きの文学と言った方が良いような気がしませんか?
2010年06月07日 06:06
おはようございます。
本作品の存在自体、未知でした。

スクリーンサイズの
スライドショーのようでもあり
立って歩き回らなくてもよい
モノクロ写真展のようでもあり
30分弱でほんとありがたや~
こんなの普通の尺で観せられた日にゃ(- -)

>妙に冷たく形而上的ということである。

ほんとに“おつにすまして”の感強くて
正直参りました。
観た後、
「さっ、生ビールに焼肉、
食べに行きましょうか!」
絶対そんな気分にはなれない
“芸術作品”(^ ^);

時空を超えるくらいの大学時代(笑)
隣の部室(映研)にたむろしていた
アタマデッカチの学生さんが
好んで作りそうな映画といったら
怒られるかな?(^ ^)

漫画的静止画でひとくくりするならば
最近観た「戦場でワルツを」。こちらは
内容がリアルな上に手法にある程度の
工夫の跡がみられましたね。
でもね~
映画はね~
モーション・ピクチャー(動く絵)。

オカピー
2010年06月08日 00:24
vivajijiさん、こんばんは。

僕も記憶になかったのですが、日本で公開されているらしいので、忙しくて短編を見る時間しかない日に観てみました。^^

>普通の尺で
まあ45分が限界でしょうね。

>“芸術作品”
内容が小難しい作品を俗に“芸術映画”などと言いますが、僕はそういうのは“純文学映画”とこっそり(笑)言っています。少なくとも手法的には普通の方法で撮っている以上は芸術映画じゃないでしょ?^^

>アタマデッカチの学生さんが好んで作りそうな映画
少なくとも資金的にはそのレベルの作品ですね(笑)

>「戦場でワルツを」
憶えておきますです。<(_ _)>

>モーション・ピクチャー(動く絵)
大学の英語の授業で、珍訳が出た記憶がありますなあ。
幸い僕は知っていましたが、そういう時に限って当たらない(笑)
映画というメディアで静止画を見せるのだからやはり芸術作品ですね。
シュエット
2010年06月08日 11:00
録画してあるけどまだ観てません。
観たらまたコメント入れにきますねぇ!
シュエット
2011年11月21日 09:50
やっぱり記事アップされてた!
静止画であることを忘れてしまうほど。
というより静止画の時間がすっごく考えつくされている。
女性が瞬きする唯一の動画シーンが、だからとてもリアル。
時間軸と記憶と意識がテーマらしいけど、それがダイレクトに視覚から伝わってくるのが凄いって思った。
私、2010年にコメント入れてたんですネェ。
2011年にTBもってお邪魔しました。
オカピー
2011年11月21日 21:48
シュエットさん、こんにちは。

“芸術”映画と言われることは多いけど実際は文学的な映画が多いだけ。しかし、本作は本当の“芸術”映画ですよね。
僕は映画は楽しめれば何でも良いので、大衆映画でもこういう芸術映画でも一向に構いません。ただ、これが例えば2時間もあったらしんどいだろうとは思いましたね。
大変珍しい作品なので保存してあります。たまに観ると新鮮な感動が得られるでしょうね。

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    Excerpt: ヌーベルバーグの代表的映像作家クリス・マルケルが、モノクロの静止画を連続させて構成した実験的な近未来SF短編「ラ・ジュテ」を観て、ストーリーを語る事について考えてみた。 Weblog: テアトル十瑠 racked: 2010-06-12 10:55
  • 「ラ・ジュテ」

    Excerpt: LA JETEE 1962年/フランス/29分 監督・脚本: クリス・マルケル 撮影: ジャン・チアボー 音楽: トレヴァー・ダンカン 出演: エレーヌ・シャトラン/ジャック・ル.. Weblog: 寄り道カフェ racked: 2011-11-21 09:44