映画評「乾いた湖」

☆☆★(5点/10点満点中)
1960年日本映画 監督・篠田正浩
ネタバレあり

篠田正浩の監督第2作、寺山修司の脚本第1作(榛葉英治の小説を脚色)、後に篠田夫人となる新人女優・岩下志麻主演第1作。

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で、松竹ヌーヴェルヴァーグの肩書き通り、ヌーヴェルヴァーグ的なヨットでの乱痴気騒ぎから始まる。武満徹の音楽もそれらしくジャズだ。その意味ではロマン・ポランスキーの「水の中のナイフ」的でもある。

このグループの中に汚職事件に巻き込まれた父親に自殺されてしまう志麻嬢や、会社重役の御曹司で乱痴気騒ぎの中心人物なのにニヒリストである為に孤立していく山下洵一郎や、大学の自治会委員だったが金を使い込んだりした挙句にドロップアウト、デモなんてのは馬鹿らしいと爆弾テロで政治を変えようとする三上真一郎がいる。

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1960年安保闘争の年に作られ、実際に安保が重要な要素として絡んでいるが、政治閉塞的な社会に虚無的にならざるを得ない若者たちと社会との絡め方が直截で青っぽくて余り感心できない。
 文学的には、幾つかのグループに分類される若者たちを描出し、その多様性の中に夫々のやりきれなさを表現した辺りに見るべきところがあると云うべきだろうが、映画としてはまずは無難にまとめている程度でそれほど面白くない。

ちょっと面白いのは、志麻嬢の姉を捨てた男に復讐する為に起こした暴力事件が災いして三上のテロ計画がぽしゃるところ。暴力沙汰は単なるエピソードとして終ったと思い込みこんな布石になるなどと予想をしていなかったのでちょっと虚を突かれる感じがする。

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11時を指す時計のマッチカット(上の画像参照)もなかなかの趣向。11時にパトロンの家を出た姉が11時に自宅に着く。時計が20分遅れていることで、父親を死に追いやりながら一家のパトロンに納まる政治家・伊藤雄之助とヒロインの家が歩いてかタクシーに乗ってかは知らないが、20分くらいの距離にあることが解るというアイデアが興味深いのである。こういうマッチカットの使い方は余り記憶になく、サスペンス映画に使えそうだ。しかも同一種類の時計だから両者が金銭で結ばれた関係であることが一目で解りニヤリとさせられる次第。

といった枝葉末節の面白さはともかく、同じ頃作られた松竹ヌーヴェルヴァーグでの比較では、大島渚「日本の夜と霧」や吉田喜重「ろくでなし」に鮮烈さで劣る。

志麻姐さんがまだ志麻お嬢さんでした。

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