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zoom RSS 映画評「グラン・トリノ」

<<   作成日時 : 2010/05/22 17:15   >>

なるほど(納得、参考になった、ヘー) ブログ気持玉 2 / トラックバック 18 / コメント 10

☆☆☆☆★(9点/10点満点中)
2008年アメリカ映画 監督クリント・イーストウッド
ネタバレあり

クリント・イーストウッドを世評ほどは買って来なかった僕もコンスタントに質の高い作品を発表している21世紀の実績自体には素直に脱帽するしかない。本作はタイトルからはどんな作品か全く見当が付かないが、「ミリオンダラー・ベイビー」の姉妹編のような内容と言って良いだろう。

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偏屈な為に二人の息子に疎まれている老人イーストウッドが妻に先立たれた為に犬を相手にするだけの一人暮らしになる。朝鮮戦争帰還兵の人種差別主義者で隣に住んでいるラオス出身のモン族の一家を嫌悪しているし、フォードの元社員故に日本車に乗る息子を軽蔑している。
 ある時隣一家の頼りない少年ビー・ヴァンに絡んでいるチンピラ・グループを【芝生に東洋人が入るのを嫌って】排除しただけなのに大いに感謝され、後日その姉アーニー・ハーを不良黒人たちから救った為に益々評価が上がり、家に招待されたのをきっかけにこの一族に対しては心を開き、成り行きで少年を精神的に鍛えることになる。
 が、グループは一向になびかない少年をいびり始め、遂には姉に暴行を働く。これに業を煮やしたイーストウッドは考えられる最善の手段を以ってグループに立ち向かう。

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物質主義社会における宗教の意味を問い質し、他人同士が疑似親子を演じなければならないアメリカ社会の現状を浮彫りにした「ミリオンダラー・ベイビー」と通底するお話で、彼の愛車“グラン・トリノ”は古き良きそして同時に偏屈なアメリカを象徴する小道具として登場する。イーストウッドが「ダーティハリー」シリーズで頑張っていた頃発売された不遇の名車である。
 その車は結局イーストウッドの価値観を変え家族以上に家族になった少年に譲られる。人種間移民間同士の対立は収まらない一方で、アメリカの伝統は人種・民族を問わず良き移民たちが受け継ぐのだ、という意味であろう。イーストウッドが考え出した自分以外の誰をも身体的に傷つけない最善の方法は、アメリカの将来選ぶべき道を示唆している。

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血を吐いて先の長くないことを覚悟、床屋に行き服を仕立てあれほど嫌っていた懺悔をして決闘に備える主人公はワイアット・アープとドク・ホリデイを合せたような人物に思えて来るが、その目的はご案内のように全く違う。そこに一時代の終焉を描き新しいアメリカへ希望を馳せる映画として大きな感慨を残す所以がある。

現在の西部男ここに眠る。

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タイトル (本文) ブログ名/日時
グラン・トリノ
道に迷う全ての人に向けた人生講座。   ...続きを見る
Akira's VOICE
2010/05/22 17:38
『グラン・トリノ』(@「シネマのすき間」)
-----今日は、朝からgooがメンテナンスとかで、 なかなかここにはこれなかったのニャ。 もう、ずっと前から話したくてたまらなかった 『グラン・トリノ』だけに、 えいもあせあせ。 ... ...続きを見る
ラムの大通り
2010/05/22 18:22
グラン・トリノ〜黄昏のガンマン
公式サイト。クリント・イーストウッド監督・主演、ビー・ヴァン、アーニー・ハー、クリストファー・カリー、コリー・ハードリクト、ブライアン・ヘイリー、ブライアン・ホウ、ジェラルディン・ヒューズ、ジョン・キャロル・リンチ、ドリーマ・ウォーカー。クリント・イース.... ...続きを見る
佐藤秀の徒然幻視録
2010/05/22 18:37
グラン・トリノ
俺は迷っていた、人生の締めくくり方を―。 少年は知らなかった、人生の始め方を―。 原題 GRAN TORINO 製作年度 2008年 上映時間 117分 監督 クリント・イーストウッド 音楽 ... ...続きを見る
to Heart
2010/05/22 21:08
『グラン・トリノ』 ('09初鑑賞50・劇場)
☆☆☆☆☆ (5段階評価で 5) 4月25日(土) 109シネマズHAT神戸 シアター9にて 16:05の回を鑑賞。 ...続きを見る
みはいる・BのB
2010/05/22 21:10
グラン・トリノ
  イーストウッド監督作品   たとえば、何がなんでももう一度観なければいけない   と仮定しての話、   後生ですからすこぶる体調の良い時にお願いします、と   私の中で掲げるのは ...続きを見る
映画と暮らす、日々に暮らす。
2010/05/22 21:30
『グラン・トリノ』
□作品オフィシャルサイト 「グラン・トリノ」 □監督 クリント・イーストウッド □原案 デヴィッド・ジョハンソン □原案・脚本 ニック・シェンク □キャスト クリント・イーストウッド、ビー・ヴァン、アーニー・ハー、クリストファー・カリー、コリー・ハードリクト、ブライアン・ヘイリー、ブライアン・ホウ、ジェラルディン・ヒューズ、ジョン・キャロル・リンチ■鑑賞日 4月29日(水)■劇場 チネチッタ■cyazの満足度 ★★★★(5★満点、☆は0.5)<感想> 人生は肩の力を抜いたところから始まるような、... ...続きを見る
京の昼寝〜♪
2010/05/22 22:12
巨匠の遺言〜『グラン・トリノ』
 GRAN TORINO ...続きを見る
真紅のthinkingdays
2010/05/22 22:27
『グラン・トリノ』
クリント・イーストウッド監督・主演の最新作『グラン・トリノ』を観てきました。 評判に違わぬ素敵な作品でした。最後の方は本当に涙、涙。。。 ...続きを見る
Cinema + Sweets = ∞
2010/05/22 22:28
グラン・トリノ/クリント・イーストウッド
もうすっかりハリウッド映画界の巨匠の座を揺るぎないものとした感のあるクリント・イーストウッドが監督・主演を務めた最新作です。出演はこれが最後の作品なんて話も聞こえてきましたけど、その一方でいつもこれが最後と思って取り組んでいるというコメントも耳にしました.... ...続きを見る
カノンな日々
2010/05/22 23:14
グラン・トリノ
クリント・イーストウッドが監督・主演を務めたヒューマンドラマ。その他のキャストはビー・バン、アーニー・ハー、クリストファー・カーリー、コリー・ハードリクト、ブライアン・ヘーリー他。 ...続きを見る
Yuhiの読書日記+α
2010/05/23 00:36
mini review 09400「グラン・トリノ」★★★★★★★★☆☆
『ミリオンダラー・ベイビー』以来、4年ぶりにクリント・イーストウッドが監督・主演を務めた人間ドラマ。朝鮮戦争従軍経験を持つ気難しい主人公が、近所に引っ越してきたアジア系移民一家との交流を通して、自身の偏見に直面し葛藤(かっとう)する姿を描く。イーストウッド演じる主人公と友情を育む少年タオにふんしたビー・ヴァン、彼の姉役のアニー・ハーなどほとんど無名の役者を起用。アメリカに暮らす少数民族を温かなまなざしで見つめた物語が胸を打つ。[もっと詳しく] ...続きを見る
サーカスな日々
2010/05/23 00:54
グラン・トリノ
Gran Torino (2008年) 監督:クリント・イーストウッド 出演:クリント・イーストウッド、ビー・ヴァン、アーニー・ハー、クリストファー・カーリー 偏屈で頑固な老人が、隣家のタイ人一家との交流を通して変わっていく様を描く人間ドラマ 様変わりしていく街や人の流れに逆らい、人種や若い世代への偏見を隠すこともない為、家族からも疎まれる存在で、飼い犬だけが理解者という主人公の姿は、何となくコミカルでもあり笑いを誘う。 そんな中、自宅の庭先に立ち入ったギャングを銃で脅して追い払ったことが、結... ...続きを見る
Movies 1-800
2010/05/24 01:07
★「グラン・トリノ」
今週の平日休みは・・・といっても、 まだまだGWが続いてるみたいな雰囲気の木曜日にチネチッタで鑑賞。 平日のチネチッタは割引なしなので、 駅地下のアゼリアの金券ショップで1300円の共通前売り券を買ってから、 チケット入手するのが賢い選択!! ...続きを見る
★☆ひらりん的映画ブログ☆★
2010/05/24 01:47
「グラン・トリノ」
GRAN TORINO 2008年/アメリカ/117分 at:梅田ブルグ 監督: クリント・イーストウッド 原案: デヴィッド・ジョハンソン/ニック・シェンク 脚本: ニック・シェンク 撮影: トム・スターン 音楽: カイル・イーストウッド/マイケル・スティーヴンス 出演: クリント・イーストウッド/ビー・ヴァン/アーニー・ハー/クリストファー・カーリー/コリー・ハードリクト/ブライアン・ヘイリー/ブライアン・ホウ スティーブ クリント・イーストウッドという監督は…!... ...続きを見る
寄り道カフェ
2010/05/24 10:00
グラン・トリノ
予告もチラシも見ずに、予備知識なしで鑑賞―で、、、≪グラン・トリノ≫って車のことだったのね〜【story】朝鮮戦争の退役軍人で、自動車工の仕事を引退したウォルト(クリント・イーストウッド)は、妻に先立たれ、息子たちとも疎遠で単調な生活を送っていた。そんなある日、愛車グラン・トリノが盗まれそうになったことをきっかけに、アジア系移民の少年タオ(ビー・ヴァン)とその姉スー(アーニー・ハー)と知り合う。やがてウォルトとタオの間に友情が芽生えていくが―     監督 : クリント・イーストウッド 『チェン... ...続きを見る
★YUKAの気ままな有閑日記★
2010/05/24 14:11
【映画】グラン・トリノ…俄かイーストウッドファン復活(半年以上ぶり)
{/hiyoko_cloud/} 先週頭から喉を中心に体調不良{/cat_8/}だった私。 割と良くはなってきましたが…まだ完全健康体では無い感じですかね{/face_gaan/} ...続きを見る
ピロEK脱オタ宣言!…ただし長期計画
2010/06/21 23:29
グラン・トリノ-映画:2010-
監督:クリント・イーストウッド 出演:クリント・イーストウッド、ビー・ヴァン、アーニー・ハー、クリストファー・カーリー ...続きを見る
デコ親父はいつも減量中
2010/09/23 23:25

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コメント(10件)

内 容 ニックネーム/日時
>現在の西部男ここに眠る。

いいですね〜
この現在はぜひとも『いま』と
読ませてくださいね〜(^ ^)

先日の貴記事に
終わりよければ全て良し、と
ございましたが、私、本作の
エンディングがまさにそれでした。

ところで「ブルグ劇場」再放映は
ございますでしょうかね?
歌方面で忙しくいつのまにやら
“HD残量不足にて録画不可”の
中に含まれていたようでして。(- -)

ちなみに
1点の快挙(笑)に
「気持玉かわいい」を
進呈させていただいたのは
私めでございます。
勿論、観てませんが。
vivajiji
URL
2010/05/22 21:45
vivajijiさん、こんばんは。

>『いま』と読ませてくださいね〜(^ ^)
了解。^^)ゝ

>エンディング
少年がグラン・トリノを走らせ、
そこにイーストウッドの歌声が重なるところですか。
重苦しい雰囲気がさっと吹き飛びましたね。

>「ブルグ劇場」
厳しいかも。
というのも、これ自体が再放送だった
若しくは何かの事情で放映できなかったかどちらかなんですよ。
再放映だったらちと厳しい。

>“HD残量不足にて録画不可”
あらま。
お勧めだから、機会があったら是非。

>1点の快挙(笑)
昔みたいに手あたり次第に観ていれば、もっと出ますが。^^;
「かわいい」有難うございます。<(_ _)>
オカピー
2010/05/23 00:47
こんにちは.
アメリカの変容を、イーストウッドなりに描いた作品だと思います。
開拓の美意識を保存しつつ、自己否定をしていくわけですが、そのことでひとつの時代の終わり、あるいは終わらせ方というものを、感動的に描いていると思いました。
kimion20002000
URL
2010/05/23 01:05
kimion20002000さん、こんにちは。

全く仰るとおりですね。
僕は一種の西部劇と見ていますが、自ら西部劇であることを否定しなければならない(現代の)西部劇なんですね。
そこに感慨深いものがありました。
オカピー
2010/05/23 09:27
こんにちは。オカピーさんの採点、やはり9点でしたか!
我が家でも相方が、それほどイーストウッド映画の信奉者でもないにもかかわらず、「この映画はすごい出来だね」とやはり9点並の評価でした。

ただ、私はご存知の通り、個人的にはこの作品は観た後にとてもツラくなってしまって、シンドイ映画でした。。。

映画館で観た際には、この映画は米国人(というかW.A.S.P.)に特有の正義感と男気を描く一方で、米国に限らずどんな国にでも見られる暴力の連鎖を真正面から捉えている点が興味深いと思いました。

が、「人種間移民間同士の対立は収まらない一方で、アメリカの伝統は人種・民族を問わず良き移民たちが受け継ぐのだ」という一文を拝読して、そうか、そこだったのか!と今頃になって目からウロコ状態です。
RAY
URL
2010/05/23 15:00
RAYさん、こんばんは。

>9点
アメリカの現状を踏まえ、ここまできちんと作れば、という感じにさせられましたよ・・・。
最近の映画に不満を覚えているので、たまに良い映画に逢うと跳ね上がってしまうという傾向が無きにしも非ずですが。^^

でも、この作品は希望を以って終っているので、後味はそれほど悪くないと思いますですよ。彼の行為は自分の死をどうすれば最大限に生かし、どうすれば自分以外の人間の被害を最小限にするか、ということですから。
勿論自分をイーストウッドの身に置いてみると、相当辛いものになりますが、アメリカの未来のあり方を示唆した作品として胸に迫りました。

>目からウロコ状態
僕の勝手な解釈ですけど、当たらずとも遠からずではないかと。
オカピー
2010/05/24 00:37
こんばんは。
>アメリカの将来選ぶべき道
なるほどです。
アメリカ史というだけでなく、未来への提言でもあったのですね。

>一種の西部劇
同感です。
世間でよく言われている“老いたダーティハリー”ではないと思いました。
hash
URL
2010/05/24 01:13
劇場で観ていて、エンドロールが流れる映像とイーストウッドのしゃがれた歌声に思わず涙が溢れてきました。イーストウッドって、くどくなる一歩手前、ここまで描くと芝居がかって見える一歩手前で止めて、観るものを感動させる。そのあたりが上手いナァってとりわけこの間の彼の監督作品をみていてそう思う。
この後に公開された最新作モーガン・フリーマンとマット・デイモン主演の「インビクタス〜負けざる者」も地味だけどとっても良かった。スポーツの試合のシーンではアフリカチームが勝利するとわかっていたにもかかわらず手を握って熱中してしまいました。感動のツボと押さえ加減と匙加減を心得ている。上手いよなぁって思う。本作でも有色人種に対する偏見や蔑視に対するあからさまな描写も決して声高でなくって、だからこれがアメリカの本音を語っているんだろうなって思える。今年5月で80歳だとか。老いてますます監督作品に成熟を感じさせる。本作での彼の腕の筋肉の逞しさ!パワーとエネルギーが違うんだろうね。
でも私が彼の監督作品で今もって好きなのは「許されざる者」と「ミスティック・リバー」。BSで南北戦争時代を背景にした出演作「アウトロー」が放映されれるけどこれは未見なので楽しみです。
シュエット
2010/05/24 09:59
hashさん、こんばんは。

>未来への提言でも
イラク戦争が揺曳していた太平洋戦争二部作などと考え合わせると、そう思わざるを得ないですね。

>一種の西部劇
人物像にハリーに重なるところがあるにしても、これは西部劇ですよね。
ただ、西部劇であることを作品内部で否定しなければならない矛盾を抱えているわけですが。そこがまた興味深い。
オカピー
2010/05/24 11:36
シュエットさん、こんばんは。

>感動のツボと押さえ加減と匙加減
そういうのは良いハリウッド映画の伝統で、かと言ってハリウッド映画の甘さに落ちていないという両立を保っているのが立派なところですね。
そこへ行くと、僕がイーストウッドより高く評価しているレッドフォードは完全に「わが道を行き」観客の要求に迎合せずに、しかし独善にならず非常に高い映画性を維持していて、それはまた別の意味で立派だなあと思います。

イーストウッドに戻ると、70代になってからさらに質が上がってくるなんてのは映画界でも珍しいです。大リーグのバリー・ボンズが30代半ばから桁外れのホームラン打者になったのに似ている。

>有色人種に対する偏見
主人公はそれを自分の苦悩の逃げ場にしていたようです。だから、東洋人に優しくされると意外と拒否反応を示すことができないんですね。そういう意味でも面白かったなあ。

>「アウトロー」
割合面白かった記憶があります。
僕はハイビジョンの「ダーティハリー2」を久しぶりに見るつもりですが。
オカピー
2010/05/24 23:05

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