映画評「ベンジャミン・バトン 数奇な人生」

☆☆☆★(7点/10点満点中)
2008年アメリカ映画 監督デーヴィッド・フィンチャー
ネタバレあり

F・スコット・フィッツジェラルドの短編小説が原作ということになっているが、脚色したエリック・ロスが奇想天外な基本アイデア(ギミック)を利用して勝手に膨らませたものだろう。とにかく、そのアイデアが目立つ余りデーヴィッド・フィンチャーが監督という事実も影が薄くなったのではあるまいか。

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僕は基本的に観る前には何の情報を得ないことにしている。唯一知ってもいい情報は監督の名前で、ストーリーどころかジャンル、出演者も知らないで観ることが多いのだが、本作に関してはどんどん若くなっていく男の物語というアウトラインを知らされていた。それはそれで、どういう風に始まりどういう風に終るのかという興味が持てる為に、そう悲観しないで(笑)観ることにする。

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1918年、85歳の老衰状態で生まれて来たペンジャミン(ブラッド・ピット)が妻を出産時に失った父親(ジェースン・フレミング)により捨てられた後、老人ホームを仕切っている黒人女性(タラジ・P・ヘンスン)に拾われる。
 すぐに死ぬと思われたのに年が経つごとに少しずつ若返り、12歳(肉体は70代)の時に6歳の少女デイジー(エル・ファニング)と出会って彼女とは離合を繰り返し、遠回りをした後に彼が44歳、彼女が36歳の時に遂に結ばれ、6年後の1968年に娘キャロラインを授かる。が、今度は若くなって子供になってしまうことを恐れて家を離れていく。

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というお話が、ベンジャミンの日記を別の男性を父親と思っていたキャロライン(ジュリア・オーモンド)が老衰の身をベッドに横たえるデイジー(ケイト・ブランシェット)に読んで聞かせる回想形式で綴られるが、ロスの狙いの一つはその過程で第一次大戦以降のアメリカの社会風景をスキャンすることである。特に1920~30年代フィッツジェラルドが活躍したジャズエイジの時代色醸成は楽しめる。
 但し、アメリカ現代史の俯瞰という意味ではロスの旧作「フォレスト・ガンプ」の焼直しみたいなものであり、それに気付くと些か興醒めないでもない。

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もっとフィッツジェラルド的な部分では別の短編「カットグラスの鉢」でも扱われた老いること即ち時間の残酷さを浮かび上がらせ、作品の基調としている。その中で観客にその限りある人生の時間を大切に過ごす意義に気付かせるという寸法だが、話の本質的な面白さで見せるより時間軸操作など小細工を弄する作品が目立つ昨今の作品としては物語性の高いことを買っておきたい。観客を話に傾倒させることが商業映画の最初の使命だからである。

ブラッド・ピットやケイト・ブランシェットへの老若特殊メイクと特殊撮影の出来映えにも感心。

僕の頭はいつでも高校生くらい。徐々に見た目とのギャップが大きくなっています。

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この記事へのコメント

2010年02月27日 10:28
そうですね、これは、すごく物語性が高かったと記憶に残ります。
フィンチャーは、ひとくせある監督だと認識していましたが、本作では、文学色豊かな風味で、堂々と見せてくれました。
オカピー
2010年02月27日 14:37
ボーさん、こんにちは。

お話の方ではフィンチャーらしさがなく、そのせいか監督の影が薄い印象が残りましたが、映像は堅調。結果的に堂々たる作品になっていましたね。

>物語性
やはりお話がつまらなければ、話術も撮影も演技も何もないわけですからね、物語性は大変大事だと思います。

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