映画評「めし」

☆☆☆☆(8点/10点満点中)
1951年日本映画 監督・成瀬巳喜男
ネタバレあり

成瀬巳喜男がお付き合いの多い林芙美子の同名小説を映画化したドラマ。

またまたWOWOWの新作放映を録画し忘れて時間が空いてしまったので、先日「麦秋」を取り上げた小津安二郎との比較を兼ねてライブラリーからピックアップして再鑑賞と相なる。他にも候補があったが「めし」に落ち着いたのは「麦秋」と同じ1951年に作られたという理由からである。

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大阪でつましい生活を送っている会社員の夫婦(上原謙・原節子)のところに二十歳になる夫の姪(島崎雪子)が家出して転がり込み、やがて彼女の言動が二人の静かな生活に波風を立て始める。夫に秋波を送っているようにも見える若くて奔放な姪に嫉妬し、十年一日の如き平凡な生活と決別したいという向上心がおもむろに芽生えた美人で評判の妻は東京の実家に戻って熟考する時間を持ち、生計に苦労している知人と再会するなどした後、仕事で上京してきた(と言いながら本当は迎えに来たのであろう)夫と何となく和解する。

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平凡な生活にささやかな女性の幸福を見出すという結論は、女性が活動的になった現在ではピンと来ないかもしれないが、映画として木目細かくヒロインの心情を描いた秀作であることに変わりない。心情を描くと言っても小津安二郎のように純文学的なテーマ追求の為のそれではなく、昭和25年頃の堅実な主婦なら一度や二度覚えたであろう非常に現実的な閉塞感を浮かび上がらせたものである。従って、当時の平均的女性観客は恐らく小津より成瀬の作品に共感を覚えたに違いない。良くも悪くも小津の心境映画はハイブラウすぎるのである。

手法的にも一見似ているようで、成瀬は場面やシークェンスをカットではなくフェイドで繋ぐことが多い為に小津に比べて印象が柔らかく、同時に、時に挿入される小道などのショットが繋ぎの為の捨てショットではなく純然たる環境描写であると理解される。結果として展開に無理がなく、これも成瀬が近年再評価されている所以ではないかと思う。

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ただ、60年前一般ドラマでは非常に珍しかったヒロインのモノローグが、ナレーション全盛の現在ではネガティヴに受け止められる可能性、少なくともプラスには評価されない可能性があることは指摘しておきましょう。

小津映画では決まった表情しか見せない原節子も本作では表情が豊かで魅力的。

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この記事へのコメント

2010年02月11日 16:24
とても観たいです!
っと言うことで、未見です。(恥);
父が盛んに色っぽいと言ってた島崎
雪子さんはまだお若かった頃の映画なのかしら。

BSとかwowowとか小津さんや黒澤さんばっか。
成瀬さん特集ももっと企画してほしいです。
私には小津さんより成瀬さんのほうが
ピタリと来るんです。

>ハイブロウすぎるのである。

ブラボー!!
やっと“小骨”が取れたみたいに
スッキリ!(笑)
オカピー
2010年02月12日 01:27
vivajijiさん、こんばんは。

>島崎雪子
眼の大きな別嬪さんですよ。
貼りつけた一番下の画像の左に座っている方です。
正面からの大きな画像も一応準備をしたのですが、
やはり付けた方が良かったでしょうか。(笑)

>成瀬さんのほうが
そうでしょう。^^
人間やその喜怒哀楽に実感があるんだなあ。
小津はとにかく精密に描いてはいますが、人物に親近感が湧きにくい。
凄い作家であることを認めて申しているわけですけどね。^^

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  • めし

    Excerpt: (1951/成瀬巳喜男 監督/上原謙、原節子、島崎雪子、杉葉子、風見章子、杉村春子、二本柳寛、小林桂樹、大泉滉、進藤英太郎、山村聡、浦辺粂子/97分) Weblog: テアトル十瑠 racked: 2011-05-15 21:24