映画評「ワールド・オブ・ライズ」

☆☆☆★(7点/10点満点中)
2008年アメリカ映画 監督リドリー・スコット
ネタバレあり

リドリー・スコットがデーヴィッド・イグネーシアスのスパイ小説を映像化したポリティカル・サスペンスである。実際にはスパイ・サスペンスと言った方が近いと思う。

画像

英国マンチェスターのアジトを自爆させて乗り込んできた官憲をアロン・アブトブール率いるテロ・グループが爆死させる一幕がプロローグ。彼を捕縛しようとイラクで奮闘しているCIA工作員レオナルド・ディカプリオが自爆テロを嫌がって情報提供に申し出てきた男と取引するが、アメリカから指示を送る上司ラッセル・クロウに「男をだしにして、捕えに来る連中を見極めろ」と言われた為結局殺害する羽目になる。

画像

やがてヨルダンに送り込まれた彼は同国情報局のトップ、マーク・ストロングと協力し合ってアブトブールに接近していくが、クロウの独断的な作戦が失敗に帰し、全く事情を知らぬまま当局から国外追放処置を受けてしまう。

というのがちょうど半分くらいが終ったところまでのお話で、クロウの独断専行に嫌気がさしていく主人公の様子を布石的に構成する目論見のようで、現地の看護婦ゴルシフテ・ファラハニとの恋模様などを挟んで展開しているが、後半の内容を考えるとかなりまだるっこい。

画像

その後半は焦点が定まっていよいよ本番といった面白さが出始める。即ち、主人公はアラブ人の建築家を指導者とする偽のテロ組織による米軍基地爆破を捏造、アブトブールに興味を持たせてまんまとおびき寄せるが、何者かにファラハニ嬢を誘拐されテロ・グループに捕またことで攻守ところを替え、ピンチに陥る。という「いずれがキツネかタヌキか」の騙し合いで手に汗を握らせるのである。

画像

また、前半で溜め込まれた主人公の嫌気が爆発して遂にはCIAと決別するといった幕切れを見ると、娯楽テイストの中に現実の世界で長引くテロリストとの戦いに対する作者の厭戦的な気分が底流に沈潜している感じがする。かと言って、ことさら社会派作品と騒ぎ立てるほどでもない。

リドリー・スコットの描写はアクションにCGをちょろちょろ加えるところは気に入らないが、さすがに馬力はある。ディカプリオも大分大人の役が板についてきたことを感じさせる力演。

ディカプリオがクロウに苦労させられる話・・・お粗末。

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!

ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。

→ログインへ

なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた
面白い
ナイス
ガッツ(がんばれ!)
かわいい

気持玉数 : 0

この記事へのコメント

2009年12月27日 23:14
こんばんは。
弟T・スコットが撮った「スパイ・ゲーム」と被る点が多いですね。
結末を知った上で、L・ディカプリオとM・ストロングを中心に、R・クロウを脇役として見ると、かなり面白かったです。
シュエット
2009年12月28日 14:23
>「いずれがキツネかタヌキか」の騙し合いで手に汗を握らせるのである。
>娯楽テイストの中に現実の世界で長引くテロリストとの戦いに対する作者の厭戦的な気分が底流に沈潜している感じがする。
これはやっぱり娯楽作品なんですね。なんだろうけれどディカプリオの気張yた演技みていると、やっぱりシリアスな社会派ドラマって目でみてしまって、そういう目でみるといささか生ぬるく、なんか中途半端な印象だったわ。
<私の2008年の映画見納めは劇場公開作品で「ウォーリー」良かった!の後、記事アップしてないけれど観たのは「地球の静止する日」「ワールド・オブ・ライズ」。この2本はゲンナリして帰ってきた。>ってブログに書いてたわ。こういうテーマって、どうしても私は娯楽として観れずにシリアス視線で評価してしまうなぁ。内容的にもさして斬新なものもなかったしぃ…。
オカピー
2009年12月28日 15:13
hashさん、こんばんは。

>「スパイ・ゲーム」
そうでしたね。
観ている最中は余り意識しませんでしたが。

最近のトニー・スコットはがちゃがちゃ映像で僕は批判的になっていますが、この頃は良くて、本作より面白かった印象があります。

>ストロング
あんなことを言いながら、あんなことをするなんて。(笑)
オカピー
2009年12月28日 15:25
シュエットさん、こんばんは。

>シリアスな社会派ドラマって目でみてしまって
シュエットさん自身がシリアスだからですよ。^^
本作なら娯楽作であると同時に社会派として観て特段不思議はないわけですが、「キッスで殺せ」を社会派として観るのはお門違いなので、割り切ってみてくださ~い。(笑)

>中途半端
僕なんか最初から社会派ドラマとしては観ていないので、そういう感想は余り出て来ず、それより前半もっと切れ味よくできんかい、という不満の方が大きい。結局眼目は「嘘の付き合い」なんですから。

>内容的にもさして斬新なものもなかった
弟のトニーが似たようなのを何年も前に作っていますしねえ。
本格的なスパイ映画は遅くとも前の冷戦が終わった時に終わったと僕は思いますし、40年も前に「トパーズ」は既に古いと言われたわけですから、実際には60年代に終わっていたのでしょう。
シュエット
2009年12月29日 10:29
>シュエットさん自身がシリアスだからですよ。^^
根はねぇそうなんだけど、ミーハー部分もあるしねぇ。「グラディエーター」なんかはいいなぁ、いいなぁ、やっぱりラッセル・クロウいいよなって思うしね。
なんかねぇ、バランスだと思うんですよね。サスペンスじゃないんだけど「ゴッドファーザー」だって「フルメタル・ジャケット」だって、それから、それから、それらってすっごくシリアスだけど映画としてもやっぱり面白いし。本作って、リドリー・スコットって娯楽として観るには結構生真面目につくってません? なんか面白みとか、嘘そのものが嘘ってところのそんなにサスペンス感じなかったなぁ。現実のマネーゲームともいえる株価操作やアメリカ企業倒産の実態などのドキュメンタリーの方がはるかにサスペンスだし、ドラマティックって思ってしまうなぁ。
オカピー
2009年12月29日 22:25
シュエットさん、こんばんは。

>ミーハー部分もあるしねぇ
それがなくちゃ、映画はつまらんですよねぇ。

>リドリー・スコット
「エイリアン」のイメージが強いんですよ、僕には。
あれにしてもはったりではなく、真面目に作られた作品ですけどね。
割合正攻法なんでしょう。だから、アクションに馬力を感じる。細切れとアップの劇画的カット割りしかできない監督ばかりですから、余計に目立つんだなあ。

>嘘そのものが嘘ってところのそんなにサスペンス感じなかったなぁ。
ディカプリオの嘘は我々に解っているから、実際にサスペンスの要件を成すのは彼がはめられる方の嘘一つというのがちょっと弱かったかもしれません。

>ドキュメンタリー
やはり現実には勝てないというところはあります。
つまり、劇映画は生活感情に訴える部分があるかないかによるのでしょう。
それでも、昔は映像の力で勝負できたのに、デジタル時代の映像はつまらんから。

この記事へのトラックバック

  • ワールド・オブ・ライズ

    Excerpt: 公式サイト。デイビッド・イグネイシアス原作、 リドリー・スコット監督。レオナルド・ディカプリオ、ラッセル・クロウ、マーク・ストロング、ゴルシフテ・ファラハニ、オスカー・アイザック、サイモン・マクバーニ.. Weblog: 佐藤秀の徒然幻視録 racked: 2009-12-19 15:42
  • ワールド・オブ・ライズ/レオナルド・ディカプリオ

    Excerpt: 宣伝量はそれほど多くなかったけどこれも年末向けの大作映画ですよね。ここのところアクション系のサスペンスドラマ作品が続いてるような気がするレオ様ですが、今度はCIAのスパイとして中東を舞台にテロ組織との.. Weblog: カノンな日々 racked: 2009-12-19 17:46
  • ワールド・オブ・ライズ

    Excerpt: 信念で動く人間たちのドラマ。   Weblog: Akira's VOICE racked: 2009-12-19 17:51
  • 『ワールド・オブ・ライズ』'08・米

    Excerpt: あらすじCIA工作員のロジャー・フェリス(レオナルド・ディカプリオ)は世界中の情報網の中枢に潜入し、現場を知らない上司にキレながらも、命を張って働く男。彼の上司であるベテラン局員、エド・ホフマン(ラッ.. Weblog: 虎党 団塊ジュニア の 日常 グルメ 映画 ブログ racked: 2009-12-19 19:00
  • 『ワールド・オブ・ライズ』

    Excerpt: (原題:Body of Lies) 「オダジョーがなぜかディカプリオとラッセルに…」 -----ん?それって、どういうこと? 「いや、今日は『悲夢』という キム・ギドク監督の作品を喋る予定だったん.. Weblog: ラムの大通り racked: 2009-12-19 19:37
  • ワールド・オブ・ライズ

    Excerpt: どっちの嘘が、世界を救うのか。 原題 BODY OF LIES 製作年度 2008年 上映時間 128分 原作 デイヴィッド・イグネイシアス 『ワールド・オブ・ライズ』(小学館刊) 脚本 ウィリアム.. Weblog: to Heart racked: 2009-12-19 21:55
  • 『ワールド・オブ・ライズ』

    Excerpt: だんだん年末のバタバタでなかなか当日更新が難しくなってきてますw。 今回はこの前の『プライド』の試写会の後に新宿ピカデリーにて鑑賞した『ワールド・オブ・ライズ』。 思っていたほどにはとっつきにくい.. Weblog: cinema!cinema! ミーハー映画・DVDレビュー racked: 2009-12-19 23:29
  • ワールド・オブ・ライズ

    Excerpt: デイビッド・イグネイシアスの小説「ボディ・オブ・ライズ」が原作で、監督はリドリー・スコット、主演はレオナルド・ディカプリオ&ラッセル・クロウのスパイもの。 <あらすじ> CIA中東局の主任ホフマン(.. Weblog: Yuhiの読書日記+α racked: 2009-12-19 23:30
  • 独断的映画感想文:ワールド・オブ・ライズ

    Excerpt: 日記:2009年5月某日 映画「ワールド・オブ・ライズ」を見る. 2008年.監督:リドリー・スコット. 出演:レオナルド・ディカプリオ(ロジャー・フェリス),ラッセル・クロウ(エド・ホフマン),マー.. Weblog: なんか飲みたい racked: 2009-12-20 00:29
  • ★「ワールド・オブ・ライズ」

    Excerpt: 今年1本目の劇場鑑賞作は、 映画鑑賞中にクルマの洗車まで出来ちゃう「TOHOシネマズららぽーと横浜」で2本。 もちろん洗車は有料です。 Weblog: ★☆ひらりん的映画ブログ☆★ racked: 2009-12-20 02:22
  • 『ワールド・オブ・ライズ』

    Excerpt: □作品オフィシャルサイト 「ワールド・オブ・ライズ」□監督・製作 リドリー・スコット □原作 デヴィッド・イグネイシャス (「Body of Lies」)□脚本 ウィリアム・モナハン □キャスト レオ.. Weblog: 京の昼寝~♪ racked: 2009-12-20 10:04
  • ワールド・オブ・ライズ(DVD)

    Excerpt: どっちの嘘が、世界を救うのか。 Weblog: ひるめし。 racked: 2009-12-24 11:47
  • ワールド・オブ・ライズ

    Excerpt: Body of Lies (2008年) 監督:リドリー・スコット 出演:レオナルド・ディカプリオ、ラッセル・クロウ、マーク・ストロング 欧州各地で起きた爆弾テロの首謀者を捕らえるべく策を企てるCI.. Weblog: Movies 1-800 racked: 2009-12-27 23:10
  • 349「ワールド・オブ・ライズ」(アメリカ)

    Excerpt: 誰の嘘が優ったのか?  世界中を飛び回り、死と隣り合わせの危険な任務に身を削るCIAの工作員フェリス。一方、彼の上司はもっぱらアメリカの本部や自宅など平和で安全な場所から指示を送るベテラン局員ホフマ.. Weblog: CINECHANの映画感想 racked: 2009-12-27 23:20
  • 『ワールド・オブ・ライズ』を観たぞ~!

    Excerpt: 『ワールド・オブ・ライズ』を観ましたCIAに雇われた元ジャーナリストの男が、ヨルダンで大規模なテロ組織を追跡する姿を描くサスペンス・ドラマです>>『ワールド・オブ・ライズ』関連原題: BODYOFLI.. Weblog: おきらく楽天 映画生活 racked: 2010-01-04 23:05