映画評「ブタがいた教室」

☆☆☆(6点/10点満点中)
2008年日本映画 監督・前田哲
ネタバレあり

甘利はるななど「コドモのコドモ」と共通する子役たちがチラホラする学園ドラマ。実際にあったお話をベースにしているだけに「コドモのコドモ」より問題作かもしれない。

ある小学校で6年を担当する若手教師(妻夫木聡)が子供たちに「ブタを育てて最後に食べることにします」という妙な提案をし、校長(原田美枝子)の承諾を得た上で校庭で飼うことにするが、当然のように愛着の湧く生徒も多く出てきて、26人の生徒の意見が「下級生に引き継いで育てて貰う」と「食べる→食肉センターへ送る」派とで綺麗に二分された為に最終的には教師が判断を下すことになる。

語弊があるが映画としては退屈しないで観られる。子供たちの討議も実に充実して、意見の近い生徒には拍手を送りたくなる。当初は観念的な意見も段々奥が深くなって立派なものになっていく。

しかし、映画では、まして小学校を舞台にするならなおさら、後味が大事である。本作の後味は良いかと言えば、僕は決して良くないと思う。この教師の目的は恐らく食料になって行く生命の尊厳を知り、食べ物を大事にする気持ちを養っていこうということであり、その点で「いのちの食べかた」を思い起こさせる。あのドキュメンタリーも作品としては立派だったが、見た目が殺伐としている為に後味が悪かった。

本作の後味の悪さは、最終的に生徒にこうした苦悩やジレンマが生じるというのを解っていた上で(教師は「名前は付けないほうが良い」と事前に言っている)行われたこのプログラムは生徒に対して過酷すぎるという考えから生まれるものである。子供たちが名前を付けた時点で先生が連れてきた子ブタは事実上のペットになって差別化が行われ、一般名詞「ブタ」とはかけ離れた存在になる。

小学生ではこの辺りに深い認識があるはずもなく、「食べない」派は生命自然消滅論を唱え、「食べる」派は責任論をうち立てる。しかし、ペットにした以上、最後まで面倒を見る=食べる=責任を果たすといった理屈は乱暴。そもそもブタだから食べなければならないという理屈はない。実際的に考えれば、生徒が名前を付けた段階で教師は企画をキャンセルすべきだったろう。生命の尊厳と食料の大事さとは本来別次元のものと思われる。
 結果的に真剣な良い議論が出来て子供たちが成長した(かもしれない)ことと、このプログラムが良かったか否かもまた別問題である。

後味はともかく、子供たちの演技は立派で、特に討論での迫真ぶりから、生徒に扮した子役が生の声を出しているにちがいないと推測しながら観ていた。案の定、本作に関する記事などを読むと、子役たちには真っ白な脚本が渡されたと書かれている。が、それを完全には信用することはできない。恐らく13人は「食べる」賛成側、13人は反対側という程度の割り当てをした上でその立場になって考えさせ意見させた結果ではないだろうか。
 僕は即興演出については概ね否定的だが、本作のような本格的討論場面では効果があると解ったことは収獲。

「陽のあたる教室」のほうが良いです。

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この記事へのコメント

2009年12月09日 19:00
こんにちは。
僕はこのモデルとなった新人教師の指南役にあたる女性教師に批判的です。
この新人教師は、なかなか自分なりに考えているようだし、映画としての妻夫木君は、なかなかいい表情をしていたと思います。
オカピー
2009年12月10日 01:12
kimion20002000さん、こんばんは。

>女性教師
読ませて戴きましたが、彼女の指導はどうかと思いました。
動物の捌き方を知ってどうなるものでもないでしょうに。
それとの比較ではしっかりした考えのようには思いますね。

しかし、個人的には提案された時点で僕なら承知しないでしょう。
僕なんか蝿さえ殺せない人間ですから、一度でも世話をしたブタを殺したり、食べるといった発想すらできませんねえ。TT

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