映画評「GOTH」

☆☆★(5点/10点満点中)
2008年日本映画 監督・高橋玄
ネタバレあり

原作者の乙一が最近の文芸作品に疎い僕にもお馴染みになって来たので観てみたサイコ・スリラーである。

高校生・本郷奏多は優等生の表面とは裏腹に実は変死体に興味を持つ変った性癖を持っているが、夏でも長袖を着ている陰気な美少女・高梨臨に同好の匂いを敏感に感じ取られ、二人で協力して耳目を集めている連続手首切断殺人事件を解析、犯人に接近していく。やがて長い髪の溌剌とした美少女を狙っている犯人にヒロインも捕えられてしまう。

お話は面白い部類である。事実上の探偵コンビと言っても良い二人が犯人に興味は持っても犯人を仕留めることを目的としていないのが最たる理由で、寧ろ犯人が詳細に記録をつけている手帖が消えたことで犯人が殺人を止めるとしたら「残念だ」と言う辺りの屈折ぶりが興味深い。

周りが半袖の中で二人とも長袖という様子は二人が他の人とは違う印象を与える効果があり、同時にヒロインに関してはリストカットの痕を隠す実際的な理由があると判る仕組みになっている(主人公にも或いは何か事情があるかもしれないが解らない)。その差別化を強調しない演出には不満が残るものの、まずまずの出だしと言うべし。
 この段階で気に入らないのは誰かの主観らしい被害者映像の出たとこ勝負的な挿入で、ミスリードする狙いがあるようだが不明。

いずれにしても、進行するに連れて調子が落ちる感は否めない。序盤こそ興味をそそられても、主人公たちに犯人追及の目論見がない為に先への興味が続きにくいからである。へたにミステリー的な展開にせずに、二人の人物造形を眼目にしていけばもっと楽しめたにちがいない。

ところが実際には性格設計が中途半端で、例えば、犯人をおびき寄せる目的があるとは言え長袖を着ていた所期の意図も無視して途中でギャル風の(前の被害者と同じ)衣装を着るなどヒロインの行動に一貫しない部分が出てくるのはまずい。しかし、前後の対比が鮮やかなだけにディテールの工夫次第で優れた趣向になっただろう。

結果的に物語の狙いもはっきりしなくなった。探偵役の主人公がヒロインの人格形成の謎を突き止めるのだが、それを見せ場にする前提で物語を進行していないので観客は首を傾げながら見終えることになる。マジックを観る前に種明かしをされる如し。

ごっつ(G)大いに(O)大変(T)変(H)の略でしょ。

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この記事へのコメント

2009年11月28日 01:22
乙一の小説は3年前に一時期ハマって、何冊か読みました。
この「GOTH」ももちろん。
小説ではヒロイン 森野夜が『高校の志望動機』について神山樹と話をした際に、「『シボウドウキ』ってこの字を思い浮かべてしまったわ」と言い放ち『死亡動機』と書いてみせたり、そういう描写のセンスは気が利いていたり。

ただ、ライトノベルなだけあって文庫本1冊、1時間で楽勝で読めてしまうような・・・つまり「ちと軽い」という要素も否めません。

映画化されていたんですね!知りませんでした。
個人的には日本で撮るよりも、トム・ティクバかデヴィッド・リンチあたりに撮ってもらった方が、内容にぴったりハマる画作りをしてくれそうな気がします。
オカピー
2009年11月29日 00:46
RAYさん、こんばんは。

>乙一
昨年知ったばかりですが、深刻すぎずなかなか映画向きかなあという内容の作品が多そうですね。

>シボウドウキ
死ばかり考えている連中らしい、面白い発想になっていますなあ。
今「死ばかり」と打とうとしたら【芝刈り】が出てきて、笑えました。^^

>トム・ティクバかデヴィッド・リンチあたりに
僕がプロデューサーなら、多少若者らしい軽さも出しそうなティクバ氏にしたいですね。
リンチだとめまいを起こしそう。(笑)

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