映画評「レクイエム・フォー・ドリーム」

☆☆☆★(7点/10点満点中)
2000年アメリカ映画 監督ダーレン・アロノフスキー
ネタバレあり

アメリカでの評価が抜群に良い(2009年11月25日現在IMDbで62位)ので長いこと観たいと思っていたが、衛星放送中心の消極的鑑賞スタイルがたたって今頃になったダーレン・アロノフスキー監督作品。「π」は結構早く出たのにね。

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TVを見るくらいしか楽しみのない未亡人エレン・バースティンがTVの視聴者参加番組に出演してほしいと掛かってきた電話に意気揚々とし、出演する際には息子ジャレッド・レトーの卒業の時に来た赤いドレスを着ようと袖を通してみると贅肉が邪魔して着られない。そこで掛かった医者から出されたのがダイエット・ピル事実上の麻薬で、やがて幻想を見るまでに中毒になる。
 その息子は甲斐性もなく母親のTVを質屋に持ち込んだり碌なことはしないが、黒人の友人マーロン・ウェイアンズのアイデアで薄めたヘロイン密売でぼろ儲けを企むうちに恋人ジェニファー・コネリーと共に中毒になり、販売する麻薬にも事欠くようになる。
 結局注射跡が化膿したレトーは片腕を失い、ウェイアンズは差別の激しい刑務所行き、ジェニファーは麻薬の為に売春をする羽目になり、母親は電気ショック治療で廃人となってしまう。

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言わば、麻薬の怖さを訴えた麻薬撲滅キャンペーンみたいな映画で、60年代後半くらいから盛んに作られたお話の蒸し返しに過ぎず、ここまでストレートに中毒者の零落ぶりを描いたのはさすがに珍しいとは言え今さら内容的には何ということはないが、アメリカで受けた理由の一つはアメリカでは麻薬がごく身近である為に「明日は我が身」と思って観ることができた人が多いからではあるまいか。

もう一つの理由は、例えば左右二分割画面(一つのカメラで撮れる部分を敢えて二分割にしたところなどは面白い)、コマ落としショット、魚眼レンズを使ったデーヴィッド・リンチ風白昼夢的場面、といった具合に次々に繰り出される凝った映像処理に“参っちゃった”若い人が多いからにちがいない。具体的には、同じ若しくは似たショットの繰り返しが麻薬の反復性・常習性、魚眼レンズなどが幻想効果を上手く表現している為に歓迎されたのではないかと想像するが、少なくとも現在の僕の眼にはいじり過ぎで却って古臭い感じさえするし、注射から瞳孔へのショットの繰り返しはしつこすぎる。

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それより僕にとって問題は赤い服なのだ。
 母親が赤いドレスに拘り、レトーの夢の中に赤い服を着た恋人ジェニファーが出てくる辺りにフロイトの近親相姦的観念を含ませるアロノフスキーの意図を感じる。それを麻薬への耽溺と何らかの形で関らせていると思いつつも正体が掴めず、気になって仕方がないのである。

芸能人必見の映画。

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この記事へのコメント

2009年11月28日 11:19
こんにちは。
私は、この映像表現に、けっこう楽しんだクチです。
赤い服には思いがいたりませんでしたっ! たしかに何かありそうですね。
オカピー
2009年11月29日 00:52
ボーさん、こんばんは。

>映像表現
内容が内容だけに凝った映像で正解なんでしょうけど、ちょっとやりすぎかなあと思いましたですね。
近作の「ファウンテン」も相当凝っていました。

>赤い服
あれが夢でなければ、監督のただの好みかもしれませんが。
2009年12月01日 18:51
赤い服に関してなのですが、わたしは女の象徴だと思いましたよ。
はっきりいうと経血のような・・・・
孤独な母親もやっぱりきれいでありたい、みんなに認められたいと願ってる。
夫がいたころ、息子がまだ小さかったころのあの赤い服・・・・
そしてジェニファー・コネリーは若さの象徴なんじゃないかと。
かつて母親だってこのようにきれいで美しかったんだよってね。
まあ、いわば欲望ってことでしょうかね。などとコメント欄を汚してます(苦笑)
あ、わたしの個人的な思いではありません(大汗)
あくまでも映画ね、映画(^^)
オカピー
2009年12月02日 01:14
しゅべる&こぼるさん、こんばんは。

>経血
それは思いつきませなんだ。^^
女の欲望でもあるかあ。そういうこともあるかもなあ。

僕は、あれが夢の中ということなので、赤い服という共通項で母親を恋人と同一視している、つまりエレクトラ・コンプレックスがあるような、或いは若者自体が母親の美しい時代を思い起こしている・・・てな感じがしましたよん。

麻薬から派生する醜悪との対比という気もするし、麻薬が引き起こす幻想でもあるのだろうし。
やっぱり、よく解りませんや。

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