映画評「1408号室」

☆☆☆(6点/10点満点中)
2007年アメリカ映画 監督ミカエル・ハフストローム
ネタバレあり

「シャイニング」を思い出させるものがあるなあと思っていたら、原作が同じスティーヴン・キングでござった。映画を観る前には監督(及び、TV放映の場合には劇場公開映画か否か)の情報しか得ないことにしているが、そうするとこういう勘を楽しむことも出来てお得。

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神も霊も信じない不信心者なのに心霊スポットを探訪しては書物にしている作家ジョン・キューザックがニューヨークにあるドルフィン・ホテルの1408号室に近づくなという手紙を受け取り、興味を呼び起こされて早速向う。支配人サミュエル・L・ジャクスンの「過去に56人も死んでいる。部屋に入るな」という再三の忠告に耳を貸さず、鍵を受け取っていざ入ってみると平凡な部屋に過ぎないので些かがっかり。
 ところが、ラジオからカーペンターズの「愛のプレリュード」が聞こえたのを手始めに、窓に挟まれて怪我をした手を洗おうとすると突然熱湯が噴出、時計が60:00からカウントダウンを始め、支配人の語った「1時間持った者はいない」という声が彼の頭の中で不気味に響く。

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最近のホラー映画は大きな音声を突然使うなどのショック演出に頼り過ぎて興醒める作品が多いが、本作はそうしたこけおどしを余り使わずにじっくり恐怖を醸成する昔風の演出を採っているので好感が持てる。窓を伝わって隣の部屋に逃げ込もうとしたら窓が存在しなかったり、向いのビルの住人に助けを求めたらそれが自分の影像と判ってがっかりという一幕は秀逸。

この部屋に巣食っている邪悪なものは部屋に入った者の潜在意識に入り込んで過去を見せて自殺に追い込むという趣味があるらしく、キューザックに幼い娘を失ったことに始まる苦悩を蘇らせる。それが原因で妻との不和が始まり現実主義者になったことが観客にも判って来るという趣向も良いが、些か辛気臭くなり過ぎた嫌いがなくはない。

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その後も部屋から出たと思っていたらそれも部屋が見せていた幻想と判明するくだりや、ここでは詳細を伏せておく幕切れが上首尾。

といった具合で、ぞっとする怖さという点で不満が残るので大量得点というわけには行かないが、最近のホラー映画としてはかなりきちんと作られている。

「愛のプレリュード」は結婚生活の歌だからね。

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この記事へのコメント

2009年10月04日 09:19
こんにちは!
これ、おもしろかったです。ホラーはあまり見ていないほうですが、ていねいに作った印象はありますね。
オーソドックスなのが怖い、内面、精神を攻めてくるのが、じわじわ怖い感じで、楽しみながら観ていました。
カーペンターズは効果満点でした。
オカピー
2009年10月04日 15:04
ボーさん、こんにちは。

最近のホラー映画は、何の布石もないこけおどしばかりで「つまらない」と言いながら尽く観ていますが、これは珍しくきちんと作られていました。
オーソドックスが今となってはオーソドックスでないので、こういう心理的に押す映画の方が面白いですよね。

>カーペンターズ
ソフトなMORだから嫌味に聞こえるところが良いです
シュエット
2009年10月06日 09:31
こちらにもTBとメッセージありがとうございました。
たしかに昨今の作品の中ではきちんとつくられた映画でしょうね。私もやはり最後まで見てしまったし、観た後の後味も悪くなかった。
でも途中でどうでもよくなってきたけど…とにかく結末は、主人公は無事に脱出できるのか? これは彼の中の闇が作り上げた世界? 結構楽しませてくれたけれど、でももう一度みたいか?ってなるとそうじゃない。奥行きというか深みというか、やはりそれが感じられないんですよね。「モーテル」に比べたらずっと良かったけどね。
でもジョン・キューザック「さよなら、いつかわかること」とはまたガラリと変わって、そんなところをしきりに感心してしまった映画。
シュエット
2009年10月06日 09:44
追記
ケン・フォレット原作の「針の眼」先日記事あげたんですけど、いやぁドナルド・サザーランドはやっぱいいですネェ。
P様の記事に「シャインニング」が引き合いに出されていたので関連で。
この作品でも「シャイニング」とよく似たシーンがあったわ。
女性が逃げ込んだ部屋のドアを開けようとするするシーン。女は夢中で斧を振りかざす。サザーランドとケイト・ネイガンの二人の迫真の演技は息詰まるほど。
「シャインニング」よりもこっちのほうが男女の情愛が絡んでいるだけに余計にネイガンの必死さとか辛さが痛いほど伝わってきたから、彼女が最後に見せる
精根尽き果てたって姿はリアルに伝わってきたわ。
これは何度も観たい作品。
オカピー
2009年10月07日 09:10
シュエットさん、おはようございます。

ホラーは元来B級(低予算)映画でしたが、本作はキャストに大物を配置してムード的にはA級。怖がらせ方もムード派で、布石をしっかり置いている為にショック演出も効果を発揮していました。
物語的には90分を飽きさせないというほどではないにしても、ジャンル映画としては良の部類。ジャンル映画は中身がからっぽでも、いかに上映時間を感じさせないかが命題でしょうから、その意味ではこんなものでしょう。
ロードショーで観たら些か金が惜しい気がする人が多いかも。
「モーテル」はお話も弱体、キャストはもっと弱体でしたからね。あれで肩透かしの演出がうまければもっと買えたのですけど。

>「針の眼」
結構女性に人気のある作品ですね。
僕の知っている女性もこの作品を話題したことがありましたし。
男女の絡みがスパイ映画としての純度を下げる代わりに、文学的な面白さを醸し出しているのかも知れません。
就職前後に一度観ただけで詳細はボケていますが、もう一度観る価値はあるようですね。^^

>サザーランド
不思議な存在感のある男優ですので、主演は減りましたが、脇役で重宝されているようですね。結構目にします。

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