映画評「ゴーン・ベイビー・ゴーン」

☆☆☆★(7点/10点満点中)
2007年アメリカ映画 監督ベン・アフレック
重要なネタバレあり。結末に触れていますので要注意。

アウェイ・フロム・ハー 君を想う」のサラ・ポーリーは徹底した作家主義スタイルで強い印象を残したが、本作で同じように監督進出を果たした俳優ベン・アフレックの仕事ぶりも落ち着きがあってなかなか印象深い。残念ながら日本劇場未公開に終っている。

ボストン、4歳の幼女が行方不明になり、警察だけでは頼りにならぬと伯母が、ケイシー・アフレックとミシェル・モナハンの若い私立探偵コンビに少女の捜索を依頼。二人は地元の刑事エド・ハリスとジョン・アシュトンと協力し合って解決の糸口を探し始め、少女の母エイミー・ライアンが麻薬常習者で麻薬ディーラーのボスの金を掠めたことを掴み、どうやらボスが金を取り戻す為に誘拐したものだろうと推測、交渉を始める。

というのが前半のお話で、事件の進展ぶりはハードボイルド映画風だが、画面から受ける印象は少し違い、そこに本作の狙いが見え隠れする。即ち、刑事二人が探偵コンビに妙に協力的だったり、池のできた採石場での幼女と大金の交換作戦が不調に終わって幼女が池に落ちたことで刑事と探偵コンビの画策が“発覚”した時警部モーガン・フリーマンが文句を言いつつ、そのまま捜査を続行させることが後半へのヒントとなっている。

と、ここまで言えば最後まで言ったのも同然、多少どんでん返し的な狙いはあるものの本格ミステリーでも本格サスペンスでもなく、かつ、結末を話さずには本作のテーマに触れられない都合上重要なネタばれをしてしまうが、アフレック君は第2の誘拐事件の不首尾を受けて引責辞任した警部が幼女の行く末を案じて引き取っている現場を見てしまう。ここで彼は法律を取るか幼女の幸福を取るか二者択一を迫られ、結局法律を選ぶ。

つまり、法を守ることが人間の幸福を考えた時に果して正しいことなのか、という問題提議をミステリー手法で行った社会派ドラマで、主人公のアフレック君が自分の選択に疑問を持つところで終わるのだが、それだけに後味は相当悪く、楽観的な結末の多いアメリカ映画としては非常に厳しい幕切れであると感心させられる一方、手放しで褒められないところがある。

作劇的には主人公が少年を殺した変態を射殺するエピソードを入れたのがうまい。テーマ展開の布石になっているからで、少年嗜虐の変態もネグレクトを続ける親も子供の平和や幸福を考えた時には五十歩百歩ではないか、即ち、残虐な行為にやりきれなくなって変態を殺した青年と狂言誘拐により幼女を引き取ろうとした警部に道義的にどれほどの違いがあるのかというニュアンスが伝わり、法律的正義と道義的正義の間の落差という問題が強く浮かび上がるのである。

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この記事へのコメント

2009年08月14日 00:45
こんばんは。
「ミスティック・リバー」と同じ原作者ということもありますが、全体的にクリント・イーストウッドの演出スタイルを真似たようなところがありました。
監督ベン・アフレックは次回作で真価が問われそうです。
オカピー
2009年08月14日 18:21
hashさん、こんばんは。

>ベン・アフレック
マット・デーモンと共同で書いた「グッド・ウィル・ハンティング」ではアカデミー脚本賞を受賞しましたから、役者よりそちら方面のほうが向いているかもしれませんね。
役者としては弟の方が上みたいです。

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