映画評「ランボー 最後の戦場」

☆☆☆(6点/10点満点中)
2008年アメリカ映画 監督シルヴェスター・スタローン
ネタバレあり

新機軸を狙って失敗するより古いシリーズを蘇らせてそこそこ成功する方が良いだろうという思惑はシルヴェスター・スタローンの人気シリーズ第6作「ロッキー・ザ・ファイナル」では図に当った。興行成績の結果は知らないが、少なくとも旧作からの学習が伺える佳作となり、僕は非常に好印象を覚えている。スタローンのもう一つのヒット・シリーズの20年ぶりの第4作は、スタローン自身がシリーズ初の監督を務めた意欲作。

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ミャンマーの軍事政権が少数民族カレン族を迫害しているという現実を土台にしたお話で、タイ北部で蛇狩りやボート運搬で生計を立てているジョン・ランボー(スタローン)がキリスト教系のアメリカ支援団に頼まれてしぶしぶ一行をカレン族のいる国境付近まで運ぶ。
 が、一行が部落を襲撃した陸軍に拉致された為グラハム・マクタヴィッシュをリーダー格とする5名の傭兵部隊が救出に駆り出され、ランボーが再び道案内となる。ランボーを排除した後、部落の惨状に戦く部隊は【多勢に無勢】を決め込んで戻ろうとするが、カレン族の若者を地雷ゲームで弄ぶ兵士たちの頭をランボーの放つ矢が貫く。この行動によりランボーが作戦のリーダーに躍り出、夜陰に乗じて支援団を奪還、翌朝追跡してくる陸軍を迎え打つ。

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とにかく、最初に印象に残るのは、人間の体が粉々になる様子を徹底して描写していることである。敵も味方もバラバラになる時はバラバラになる。ここにおいて脚本も担当しているスタローンの狙いが人間の体が粉砕される戦闘の悲惨をリアルに描き出すことにあると判って来る。序盤における支援団の偽善的発言への風刺を展開していくであろうと予想させながら――事実その要素は最後まで続いてはいくのだが――最終目標は戦闘の現実であり、最終的に反戦的な色彩を生んでいる。

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狙い通りに作られているので成功作と言える一方、頭が吹っ飛んだりするのを幾度も見せられて余り良い気がしないのも事実で、採点は抑えた。80年代の三本に比べるとアクションによりカタルシスを感じさせる狙いは薄いが、それでも排除されたランボーが兵士たちを次々と倒し傭兵たちを唖然とさせる場面や海賊退治の場面ではじりじりさせた効果が大いに出てカタルシスが感じられる。スタローン自身の年齢を考慮した面もあろうが、なかなか活躍しないのが結果として非常に上手く機能した形。

久しぶりに故郷に戻るラスト・シーンは捨てがたい余韻が漂うが、さらに続編があるらしい。この幕切れの味の良さを考えると、続編には「なくもがな」の思いがする。皆様のご意見は如何でしょうか?

柳の下にランボーはいました。

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この記事へのコメント

2009年07月28日 10:42
おはようございます。
ブログ更新状況から察するに、病院のベッドでさぞストレスを溜めておられたことでしょう(笑)
私、この作品は未見なのですが、スタローンもこの手のものってのもあまり好きではないもので…
でもこんなの観ていて、退院後のお体に障りませんか?ってちょっと陣中見舞いで参りました!
逆にこんなの方が単純明快でいいかも…かな?
梅雨前線が停滞していて、梅雨というより局地的豪雨。数年前からの現象ですよね。ただ気温は比較的低いので過ごしやすいのですが、ご自愛くださいね。
オカピー
2009年07月28日 18:16
シュエットさん、こんにちは。

>ストレス
入院中に丁度そんな話が出たので、看護婦相手にストレスVSフラストレーション論を展開してきました。
最終的に、本来は足りないことから発生するフラストレーションもたまればストレスになる、若しくはストレスの一つと結論づけてきましたよ。^^

>退院後のお体
ご明察です。
僕もそんな気がしつつ見始めましたが、激しい暴力性は刺激的すぎる一方で、設定がシンプルで台詞が少なく、上映時間が実質85分くらいという要素が、注意力散漫が甚だしい現在の状況では奏功しました。
とにかく現在は台詞の多い映画はダメですねえ。先日の「幸福になるための27のドレス」なんてのは台詞劇とでも言わんばかりの台詞量でしたから、ちーと疲れました。
映画評は基本的には大雑把路線。

>梅雨前線
都会の局地的大雨には、ヒートアイランド現象が最大要因のようですね。
今回の北九州・山口のそれには当てはまらないでしょうが。

今は病気を理由にパジャマを着たまま動かないようにしております。
病気故に「食わせるものがない」と嘆く者約一名、です。^^
2009年07月30日 00:45
 こんばんは!
めちゃくちゃ更新しているじゃないですか!
お元気そうでなによりです。

これって、結構肉片が飛び散るシーンが多いですし、どちらかというと暗いと呼ばれる類の作品ですね。アンチ・ハリウッド的で良いかなあと思い、最後のシークエンスの暖かさも良く、とうとうランボーも血生臭い世界から抜け出せたのだなあと感慨深かったのです。

しかしまた続編を作ると言われ、もう要らないのに、お金のためにまた出来るのかと思うと暗澹たる気分です。スタローンも、もうおじいちゃんですし、いい加減引退させるべきですよ。

ではまた!
オカピー
2009年07月30日 19:01
用心棒さん、こんばんは。

実は、入院前の書き溜めが結構あったので更新は多いのですが、新規に書いたのはまだまだ少ないのです。

>しかしまた続編を作ると言われ
そうなんですねえ。
折角完結したような印象があったのに、勿体ないです。
IMDbの作品リストにその名前を発見して、結局商業的誘惑には勝てなかったのかい、てな興醒め気分でいっぱいになりました。
結果的に上等な作品が出来たとしても、後味はきっと悪いでしょうね。
2009年07月31日 18:48
 こんばんは!
『ロッキー』はアメリカン・ニュー・シネマの終焉であり、ハッピーエンド路線復活の幕開けでもあったと思うのですが、以降商業路線に定着しました。

『ランボー』も最初はとてもよく出来た、派手なニューシネマ的なムードを持っていましたが、徐々にアメリカ礼賛映画に成り果てました。

『ロッキー・ザ・ファイナル』も、『ランボー4』もスタローンがハリウッドの本流から外れると、再び佳作に仕上げられています。彼の主演作品には自由度が増せば増すほど、画一的なハリウッドの重石が外れて、鑑賞に堪える作品になるのかもしれません。それって、作家主義なのですかねえ…。
オカピー
2009年08月01日 08:31
 用心棒さん、おはようございます。

 1973年頃に「ペーパー・ムーン」や「スティング」といった1920~30年代を舞台にした作品が相次いで登場し、この辺りからハリウッドが復古を漂わし始め、76年に「ロッキー」が出ました。
 小予算らしい、ニューシネマ的なタッチを残しながら、30年代のアメリカ映画を復古させた人情ものでしたね。
 古いアメリカ映画への回帰は必ずしも商業主義万歳には結びつかないものですが、海賊映画の宇宙版「スター・ウォーズ」の登場とその大成功(1977年)がハリウッド製作者の商業主義への傾倒を決定づけていったように思います。

 アメリカ映画はサイレント時代、トーキー初期から単純思考で、欧州型の現実的アプローチや深い哲学的アプローチなどは苦手で、トルストイやドストエフスキーを映像化してもメロドラマになってしまいました。

 ハリウッドにおいてこの伝統は100年余り基本的に変わらないわけですが、近年、日本のTV局主導の“大作”映画同様、余りにも質を伴わないことを嘆く本格映画ファンを増やすことになっていますね。

 スタローンに関しては仰る通りだと思います。
 結局映画製作会社と製作者が作家にもっと任せるようにならないとアメリカ映画(と日本映画)の質は上がっていきませんが、映画は前の作品の配収が新しい作品製作費になっていくという事情がある以上、僕らが思うようにはなっていかないでしょうね。
2009年08月01日 23:02
プロフェッサー、こんばんは。

本作、私も簡単に記事にして(コメントありがとうございました)、再見してから今一度記事にしようとおもっているのですが、まだ再見していない状況です。

やはり強く感じるのは反戦ですよね。
ハードな描写もそのためなわけですが、アクションやハードなものが好きな私でもさすがにちょっとと感じるのはたしかです。が、そこが狙いというか、メッセージなのだと感じます。

ラストは、1作目の冒頭を想い出させる、戦士ではないランボーがとても心につよく響くものをかんじさせ、とても感慨深いよいシーンです。

故に、これで最後にしてほしいですね。
見ちゃいますけどね・・・。

では、また。
オカピー
2009年08月02日 23:24
イエローストーンさん、こんばんは。

狙いと手法(タッチ)が一致し、きちんと作られた作品なんですが、人間というのは想像力があるわけです。

暴力描写に限らず随分前から映画界はリアリズムを有難がっていますが、リアリズムはある意味人間の想像力を馬鹿にしている顕れであるので、僕はリアリズムを必ずしも買わないんです。
一般に、現実感、夢、生活感情がバランス良く扱われて初めて、映画は映画たりうる。今の映画は、日本やアメリカのメジャー映画のように夢だけに走って現実感も生活感情もなかったり、逆にセミドキュメンタリー映画のように現実感だけで夢が全くない上に生活感情が伴っていなかったり、とにかくバランスが悪い映画が多く、げんなりしています。

そういう意味では、「ランボー」の第一作辺りのバランスは良かったかもしれませんね。

>これで最後に
僕も観ますが、同感です。

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