映画評「レッド・サン」

☆☆☆★(7点/10点満点中)
1971年フランス=イタリア=スペイン映画 監督テレンス・ヤング
ネタバレあり

当時日本で絶大なる人気を誇っていたアラン・ドロンとチャールズ・ブロンスンが「さらば友よ」に続いて再共演したことが洋画ファンの間で話題になった。
 あの人が抜けているではないかと思われるだろうが、当時の僕は邦画を全く見なかったからこんな書き方をしてみたのである。その人とは勿論三船敏郎で、今となると本作で一番格好良いのは三船御大かもしれない。

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時は1870年、明治政府から派遣された日本の使節一行がアメリカ西部を列車で横断中に、ブロンスンとドロンが率いる強盗団に襲われ大統領の為に用意した宝剣を奪われた上に同僚も殺されたので、一行の一人・三船はドロンに裏切られて大金を持ち逃げされたブロンスンを事実上の道案内に追跡を始める。ブロンスンは売春宿で拾ったドロンの愛人ウルスラ・アンドレスを人質にし、交渉を楽なものにしようとするが、ドロンがそうすんなりと渡すはずもない。

という粗筋で、製作はフランスとイタリア、ロケはスペイン、監督は英国のテレンス・ヤングという完全欧州製西部劇。その為に黒澤明の「用心棒」の方が余程本場西部劇の雰囲気があるくらいだが、それはともかく、日本の侍がアメリカ大西部を舞台に大活躍という破天荒なアイデアは同じ発想による岡本喜八「EAST MEETS WEST」(1995年)を見た後でも依然楽しめる。黒澤明と言えば、似たような風景が続く長いシークェンスでワイプによる場面切り替えが何カ所かあり、或いはワイプ好きだった御大へのオマージュだったのかもしれない。

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最初に観た頃は荒唐無稽と思ったものだが、三度目になる今回その考えはかなり変わった。歴史のアウトラインはきちんと踏まえていて、明治維新の直後で廃刀が検討されている頃の日本、大陸横断鉄道完成(1869年)がアメリカ・インディアンに影を落としていた米国西部の状況が暗示的ながら存外正確に伝わってくるのだ。

しかも、アメリカ製と違って日本への尊敬がブロンスンと三船の喧嘩友達的な楽しい展開の中に如実に表れてくるのが大変嬉しい。これがハリウッド製なら日本人がカルチャーショックに腰を抜かすという展開にするだろうが、本作ではアメリカ人が物に動じず“スカート”を穿いているのに動きの素早い侍にショックを覚え、やがて仁義に死ぬのを潔しとする武士道を理解していくわけである。

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といった次第で、女性陣との色っぽい場面をちらほらと交える尺稼ぎは余り感心できないが、幕切れでは武士道とアメリカ的合理主義との折衷が上手く行われ、お話として前段との整合性がしっかり取れている。

映画製作のグローバル化で色々な国の俳優が共演するのは当たり前になっている現在と違って、この時代ここまでの大物が三人集まるのは夢みたいな事件だった。ドロンのここまでの悪役は珍しいが、製作国の俳優として日本とアメリカからの来賓に花を持たせたのであろう。

僕の記憶では、当時ブロンスンは“マンダム”、ドロンは“ダーバン”のCMに出演中。三船さんはよく知らない(笑)。

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この記事へのコメント

2009年06月13日 19:51
>三船さんはよく知らない(笑)。

ご冗談でしょ?(笑)
え?
ホントにご存じないのでしょうか?
「男は黙ってサッポロビール!」(^^)

三船さん、
とってもカッコ良かったと思います。
楽しい作品でしたね♪
オカピー
2009年06月14日 02:28
vivajijiさん、こんばんは。

>「男は黙ってサッポロビール!」(^^)
知っていましたが、完全に忘れておりました。
それほど洋画にしか興味のない小僧だったんですよ。^^;
そう言えば、高校の入学式で校長がサッポロビール面接試験における有名なエピソードを引用したのを思い出しました。

>三船さん
本作を見ても十分伺われますが、フランス人は黒澤明と三船敏郎は大変尊敬しているようですね。
三船さん逝去のニュースはトップニュースだったそうです。
2009年06月14日 15:49
オカピーさん、こんにちは。
昨日は用心棒さんお薦めの「天使と悪魔」を観てきて、ハリウッド・サスペンス・アクションの醍醐味を堪能してきました。
さて、この「レッド・サン」ですが、おっしゃっているようにハリウッド作品ではありませんけれど、マカロニ・ウェスタンのようにイタリア西部劇というような意味でのフランス西部劇とは言えず、ハリウッド西部劇をヨーロッパ資本で作ったように感じます。それとフランス語版もあるようですが、やっぱり西部劇は英語版でなければ・・・。
ドロンの西部劇は、ハリウッド時代のコメディ「テキサス」を除けば、この作品が唯一ですが、西部の悪漢をなかなかうまく演じていたのではないでしょうか?
>ドロンは“ダーバン”のCM・・・
これは三船プロダクションの制作だったようですね。三船もブロンソンも他界してしまって、残るはドロンだけです。淋しい限りですね。
トム(Tom5k)
2009年06月14日 15:55
ところで、発売中の『文藝春秋SPECIAL 映画が人生を教えてくれた』
http://www.bunshun.co.jp/mag/special/で、海外の男優ベスト10の1位がアラン・ドロン、日本の男優ベスト10の1位が三船でしたよ。記事も興味深いものが多く、つい購入してしまいました(双葉先生の本の紹介なども記事にありました)。
>フランス人は黒澤明と三船敏郎は大変尊敬している・・・
ドロンがスマスマに出演したときに、三船は日本の兄だと言っていました。葬儀ではドロンからの弔電もあったそうです。
では、また。

※上記ニックネーム欄、()内が空欄になってしまいました。
オカピー
2009年06月15日 01:46
トムさん、こんばんは。

>やっぱり西部劇は英語版
そうですね。
allcinemaにフランス語版を見ての「アメリカが舞台で何故にフランス語?」というのがありましたが、一応英語版の存在を知った上で作品を語ってほしい気も致しました。
通常の欧州映画とは逆で、口と台詞が合っていましたので英語版が基本で、フランス語版はサブみたいですね。

>西部の悪漢
製作者が来賓に花を持たせた感じもありますが、二枚目だけに却って嫌らしい感じがしましたね。こういう配役も面白い。

>三船もブロンソンも他界
ふーむ、年齢には勝てません。
物事に動じないようにというわけでもないですが、無の境地になろうと思い「荘子」を読んでいますが、「荘子」自体にも変節があってなかなかね。^^;

>『文藝春秋SPECIAL 映画が人生を教えてくれた』
覗いてきました。なかなか面白そうですね。
書店に置いてあればすぐに買っても良さそう。

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