映画評「宇宙水爆戦」

☆☆★(5点/10点満点中)
1954年アメリカ映画 監督ジョゼフ・M・ニューマン
ネタバレあり

B級映画は使う人によって意味が違うと言われているが、本質的には併映を前提として作られた低予算映画と同義語。その意味でB級映画が事実上全滅した現在、ビデオ映画がそれに相応する存在と言うべきだろう。
 SF映画がA級映画としての市民権を得るのは1968年製作の「2001年宇宙の旅」からと僕は考えているが、B級時代のSF映画のほうが愛すべき作品が多い。映画としては貧しくても観ていると楽しくなる夢の気分に満ちているからで、本作は出来栄えは「地球の静止する日」(1951年)「宇宙戦争」(1953年)などに及ばないものの、そうした作品の代表格。

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電子工学者レックス・リーズンが飛行機に乗っていると操縦不能になり墜落を覚悟するが、緑色の光線に守られて無事に着陸する。
 不思議なことは続いて実験の為に取り寄せた部品が現在の地球にはない先進的なもので、やがて用意された自動操縦の飛行機に乗って科学者コロニーに到着、そこで出会った女性科学者フェイス・ドマーグと共に、太陽系外の惑星メタルーナに連れて行かれる。
 この惑星は別の惑星から攻撃を受けた為に滅亡寸前、地球への移動を終わるまで惑星を維持する為に地球人の原子力を借りようという寸法なのである。

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現在の科学的常識から言うと、直線的な飛行方法で太陽系外の惑星に到着するのは途轍もなく時間がかかって非現実的と考えられるが、こうした科学的誤謬は取るに足らない。
 本作で一番首を傾げさせるのは、地球人より数千年は進んでいると思われる文明を持つメタルーナ人が地球人の科学力に頼るという矛盾である。その疑問に答えるように「戦争で科学者が減って研究室も破壊されたから」という説明があるが、数千年も進んでいる文明なら優秀な科学者でなくても地球最高の専門家よりましなはずですぞ。そんなぎりぎりになるまで回避行動を取らなかったのも変である。

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それはともかく、映画的に面白いのは違う気圧に対応する為に細胞に変化を加える装置と脳がむき出しになった昆虫型ミュータントで、終盤彼らがこの装置に入っている時にミュータントが現れるサスペンスは断然ご機嫌。しかし、このミュータントが気圧変化に対応できずに簡単に倒れてしまったり、宇宙人同士の戦いがほんの申し訳程度なのはつまらない。言葉だけ出てくる“頭脳変換機”も活用したいところだった。

そんなわけで優秀作というわけには行かないが、お話の展開ぶりや撮影よりも美術とセットが楽しさに大いに貢献している。

メタルーナは恐らく「金属の月」という意味でしょう。

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この記事へのコメント

2009年06月18日 10:35
 おはようございます。
 SFファンの間では映画そのものよりもソフビ人形などでメタルナ・ミュータントを知った人が多いのでしょう。ぼくもその1人でした。

 ビデオで欲しかったのですが、かなり高額でしたので手は出ませんでした。そこへ降って湧いたように、当然BSで放送してくれましたので、深夜からでしたが、しっかりと見ていました。

 見せ場は少なく、デザインのディティールで見せる類の映画でしたが、長年観たかった作品でしたので、感慨深かったですよ。

 B級作品は新人監督を鍛えたり、盛りを過ぎたかつての巨匠の安息の場でしたが、シネコンと資本による環境破壊が進み、映画は劇場で一本しか観れない寒い時代になりました。

 アーカイブとして残っているのだから、過去作を併映でやれば、お客さんも入ると思うのですけど、やらないでしょうね。

 ではまた!
2009年06月18日 10:36
>当然 ×
突然です。すみません。
オカピー
2009年06月19日 02:30
用心棒さん、こんばんは。

用心棒さんなら既にご覧になっているかと思っていましたよ。

僕がこの作品を知ったのは中学時代に「スクリーン」で双葉師匠が連載していたジャンル別の紹介記事の中です。SFでも宇宙編とか地上編とかに分れて多種多様の作品が紹介され、誠に興味をそそられましたね。

>デザインのディティール
「宇宙戦争」同様カラーというのもこういう美術の面白いSF映画では嬉しいですね。

>シネコンと資本による環境破壊
総入れ替え制というのも何だかねえ。気に入ったからもう一度というのができなくなっちゃった。
田舎のロードショーはちょっと名画座感覚でしてね、話題作でも大概二本立てでしたが、そちらではどうでした?

>アーカイブ
アメリカ映画は昔から著作権が煩くてすぐに上映権が切れてしまうので、なかなか難しいんでしょうね。
2009年06月19日 20:05
 こんばんは!
 ぼくは子どもの頃は神奈川や九州にいました。映画館はどこも二本立てが当たり前で、一日中いても大丈夫でしたよ。高校時代まではどこも二本スタイルでしたが、大学生になった頃からは二本立てという記憶はないですねえ。

 しかし併映作品の組み合わせはめちゃくちゃで、『マッド・マックス3』には『ポリスアカデミー4』だったり、タイタニック号の悲劇を扱った『失われた航海』には『がんばれ!タブチくん』がくっついていました(笑)

 色々雑多な作品を楽しめるのも併映の魅力でしたね。ワードを変換していて気づいたのですが、「へいえい」って入れても「併映」は出てこないんですね。言葉の上でも死語のようです。ではまた!
オカピー
2009年06月20日 01:35
用心棒さん、こんばんは。

>映画館はどこも二本立てが当たり前
そうですよね。
でもロードショーだった。
一本が新作で、もう一本が多少古いケースもありましたよね?

僕が大学生だった1970年代後半は東京在住でしたので、ロードショーは通常一本でした。貧乏学生は3ヶ月くらい経って名画座で観るようにしていました。

>マッドマックス3
冬休みで帰郷した際に観ましたが、併映は「恋のジーンズ大作戦」というライアン・オニール主演の駄作コメディでした。当時はまだネーム・バリューがあったのね、彼氏。
まだ「ポリスアカデミー4」のほうが良いかもです。^^;

>併映
そう、出て来ないんです。
面倒くさい。(笑)

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    Excerpt:  おそらくSF映画ファンでなくとも、ほとんどのかたが一度は見たこと、もしくは塩ビ人形で遊んだことがあるかもしれない超有名なキャラクター、それがこの映画『宇宙水爆戦』に登場する、メタルナ・ミュータントで.. Weblog: 良い映画を褒める会。 racked: 2009-06-18 10:38
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