映画評「百万長者の初恋」

☆☆(4点/10点満点中)
2006年韓国映画 監督キム・テギュン
ネタバレあり

作品の評価は(ある程度経験を踏むまでは特に)極めて相対的なものであり、本作のような種類の死病映画も初めて観れば感動できるだろうが、何度も見せられると戴けない印象を覚える作品が多い。僕に言わせれば、<死>に対する観客の心情に甘え過ぎて大した工夫をしていないからである。

ホテル経営者が死亡して我儘な孫のヒョンビンが莫大な財産を相続することになるが、田舎の高校を“自主退学”しないという条件を付けられる。
 お話として疑問なのは何故“退学はダメ”でなく“自主退学はダメ”という緩い条件であるかということで、主人公もそれを利用して学校で悪行放埓三昧をするわけだが、極めて不自然な印象を残す。

さて、若者が天真爛漫な学級委員長にして様々な場所に出没する美少女イ・ヨニに好意を覚えた頃彼女が肥大性心筋症という死病を患っていることを知り、余命少ない彼女が最後の日々を幸せに過ごせるように懸命に看病、同時に遺産相続権を放棄して彼女の属している孤児院を救う。

序盤はコミカル、後半はシリアスという韓国死病ロマンスの定石的作りにうんざりさせられるが、その点についてはともかく、死病映画は実は作るのが難しい。終幕間際に死病が発覚するのは唐突過ぎて納得しにくいし、比較的早めに出すとお話の幅を狭めてしまう。かと言って、余分な要素を入れると純度が下がる。
 本作は正に後者の典型的状態で、主人公が少年時代に両親を交通事故で失い、祖父の土地にあった孤児院に訪れた経験があるという設定が工夫と言えば工夫だが、二人が馴染みであってもなくてもロマンスとしての展開に影響はない。同様にヒロインが母親を発見するエピソードも構成上大きな意味を見い出せず、現状程度の半端な描き方なら寧ろそうした尾ひれをつけずに純粋なロマンスに徹底したほうが却って悲哀感も増したであろう。

主人公が薬のカプセルに収めた告白文が次々と読まれる辺りで情緒が一気に高まるのも束の間、その後水増しされたお話がだらだら続いて折角高まった感情をしおれさせてしまう。実に勿体ない。

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!

ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。

→ログインへ

なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた
面白い
ナイス
ガッツ(がんばれ!)
かわいい

気持玉数 : 0

この記事へのコメント

この記事へのトラックバック