映画評「コントロール」

☆☆☆★(7点/10点満点中)
2007年イギリス=アメリカ映画 監督アントン・コービン
ネタバレあり

80年代半ばまでの洋楽はかなり聞いたが、その辺りから楽曲と演奏者が結びつかないことが多くなった。パンク・ロックも一通りは知っているが余り詳しくなく、ニュー・オーダーの前身ジョイ・ディヴィジョンも本作にも出てくる"Love Will Tear Us Apart"を知っている程度。

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1976年近所の少女デボラー(サマンサ・モートン)と19歳で結婚した直後、イアン・カーティス(サム・ライリー)はバーナード・サムナーとピーター・フックの募集に応じてボーカルとして参加、スティーヴン・モリスをドラマーに加えてここにジョイ・ディヴィジョン(映画の中で説明されるように、ナチ将校用の娼館のこと)が成立する。
 コンポーザーとしての能力に秀でたイアンがバンドの中心的存在になるが、癲癇の発作が出たり、ベルギー大使館の事務員アニーク(アレクサンドラ・マリア・ラーラ)と懇ろになって妻との仲がぎくしゃくしたり、ファンの期待にプレッシャーを感じるなどして苦悩、1980年自宅で自殺してしまう。

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未亡人デボラー・カーティスが書いた手記を基にアントン・コービンがセミ・ドキュメンタリー・タッチでドラマ映画化。写真家出身者らしくモノクロ映像によるフォトジェニックな映像が二昔前のお話という気分を大いに惹起し、強い印象を残す。トニー・リチャードスンやカレル・ライスといった60年代の英国ニューウェイブ監督の作品を見るようだ。

音楽的にはパンク(厳密にはポストパンク)らしいシンプルで力強い演奏と内省的な感じのする歌詞に面白い部分があり、性格と癲癇との関連性を感じさせたりする。

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お話の中では彼が日中職業安定所の事務員として働いている一連の場面が興味深く、その中でも彼が紹介した女性が癲癇を起こす箇所が印象深い。後日彼女が死んだことを聞かされた時に何かしら先行きに不安を覚えたとしても不思議ではなく、自殺と結びつく要素となりうるからだ。遺書が存在しない以上、原作を綴った細君とて正確な自殺理由は解らないだろうから、映画作者としては複合的と考えられる自殺理由の一つとして匂わそうとしたのではないだろうか。

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ロック歌手の伝記作品から想像される麻薬・酒色といった自滅的な要素がないのが却って新鮮で、作り上げられたアイドルではないだけに、マネージャーやレコード会社社長(音楽番組司会者)などを交えて、昼間は地道に働きながらこつこつと階段を駆け上がっていく模様が断片的に描かれている部分が興味深い。反面、主人公については成功した音楽家というよりは一若者の生活記録といった普遍的な扱いになっている。

実物の映像を見たことがないので比較できないが、主演のサム・ライリーは年齢より若く見え好演。サマンサ・モートンは役に比較してとうが立っている感じが強い。

麻薬ではなくても結局ドラッグ(薬)で死んでしまったのかもね。

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この記事へのコメント

2009年05月19日 01:17
こんばんは。この映画はUKロック博士の私の専門分野でございます 笑
私もWOWOWで観賞しまして、オカピーさんと採点もまたもや同じで7点献上です。
近々にレビューをアップしたら、またTBさせて下さい!

で、主演のサム・ライリーですが、イアン・カーティスのライヴでのパフォーマンスや雰囲気をかなり再現できていると思います。

この映画と合わせてマイケル・ウィンターボトムの「24アワー・パーティ・ピープル」も機会があれば、ぜひチェックしてみて下さい。
大した映画ではありませんが、同じJOY DIVISIONのこのエピソードを、音楽レーベル「ファクトリー」のオーナー、トニー・ウィルソンの視点で描いているため、興味深い面があります。

余談ですが、NEW ORDERの"Blue Monday"という曲は、イアンの自殺を残りのメンバーが知ったのが月曜だったことにちなみ、生まれた曲だったりします。
2000年代のバンドでさえも「なんちゃってJOY DIVISION」がUKには溢れていますので、いかにイアン・カーティスがいち音楽家として、才能を持った人であったかが伺われます。
オカピー
2009年05月19日 02:26
RAYさん、コメント有難うございます。

>TB
完成次第お願いします。

>「24アワー・パーティ・ピープル」
実は観ておりますです。^^
音楽の実像に迫るという点でなかなか面白い作品でした。
採点は☆☆☆でした。
しかし、この手は独立して観るより併せて観た方が双方の評価が上がる可能性が高いですね。

>イアン・カーティス
なるほど。
本当のメジャーになる前に死んでしまいましたが、パンクロック以降のアーティスト名に疎い僕が彼の名前は知っていましたよ。それだけの実力者だったんですね。
シュエット
2009年05月19日 10:17
>音楽家というよりは一若者の生活記録といった普遍的な扱いになっている。
ここんとこ立て続けにミュージシャンの映画がつくられている中で、本作は一人の若者を描いているっていう視線がとても良かった。
上でもかかれているけれど血判のシーンなんて「24アワー・パーティ・ピープル」と重なって、面白かった。当時の雰囲気をうまく再現してるなって思ったし、サム・ライリー君の好演が良かった。
>サマンサ・モートンは役に比較してとうが立っている感じが強い。
イアンはミュージシャンとして女の子たちから騒がれ、女房は糠みそくさくなっていく。糟糠の妻が段々と重荷になってくる。とうのたったサマンサ・モートンってすごい説得力あったわ。


オカピー
2009年05月20日 02:17
シュエットさん、こんばんは。

同じようなロックスターの奇跡でも「ラストデイズ」は、映画的には優れているのだろうけど、ヴァン・サント氏が気取りすぎて全くピンと来なかった。
シュエットさんも同様でしたっけ?

>サマンサ・モートン
これが最後の1年間くらいを描いたものならサマンサ嬢で全く問題なしですが、実際には19歳で結婚する前から描いているので、結婚前と1980年頃の落差が余り感じられない、という意味でございます。
最初は随分似ている女優がいたものだなあと思っていたのですが。
若作りはそれなりに上手く行ってはいましたし、モノクロはその辺りを上手く誤魔化してくれるかもしれません。
しかし、例の「ミスター・ロンリー」を見た後だけだから、なおさらジローでした。

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