映画評「ウォーター・ホース」

☆☆★(5点/10点満点中)
2007年アメリカ映画 監督ジェイ・ラッセル
ネタバレあり

ネッシーは恐らく世界で一番有名な未確認生物である。1990年代に一番有名な写真を撮ったご本人が捏造であると認めるというニュースを聞いてうっかり者の僕はすっかりネッシーそのものがインチキと早合点したのだが、よく考えればあの写真が唯一の事例ではない。特に現地では未だに信じる人が多いようで、昨年初めに観た「名犬ラッシー」にも少し出てきたし、「実話」と称する本作でいよいよ真打登場の感あり。勿論実話と称するフィクションでござるよ。

戦時中のスコットランドはネス湖湖畔、ある貴族の家政婦頭を務めるエミリー・ワトスンの息子アレックス・エテル君が出征中の父親の帰還を待つある日、青い巨大卵を発見して持ち帰り父の作業部屋に隠す。夜、こっそり出かけてみると卵が割れ、甲羅のない亀のような生物が眺め返しているのを発見、クルーソーと名付けて可愛がるが、一日ごとに倍以上に急成長する特徴があって始末に負えなくなり、屋敷内に軍隊が駐留するようになって三日目の朝に湖に返す。
 その後は湖で密かに逢って楽しむが、軍がデモンストレーションで大砲を湖に打ち込んだことからクルーソーが激怒、“家族”であるはずのエテル君に対しても攻撃的な態度を取るが、謎の生物を捕えようとする軍人たちから逃れる為に少年はクルーソーと一致団結する。

CGは天災には実に向いている技術と思う一方で、大分改善されてきたものの生物を描くにはまだまだ完全ではない。しかし、実際に存在しない恐竜などを描く分には現物との質感の差を気にする必要もないので大いに使えば宜しいわけで、本作では中盤の見どころである、天敵たる軍人の犬とクルーソーが追いかけっこする場面での合成など誠に優秀、CG自体の進歩や合成技術の改善に目を見張る。他方、湖における場面に違和感が残る箇所がある。

【未知なる生物と少年の交流】でどうしても思い出してしまう「E・T」と比べると内容的には相当分が悪く、少年がネッシーを隠そうと悪戦苦闘する定石的場面に時間を費やしすぎてもたれてしまう。しかし、水を大いに怖がっていた少年が水を怖がらずに恐竜の背に乗る箇所を何気なく見せてしまう辺りは英国的に抑制されたタッチが好ましい。

少年が実は既に戦死している父親を思慕する一方で、母親は部隊長の大尉デーヴィッド・モリッシーに好感を抱き、大尉が下働きの青年ベン・チャップリンに嫉妬する模様なども加えて随分大人っぽい要素も盛り込んでそれなりにきちんと処理しているが、こちらに尺を取られて少年とネッシーの交流が希薄になったのは痛し痒し。もう少し冒険要素たっぷりにのびのびと作ってくれたほうが却って有難い。

ウォーター・ホースと言っても水を出すホースのことじゃない。

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