映画評「マイ・ブルーベリー・ナイツ」

☆☆★(5点/10点満点中)
2007年中国=香港=フランス映画 監督ウォン・カーウァイ
ネタバレあり

ウォン・カーウァイは完全な左脳人間たる僕には天敵でござる。唯一素晴らしいムードに感心した「花様年華」を別にすると、特に辟易した「楽園の瑕」以外は総じて似たような評価に留まっている。「恋する惑星」も「ブエノスアイレス」も観念的でピンと来ず、その意味ではカーウァイ・ファンからも疑問が上がった「2046」もその他の作品と大差がない。

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ニューヨーク、失恋したノラ・ジョーンズがその名もロシア語で【鍵(クリューチ)】という名のカフェの主人ジュード・ローに恋人の家の鍵を預けて店に入り浸るようになり、ある日突然旅立ってしまう。

旅立ちから57日目、彼女は中部のメンフィスでいつか車を持とうと昼はダイナー、夜はバーで働いているが、そこで知り合った警官デーヴィッド・ストラザーンが別れた妻レイチェル・ワイズへの未練が断ち切れず酔いどれになった挙句に交通事故死してしまう。妻は彼の巡査としての実績を評価し、つけを払って街を去るのだが、ヒロインはここで愛の謎に包まれてしまう。
 彼へのつけ伝票が店に飾り付けられることになる、というエピソードがなかなか良い。

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251日目、カジノで働くノラが知り合った女性ギャンブラー、ナタリー・ポートマンは他人を信用せず、おかげで父親の最期にも立ち会えない。ヒロインは人々と交流することは自分を知ることになると気付き、ニューヨークへ戻って来る。

お話の図式はノラとローの遠回りの恋といったところなのだが、ドラマツルギーも技術も関係ないといった作劇スタイルは相変わらずで、論理的に考える余地が少ない為に左脳人間には退屈してしまうところが多い。ヒロインの考えていることも実際にはよく解らない。

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演出的には、フェード・アウトを多用し、NYの場面では外からカフェ内部を、或いはカフェ内部から外を映すショットを繰り返してムード醸成に努めているのが印象に残る。
 撮影監督がいつものクリストファー・ドイルからダリウス・コンジに変わったものの、大して意味のないスローモーションの使用など良くも悪くも感性に立脚している点は同じ。

ただ、アメリカでの撮影・仕事(でもアメリカ資本は絡んでいない)のせいか、香港でのカーウァイ作品より若干親しみやすさを覚えるのは錯覚だろうか。ノラ・ジョーンズ自身やオーティス・レディングらの歌のおかげかもしれない。

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この記事へのコメント

2009年04月09日 18:54
TBありがとう。
僕は結構、好きだったんですけどね。
この作品は、おおむね、熱烈カーウァイファンからは、堕落しよってといわれ、アンチカーウァイからはやっぱり自己満足だといわれ、結局、ジュード・ロウファンだけが、うっとりという構図だったかもしれないね(笑)
オカピー
2009年04月10日 04:10
kimion20002000さん、こんばんは。

基本的にカーウァイは苦手。
これが今までより良いとも悪いとも思えない、というのが正直な感想ですかね。

彼の映像処理はムード醸成には役立っていると思うので独善とは言いたくないですが、観念的・感覚的で眠気を誘われることが多い左脳人間の僕であります。
シュエット
2009年04月10日 09:42
>論理的に考える余地が少ない為に左脳人間には退屈してしまうところが多い。
私はどうも直感型の右脳人間のようですが、これはちょっと退屈した、というより、なんだかファッション雑誌に掲載されているようなトレンディ作品みたいで、飽きてきそう。女優陣の演技もなんだか雰囲気出すためか、でもわざとらしくって、観ていて恥ずかしくなってしまって、私としてはちょっとがっかりした作品でした。彼の作品に流れる独特の湿り気と粘り気はやはり多湿なアジアの土壌でアジアの役者の味によってこそ生かされるものかもって思いました。
アメリカのドライな風土とちょっと違和感を感じた。
この作品で似たタッチとテイストで引き合いに出されるヴェンダースが撮ると、また独特のウェットが出てくるんですよね。

シュエット
2009年04月10日 09:43
追記
ノラ・ジョーンズ
彼女が食べるブルーべり・パイは美味しそうに見えなかったけれど、彼女の初々しさが良かったわ。
オカピー
2009年04月11日 02:45
シュエットさん、こんばんは。

>ファッション雑誌
僕はそばにあっても手に取ったことがないので良く解りませんが、
読まれている方の中には同じような評価される人も多く、
その表現を使う場合は、低評価ということに決まっているようです。

カーウァイは元来苦手で、どうせなら西洋人を見ている方が好きだから、
香港時代の大半の作品よりピンと来たかもしれません。
極めて消極的な褒め言葉ですが。(笑)
「恋する惑星」「ブエノスアイレス」も全く【猫に小判】なのでした。
すみません。^^;

>ノラ・ジョーンズ
なかなか可愛らしいお嬢さんです。
結構好みかもしれません。

2009年04月11日 13:54
こんにちは。かなりのウォン・カーウァイ好きの私ですが、この作品はオカピーさんと同様、5点止まりでした。
悪い作品ではないのですが、なんとなく、自分のレビューでも書きましたが、マーケティング的なターゲットが分かりやす過ぎて、かえってピンと来ないというか・・・。

まったく話が逸れて恐縮ですが、先日、夜中にBSかどこかで「天井桟敷の人々」を放映していて、思わず再観賞してしまいました。
人間の業がうごめき過ぎて、ストーリーとして好きではない・・・と思っていた作品だったのに、やっぱり文句無しに面白くて、ついついそのまま観てしまいました。映画って、自分の好み云々を越えて、「とにかくすごい」と思わせる作品がたまにありますね。
「共感させる作品」より「驚嘆させる作品」といった感じでしょうか。
オカピー
2009年04月12日 02:00
RAYさん、こんばんは。

>マーケティング的なターゲットが分かりやす過ぎて
他の方が仰るファッション雑誌的といったところでしょうか。
お話は、彼の作品としては比較的直球になるのかな。

>「天井桟敷の人々」
正に「驚嘆させる作品」でしょうね。
それぞれの人間ドラマを渦をまいて怒涛のように迫ってくる、と言うか。
今回は録画して保存版DVDを作るかどうか迷った挙句、
NHKの場合は右上に文字が出続けるのがうるさいと思って、
今回は止めてしまいました。
WOWOWさん、放映権買って放映してチョーダイ!
2009年04月19日 22:25
オカピーさん、こんばんは。
かなり具合を悪くしてまして。オカピーさんのコメントの返事も遅くなりすみませんでした。
トラックバックを送らせていただきましたが、なんて自分のはお気楽な浅いレビューだ(笑)と思いました。
カーウァイ好きです。特に「華様年花」が。
オカピー
2009年04月20日 02:46
かよちーのさん、お久しぶりですねえ。

>具合を悪く
そうですか。リンクしてくれたブログ仲間の半分くらいが完全休止か、長期休止状態になっていて、世の移ろいの激しさに悄然としておりますので、そんなことにならないようにゆっくりで良いですから、ご自愛して、ブログの方は続けて行って下さい。

この間僕も万全というわけには行きませんでしたが、ぼちぼちやっています。
連休中に旅行でも行こうかという誘いがありましたが、体調のことを言っているうちに、お話は消えてしまいました。

>お気楽な浅いレビュー
ふーむ、そんなことはないですよ。
本作に関しては僕も大したことを書いていないと思います。
最近映画そのものに集中できないし、思ったように言葉が紡げない状態。ごまかしごまかし何とかやっています。
2009年04月21日 22:48
オカピーさんはやはり「花様年華」がお好きなんですね。
わたしはあのときのトニー・レオンは佐田啓二にそっくりだな~と思いました。
作風も邦画の香りがぷんぷんしました。
>香港でのカーウァイ作品より若干親しみやすさを覚えるのは錯覚だろうか。
ノラ・ジョーンズの飾り気のない気さくな親しみやすさがそうさせるのではないでしょうかね。
香港版のカーワァイの作品の女性はわたしはあまり魅力的とは思えないな。
ちょっと女性を記号化してるふしがある。
オカピー
2009年04月22日 02:00
しゅべる&こぼるさん、こんばんは。

>「花様年華」
>トニー・レオンは佐田啓二にそっくり
言われてみればそうですね。
ムードの出し方に規則性がある(ように見える)ところが、一時(佐田=50年代?)の邦画的で、そこが僕の気に入った理由でしょう。
とにかく落ち着いて観られた作品です。

>ノラ・ジョーンズの飾り気のない気さくな親しみやすさ
あっさり言われてしまいましたが、きっとそんなところでしょうね。^^

>女性を記号化
苦手意識が先行して余り考えたことはないですが、そういう表現が当たっているかもしれません。
そこが僕を退屈させるのかな。

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