映画評「宗方姉妹」

☆☆☆(6点/10点満点中)
1950年日本映画 監督・小津安二郎
ネタバレあり

時間が空いたので久しぶりに小津安二郎の戦後作品を観ようとマイ・ライブラリーから選んだ本作。評判の良い作品だが、僕は弘法ならぬ小津も筆の誤りと言いたい残念な気持ちで観終えた(再鑑賞ですけどね)。
 因みに、タイトルは「むねかたきょうだい」と読むらしい。

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胃癌で余命の少ない老人・笠智衆に二人の娘がいる。一人は失業して再就職もままならず連日自棄酒をあおる夫・山村聡を食わせる為にバーを経営している姉・田中絹代で、もう一人はつまらない夫の為に苦労する姉を批判的に見つめる現代っ子の妹・高峰秀子である。
 絹代姉さんが戦前恋仲だった紳士・上原謙は依然一家と付き合いがある。その彼がつぶれかかったバーの再建に金を出すと聞いたので、密かに妻の古い日記を読んでいた山村先生は嫉妬と自己嫌悪の入り混じった心境で自ら離婚を切り出すが、妻の反応が芳しくないので激しく打擲する。さすがに古風な絹代姉さんも翻意して上原氏との再婚を決意したのも束の間夫君に突然死されるとまた翻意する。

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何故がっかりしたかと言えば、「鞍馬天狗」のほうが圧倒的に有名な大仏次郎の原作小説に起因する問題だろうが、登場人物の性格設計のまずさである。
 特に姉娘は古風と受け取られるように設計されているが、覚悟して他の人間と結婚したのであれば昔の恋愛の書かれた日記など処分すべきで、かかる乙女的な趣味と妹の「夫婦ってつまらない」論に対し「夫婦は辛い時を我慢すれば良い時が訪れるもの」などとのたまう態度は矛盾も甚だしい。しかも、夫君に叩かれるとあっさりそんな古い夫婦観を捨てて離婚する気になり、夫が死ぬと今度は上原氏に「私はうしろぐらいので再婚できない」などと変なことを仰る。こんな煮え切らない態度だから再就職がままならぬ夫君がイライラし、自棄酒に走り、結果死に至るのである。彼女の言動は首尾一貫せず、落着の為だけに山村氏が作劇上<殺される>印象すら与えかねない。

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それと比べれば妹の性格に大きな問題はないのだが、その代わり演出に難ありで、可愛いでこちゃんに変てこな顔をさせ延々と活弁士のような口調で話させるのである。一度くらいなら楽しいが、何度も出て来るのはくどすぎる。

お話の結論は、「姉さんは古くならないものが真に新しいと言っている」という妹娘に対する父親の「古い新しいに関係なく、自分の道は自分で決めたら良い」という主旨の、終戦後の日本人のあっけない変節を念頭に置いたような発言に集約されているにちがいないが、もしそうなら随分まわりくどく作ったものだ。

小津のショットの繋ぎは鮮やかだが、お話の弱さはさすがにどうにもならない。捨てショットの廊下にいつも猫がいるのはご愛嬌。

上原氏は「夜の河」でも妻を失った後再婚できない役でしたぜ。お気の毒に。

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