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zoom RSS 映画評「チャイナタウン」

<<   作成日時 : 2009/03/11 15:17   >>

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☆☆☆☆★(9点/10点満点中)
1974年アメリカ映画 監督ロマン・ポランスキー
ネタバレあり

35年前突然降って湧いたようなハードボイルド映画の傑作。翌年「さらば愛しき女よ」というフィリップ・マーロウものの秀作が発表されるが、このロマン・ポランスキー監督作品はロバート・タウンのオリジナル脚本というところにちょっとした驚きがあったのだ。

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タウンとポランスキーがマーロウものを相当研究していることが伺われるが、映画版の最高傑作「マルタの鷹」を演出したジョン・ヒューストンを悪役に起用することで同監督にオマージュが捧げられていると共に、ポランスキーが“オーヴァーアクトになりがちな役者”ヒューストンから自然な重厚さを引き出したのが注目される。彼演ずる実力者が毎回探偵の名前を間違えるのは小事に拘らぬ大物なのか、それとも探偵をいらいらさせる意図を持っているのか考えるのも一興。「悪役が良ければサスペンス映画良し」というヒッチコックの言葉を地で行くように、悪役の迫力もあって本作はアメリカにおいて頗る高い評価を受けている(現在IMDb56位)。

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1930年代のロサンゼルス、チャイナタウンの警察上がりの私立探偵ギテス(ジャック・ニコルスン)がモーレイ夫人と名乗る女性(ダイアン・ラッド)から水道施設局長を務める夫の浮気調査を依頼され、きっちりと仕事をするが、依頼主に渡した写真が新聞に載り、本物のモーレイ夫人(フェイ・ダナウェイ)から強く抗議される。
 だまされたことに気付いた彼は名誉回復の為に調査に乗り出し、この一件にモーレイと地元の実力者ノア・クロス(ジョン・ヒューストン)のダム建設を巡る対立が大きく絡んでいることに気付いて調査を進めている最中に貯水池から当のモーレイの水死体が上がり、再び現場に踏み込んだ彼自身も奔流に襲われたり、事件に絡んでいるらしいヤクザに鼻を切られたりする。

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その鼻を切る小柄なヤクザをポランスキー自身が楽しげに演じて印象深い(画像上)。

夫人との親密度を増していく探偵の食わせ者クロスとの接触や偽モーレイ夫人の殺人などを経て、夫人とその父親であるクロスとの歪な関係が浮かび上がってくるまでのお話で、ハードボイルド映画らしい一筋縄ではいかぬ人間関係が大きな魅力と陰影を生み出しているわけだが、そうしたドラマ部分の厚みもさることながら、大衆映画ファンたる僕としては昨今の映画ではなかなか観られない段取りをきちんと踏んだ正攻法のミステリー展開に感服せずにはいられない。ギテスが夫人とお楽しみの最中に出かけることを知って夫人の車のテールライト・カバーを割って追尾するといった辺り実に丹念な描写である。但し、本格ミステリーのような痛快な大団円はありませぬので、勘違いなさりませぬように。

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クラシックな自動車や古い街並み、ファッション、当時の流行音楽などを駆使して手抜きなく再現された30年代ムードも大きな見どころと言うべし。

本作の後の「カッコーの巣の上で」と「シャイニング」で苦手な俳優になってしまうニコルスンはハンフリー・ボガートを十分彷彿とするハードボイルド演技で好調。フェイ・ダナウェイのニュアンスも大変素晴らしく、幕切れのやりきれない余韻に繋がっている。

時系列操作もナレーションもない映画は気持ち良いね。

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タイトル (本文) ブログ名/日時
独断的映画感想文:チャイナタウン
日記:2004年11月某日 映画「チャイナタウン」を見る. 1974年.監督:ロマン・ポランスキー. ジャック・ニコルソン,フェイ・ダナウェイ,ジョン・ヒューストン. 1930年代のL.A.チャイナタ ...続きを見る
なんか飲みたい
2009/03/11 21:17
「チャイナタウン」
CHINATOWN 1974年/アメリカ/131分 監督: ロマン・ポランスキー 製作: ロバート・エヴァンス/アンドリュー・ブラウンズバーグ/C・O・エリクソン 脚本: ロバート・タウン 撮影: ジョン・A・アロンゾ 音楽: ジェリー・ゴールドスミス 出演: ジャック・ニコルソン/フェイ・ダナウェイ/ジョン・ヒューストン/バート・ヤング/ペリー・ロペス/ジョン・ヒラーマン/ダレル・ツワリング/ダイアン・ラッド/ブルース・グローヴァー/ロイ・ジェンソン/リチャード・バカリ... ...続きを見る
寄り道カフェ
2009/03/12 09:04
チャイナタウン
評価:★★★☆☆重厚なるフィルム・ノワールの世界。チャイナタウン 製作25周年記念版 [DVD] ...続きを見る
ストロボフィッシュ
2009/06/06 09:46

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コメント(6件)

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2009/03/11 21:49
こんばんは。この作品はポランスキー監督作でも「フランティック」「ローズマリーの赤ちゃん」と並んで、わたし的にも☆4つ越えの作品です。
同監督は「赤い航路」のようなご本人がお得意とするフェチ的な映画よりも、こういった「段取りをきちんと踏んだ正攻法の」作品を作った時の方が、意外と力を十二分に発揮されている気がします。
特に「チャイナタウン」はレイモンド・チャンドラーの小説を彷彿とさせますね。(村上春樹氏の影響でチャンドラー、好きなんです)

>時系列操作もナレーションもない映画は気持ち良いね。

まさに共感です。
最近気づいたのですが、オカピーさんとは「一番好きな映画」の傾向は違うと思うのですが、その割には「オールド・ムービーで☆4つ以上だ!」と認定する作品や、逆に昨今の作品で「なんだ、これ?」とダメ出ししたくなる映画のセレクトや、その観点が意外と近い気がしているのですが、いかがですか?? 笑
RAY
URL
2009/03/12 00:06
RAYさん、コメント有難うございます。

>「赤い航路」
あれは失敗作でしょう? 少なくとも僕には面白くなかった。

>正攻法の
はったりではなく、実力があるんです。^^

>チャンドラー
ロバート・タウンもポランスキーも相当研究したのでしょう、小説と映画の両方で。本作のゲテスは単独ではないのでマーロウとは些か違いますが。

>ナレーション
に関しては、ハードボイルド映画はモノローグとして使うことが多いので一概に否定しませんが、最近の映画はゲームの設定説明みたいなのが多くて嫌になっているんですよ。

最後の質問に関してはよく解りません(笑)が、映画を見る時に使う定規が極めて近いということではないでしょうか。
その中での判断は人間ですからどうしても違うわけで、一番好きな映画が同じでないことはままありうると思われるのですが。^^
オカピー
2009/03/12 02:50
P様 おはようございます。
TBもって参りました!
この作品に流れる、澱んだような粘っこいような空気がたまりません。こうしてポランスキー作品をみていると、彼の監督デビュー作でもある29歳の作品
「水の中のナイフ」にじとじとと漂っていたあの空気を思い起こします。本作は40歳の作。彼の作品にずっとまとわりついているこうした感覚は、極めてポランスキー的と、つくづく思います。やはりこの感覚は好きだわぁ!
「戦場のピアニスト」のあと、期待して観に行った「オリバー・ツイスト」はブーだったんだけど、その次にカンヌ映画祭60周年を記念してつくられた30人以上の監督によるオムニバス「それぞれのシネマ」では、結構ユーモアのある笑わせてくれる映像を見せてくれました。彼ももう70歳を過ぎたのかぁ。ちょっと感慨です。
シュエット
2009/03/12 09:22
どうでもいいんだけど、書き忘れた!
>フェイ・ダナウェイのニュアンスも大変素晴らしく
ニコルソン、ダナウェイ良かったっす。
やはりダナウェイはこういう神経症的な役で光る女優だわ。
ニコルソンも眼に、「シャイニング」でみせた怪しい・妖しいあの光の片鱗がみえているのが、本作では魅力となっていた。
ニコルソンも今更もなんですが、「ゴッドファーザー」のアル・パチーノ同様、こうして若い時の作品をみると凄い役者だなって思いますね。その前の「イージー・ライダー」「さらば冬のかもめ」とかと違う魅力出してますね。今となってはなんも記憶に残ってない「愛の狩人」っちゅう映画も劇場で見てましたわ。もう一度これ観てみたいような…。レンタルしてるかしら?
シュエット
2009/03/12 09:31
シュエットさん、トラコメ有難うございます。

>澱んだような粘っこいような空気
アメリカ製作でありながら珍しくハードボイルド映画には少なからず澱んだムードがある作品が多いのですが、本作のような粘っこさは余りないです。
やはりポランスキーは【空気】ですよね。

>オリバー・ツイスト
ポランスキー的なものを期待すると、そういう印象を持ってしまうかもしれませんが、僕はあの街並みを見るだけで結構良い気分でした(古い街並みの残っているチェコで撮ったんでしょうね)。
結構ハードルが低いんですよ、僕は。(笑)

>ダナウェイ
ここ数年が彼女の演技者としての絶頂期だったような気がしますね。
「ネットワーク」という秀作もありました。

>ニコルソン
本文でも書きましたが、「カッコーの巣の上で」以降の彼は時々やりすぎの感があって苦手になってしまいましたが、本作や「愛と追憶の日々」なんかはとても良い。凄い役者ですけどね。

>「愛の狩人」
当時中学生だったので大して解りませんでした。^^;
ビデオ・レンタルはあるみたいですが・・・
オカピー
2009/03/13 02:59

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