映画評「夜の流れ」

☆☆☆(6点/10点満点中)
1960年日本映画 監督・成瀬巳喜男/川島雄三
ネタバレあり

暫く前に録画したままなかなか観られなかった、成瀬巳喜男と川島雄三が共同監督した花柳ドラマ。

20代で観たらただのメロドラマくらいにしか思わなかっただろうが、残る人生が三分の一くらいの年齢になったせいか、結構面白く観てしまう。或いはTV局絡みのつまらない映画ばかり見せられているせいで相対的に面白く見えているのかもしれない。前置きはともかく、現在の水準作品と比べると文法的にきちんと作られているのは確かである。

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東京、料亭の女将・山田五十鈴の娘・司葉子はシベリア帰りの板前・三橋達也に好意を寄せているが、実は母親と彼は密かに恋愛関係にあり、娘は彼が足の手術で入院した病院で二人の抱擁を見てしまう。手術後退職を決意した板前と女将の揉み合いの為にその関係が公然となると、オーナーの志村喬は躊躇なく彼女の首を切って新しい女将・越路吹雪を雇う。これを契機に娘は芸者になることを決意、母親は神戸に三橋を追う。

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というのが本流の物語で、これに母娘の料亭をお得意とする置屋の芸妓・草笛光子が未練がましい前夫・北村和夫に無理心中されてしまう悲劇が傍流として展開、二重奏を奏でて男のエゴイズムを浮き彫りにしていく。

その一方で、変わりつつある女性像を描き出すという狙いもあるようで、母親の板前との関係を知った娘の「母さんも女性として生きれば良い」旨の発言に古いメロドラマとは違う昭和35年当時としては新しい現代的タイプの女性像を垣間見せ、彼女自身は芸者として独立し母親は諦めずに去って行った恋人を追うという幕切れでそれを具体的に裏打ちしているのが興味深い。

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その意味で芸者のイメージを覆す水着姿から始まる開巻は鮮やかで、とても花柳界を舞台にした物語が展開するとは予想だにさせない。“旦那”に捨てられた市原悦子が自殺未遂を繰り返すのが無理心中へのムード的布石になっている辺りにもちょっと唸りたくなる。

褒めている割に採点がまずまず止まりなのは僕の気持ちがこういう映画が溢れていた昭和35年にタイムスリップしているからです。(笑)

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