映画評「プロヴァンスの贈りもの」

☆☆☆★(7点/10点満点中)
2006年アメリカ映画 監督リドリー・スコット
ネタバレあり

世界的ベストセラーになったピーター・メールの「南仏プロヴァンスの12か月」をリドリー・スコットが映像化。何とも奇異な印象すら受けるが、なかなかウェルメイドである。

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ロンドンの有能な金融トレーダー、ラッセル・クロウが、少年時代プロヴァンスの田園地帯で一緒に過ごした伯父アルバート・フィニーの死により譲り受けることになったブドウ園を売る為に現地を訪れるが、作業者夫婦、近所でレストランを切り盛りする美人マリオン・コティヤール、伯父の隠し子を名乗るアメリカ美人アビー・コーニッシュと時間を過ごすうちに伯父との交流を思い出し、考えを改める。

というシンプルなお話で、【予想通りの結末】という感想が目立つが、そこに至るまでの過程が主人公とマリオンとのロマンスを絡めてなかなか上手い。

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僕が一番気に入ったのは、主人公がロンドンに戻り、経営者から「膨大な退職金を受け取って辞めるか、共同経営者になるか」と問われ、壁にかかったゴッホのコピーを見て「いつ本物を見るのですか」と言った直後、マリオンの店にゴッホが飾られているショットに繋がる箇所である。
 ゴッホの絵のこのワン・ショットで、彼が退職金を選んでその金でゴッホ真作を買い、彼女に贈ったと理解できるのである。しかも彼女が彼の戻ってきたことを知る前に観客が知るという辺りの作劇に唸らされる。こうした省略による鮮やかな効果を見ると、昨今のTV局がらみの邦画がいかにも描き過ぎていることがお解りになるであろう。ウェルメイドと言われるのに避けられないのは省略の技である。

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少年時代に得意だった代筆の技を使ってアビーに嘘の手紙を書き、一同が集まる幕切れで彼女が「緑色のインクを買って来たわ・・・減っていたので」と言う箇所も味わい深い。ここでも彼女が彼のインチキを察していることが漂って余情を醸し出し、頗る良い気分にさせられる。

リドリー・スコットだけに印象深い構図のショットが多いのと同時に、プロヴァンスの牧歌的情景も絶大な魅力を放つ。

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「マルセルの夏」のプロヴァンスも素晴らしかった。併せてどうぞ。

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この記事へのコメント

2009年01月24日 16:46
未見ながら、読ませていただきました。
想定内の結末なれど、描き具合で面白くも出来るという作品のようで、頭の片隅に入れもうしたです。
タイトルはあまりにも有名ですね。実は読んでないんですが・・^^
2009年01月24日 21:08
これこそ映画はフタを開けてみないと、
の典型的な嬉しい裏切り快作でしたね。
あれだけ売れた原作も読んで
おりません私ですし公開時の不評の声は
がんがん耳に聞こえておりました。
ところがドッコイ(笑)
やはりリドリー・スコットは巧みに
遊びごころ満載のエピソードを
上手に粋に爽やかに観せてくれました。

水のないプールに落ちたシーンでは
私、久しぶりに大笑いしました。
ちょいとメタボが促進中のクロウも
楽しそうに演じていて好感を
持ちましたし。

連続で“かわいい”を
玉ポッチしておきました。
シュエット
2009年01月24日 23:05
これ、真夏に公開だったんです。
爽やかな清涼剤でした。
ラッセル・クロウもはまってた。
こういう風景みると、いいなぁって思う。
>昨今のTV局がらみの邦画がいかにも描き過ぎていることがお解りになるであろう。ウェルメイドと言われるのに避けられないのは省略の技である。
学生時代に美術部の先生が、いい画家はどこで筆をおくのかを知っていると。近視眼的になると、筆を入れすぎて駄作にしてしまうと。
なるほどですね。
オカピー
2009年01月25日 00:21
十瑠さん、コメント有難うございます。

>想定内の結末なれど、描き具合で面白くも出来る
勿論新味があったり、予想とは違う結末のほうが良いのですが、それだけで評価が決まるなら、映画評なんてのは簡単なわけです、はい。

で、少なくとも僕はそう感じました。
十瑠さんのお口に合うかは解りませんが、口に合わないのではないかと思っていたviva jijiさんが「開けてびっくり」と仰っているくらいですから、7割くらいの確率でヒットすると思います。但し、解り切ったお話と言って良いと思いますから、ホームランはないでしょう(天気予報みたい)。
オカピー
2009年01月25日 00:44
viva jijiさん、こんばんは!

>公開時の不評の声
要は、結末が予想通りといったところに収斂しちゃって、編集や台詞なんてことには殆ど関心がないのですよ、寂しいことに。
台詞に関しては僕も相当いい加減なほうですが、経験的に重要な台詞かどうかは一応動物的勘で判断していましてね(ほんまか?)。
同じ金を出しているのに、どうして楽しもうとせずに「ありふれたお話」で済ませてしまうんだろう?

>水のないプール
携帯電話の扱いも面白かったでしょ?
その前の自転車転倒事件をああいう風に繋げてくるとは・・・これは僕の予想とは違っていました!

>玉ポッチ
シュエットさんも使い方を憶えたみたいで、もっとたくさん押してくれると嬉しいです。
オカピー
2009年01月25日 00:55
シュエットさん、こんばんは。

>爽やかな清涼剤
確かに夏に観ると良い感じかもしれませんね。
フランスは行ったことがないけれど、プロヴァンスが一番僕の好みに合いそうです。

>筆を入れすぎて駄作にしてしまう
絵のことはよく解りませんが、【木を見て森を見ない】のは一般的に芸術では良くないことのようですね。
小説では徹底的に細かく描くジャンルもあって、それはそれとして認められるのでしょうが、そういうのは映画的ではないのでまず映画化されないし、一般的に「映画は省略がうまく出来て初めて一流だ」と思っています。
2009年01月31日 01:34
こんばんは。
R・スコットらしからぬ内容、R・クロウらしからぬ演技と、いい意味で予想を裏切られ、楽しめました。
>【予想通りの結末】という感想が目立つが、・・・
結末も重要ですが、そこに至るまでの過程はもっと重要ですね。
オカピー
2009年02月01日 00:11
hashさん、こんばんは。

>いい意味で予想を裏切られ
例によって何にも知らずに観たので予想も何もないのですが、結果的に僕の持つ彼らのイメージを覆したのは事実ですので、全くその通りでした。

>過程はもっと重要
そうですとも。
逆に言えば、鮮やかなどんでん返しや見事な幕切れだけで評価をぐっと上げてしまうのも問題なわけです。多少は良いですけどね。

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