一年遅れのベスト10~2008年私的ベスト10発表~

群馬の山奥に住み、体調も万全とは行かず、WOWOWを中心にした映画鑑賞生活ですので、私の2008年私的ベスト10は皆様の2007年にほぼ相当する計算でございます。初鑑賞なら何でも入れてしまうので、時々古い作品も入ったりします。

因みに2008年の鑑賞本数はほぼ例年並の428本、再鑑賞作品は72本。つまり、356本が初鑑賞。初鑑賞の作品数はここ数年では一番多くなりました。


1位・・・パフューム ある人殺しの物語
映画を見る上で一番大事な「次はどうなるのか」という“サスペンス”を最も感じさせたのがこの作品。匂いをスケールの大きい映像と音楽で見事に表現していましたね。出世作「ラン・ローラ・ラン」では注目に値するものの小手先の発想に頼った観があったトム・ティクヴァの鮮やかな進歩に脱帽した次第。

2位・・・題名のない子守唄
僕が最も評価している現役監督の一人ジュゼッペ・トルナトーレの鮮やかな話術に酔わされました。ミスリードの仕方も上手く、これもまた「次はどうなるか」とわくわくしながら観ることが出来た秀作。主演女優クセニア・ラパポルトにはすっかり惚れ込んでしまいましたし、子役も見事。

3位・・・それでもボクはやってない
裁判映画は通常主人公がどう裁かれるかが眼目になりますが、本作は、「この状況であなたはこの人を裁けますか、裁くとしたらどういう判決を出しますか」という命題を観客に付き付けました。本作が裁こうとしたのは日本の裁判制度そのもの。周防正行監督らしい娯楽性に富んだ社会派映画でした。

4位・・・ゆれる
「映画は一回で判断すべきであり、できる内容でなければならない」という僕の映画観から言うと、本作は【良い作品】ではない。しかし、僕が一回観た限りにおいても実によく計算された脚本ということが解り、一部批判派が言うように「観客の理解に任せた」作品などではなく、一回しか観ていない僕がこんなことを言うのは何ですが、三回くらい観れば一つのしっかりしたストーリーが見えて来るはず。曖昧なのは、兄がどういう態度を取るか解らない幕切れだけです。

5位・・・レミーのおいしいレストラン
採点上は「パフューム」と同じ☆☆☆☆★ですが、自由度の大きいアニメということで実写映画に順位を譲ることにしました。戦前の映画も相当観ている僕の感覚では、フランク・キャプラ的理想主義の再現という印象あり。ネズミのシェフという常識の逆を行く発想と、キャプラ的な定石を上手く混ぜたところが素晴らしかった。

6位・・・世界最速のインディアン
世界最速を目指すオートバイ野郎、それも60を過ぎた老人なり。そんな彼を主人公にした実話ものスローライフ的ロードムービーで、序盤を除けば善良なる人物しか出て来ませんが、それは主人公の人となりが導くものであるということが伝わり、大変良い後味を醸し出していました。

7位・・・ダイ・ハード4.0
ジャンル映画が必要以上の性格描写やメッセージに拘ってどんどん純度が落ちている時代にあって、アナログ刑事とデジタル・テロリストの対決を直線的に描いた点を大いに買っています。映画自体も極力アナログに拘っているのが見えて嬉しかった。「アンダーワールド:レポリューション」なんて映画未満の映像作品を作ったレン・ワイズマンを見直しちゃったな。

8位・・・あるスキャンダルの覚え書き
「悪魔のような女」のシモーヌ・シニョレ、「マドモアゼル」のジャンヌ・モローが怖い女教師の代表ですが、その列に加えたくなったジュディー・デンチの女教師。ジャンルとしては心理サスペンスを軸とするドラマと言うべきでしょうが、怖いものは怖い(笑)。彼女の戦略に嵌る相手役のケイト・ブランシェットとの演技合戦も見事でしたね。

9位・・・ヴィーナス
70年代の初め少年と老女のカップルを描いた「少年は虹を渡る」というユニークな作品がありましたが、こちらは老俳優とフーテン少女の奇妙なるも思わずじ~んとしてしまう交流記。「社会的弱者を嫌わないで」という視点で作られながら、何より主人公の英国的な毒が陰にこもりそうなムードを回避したのが良かった。演ずるピーター・オトゥールは「チップス先生さようなら」では老人を演じましたが、本当の老人になってもやはり巧い。2008年の男優賞に決定!

10位・・・グッドナイト&グッドラック
Q:本作は何故モノクロなのか。A:モノクロ時代のTV局を舞台にした映画だからである。
という作品ですが、50年代前半のTV局でジャーナリスト魂を捨てなかった実在の人物を主人公に、現在のTV局をやんわりと批判した秀作。緩の部分として挿入される音楽スタジオのショットも効果的で、非常に気の利いたウェルメイドな一編でした。監督としてもジョージ・クルーニーはなかなかやりますね。


次点・・・今宵、フィッツジェラルド劇場で

画像

ワースト・・・インランド・エンパイア(D・リンチの夢を見せ続けられる3時間の長い悪夢のようでした。但し、芸術におけるワーストは真に「一番悪い」の意味ではない(期待の裏返しである)ので、リンチ・ファンの皆さま方、怒って僕をリンチしに来ないでください)



****適当に選んだ各部門賞****
監督賞・・・トム・ティクヴァ~「パフューム ある人殺しの物語」
男優賞・・・ピーター・オトゥール~「ヴィーナス」
女優賞・・・クセニア・ラパポルト~「題名のない子守唄」
脚本賞・・・西川美和~「ゆれる」
撮影賞・・・ロバート・リチャードスン~「グッド・シェパード
音楽賞・・・グレン・ハンサード、マルケタ・イルグロヴァ~「ONCE ダブリンの街角で

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この記事へのコメント

シュエット
2009年01月22日 10:11
「パフューム ある人殺しの物語」が栄えある1位とは! 嬉しいです。劇場に2回観にいき、WOWOWで再鑑賞して、観る度に主人公の心の襞が見えてきて、一所懸命記事にした甲斐があったわ。(と嬉しくなる)
「ヴィーナス」これは劇場での上映期間が短くって見逃してしまっている作品です。予告編でピーター・オトゥールが老いても素敵な雰囲気で観たかったのですが。「グッドラック&グッドナイト」おっと思うジャズも満載で、これもご機嫌だった。「ダイ・ハード4.0」すっごくわかりやすくって楽しめた。本来、子供からおじいちゃん、おばあちゃんまで誰がみても楽しめる。これが娯楽映画の基本だよなって思った映画でした。
「ゆれる」
>曖昧なのは、兄がどういう態度を取るか解らない幕切れだけです。
だから「ゆれる」なんでしょうね。「曖昧さ」そのものが本作のテーマなんだろうなって思う。
ちょっと思ったことをつらつらと書いてしまいました。
2009年01月23日 01:36
>リンチ・ファンの皆さま方、怒って僕をリンチしに来ないでください)

はいっ、リンチ・ファンがリンチに来ました! 笑
まあ「インランド・エンパイア」は仕方無いですよね。
元祖映画マニアの母曰く「あなたしかあんな映画は観ないわね」・・・だそうですから 笑

このランキングの中では「レミーのおいしいレストラン」「世界最速のインディアン」と、音楽賞の「ONCE ダブリンの街角で」 に共感です☆
3本の共通キーワードは「人と人との出逢い」「等身大の主人公」「人生の旅立ち」・・・こんな感じでしょうか?
観賞後に、どこか清々しい気持ちにさせてくれる映画がやっぱり好きです。
オカピー
2009年01月23日 02:09
シュエットさん、こんばんは。

ベスト10記事に書き込みがないことほど、映画ブロガーとして恥ずかしいことはないでしょう(?)から、とにかくシュエットさんに感謝。

>「パフューム」
後から読んだ原作とはテーマが違うのではないかと思いましたね。
原作では主人公は人非人(ひとでなし)ですが、映画は必ずしもそうではないような気がしています。映画では宗教的な匂いが漂っていましたし。
映画を見、小説を読む醍醐味は次の展開への期待ですからね。それに完璧に答えたのが本作。言うことなし。

>「ダイ・ハード4.0」
単純さこそ映画の基本です!

>「ゆれる」
この作品の全体に漂う曖昧さは、観客の判断にゆだねる曖昧さとはちょっと違うような気がしているんです。
少なくとも作者の中でははっきりと筋道が立っていて、細かく検証していけば一本の筋で繋がっていくと思われるのですが、そこを間違えても興味深く観られる作品を西川美和は作ったのだと思います。
オカピー
2009年01月23日 02:20
RAYさん、こんばんは。

>リンチ・ファン
怖いよぉ~。
ええと、「インランド・エンパイア」はカムコーダーのもやもやした映像も嫌でした。古いフィルムのもやもやは好きなんですが、ビデオのもやもやくらい嫌なものはないです。
お話は正に夢でしたね、飛びまくって。
僕がよく見るテロリストに追われる夢の方がもっと整合性がありそうです(笑)

>「人と人との出逢い」「等身大の主人公」「人生の旅立ち」
それなら「ヴィーナス」も入りそうですが、ご覧になりましたか?
いかにも英国的でアメリカのほのぼの系と違って適度な毒もあって、気に入ってしまいました。
シュエット
2009年01月23日 09:03
ちょっとコメント。
>観客の判断にゆだねる曖昧さとはちょっと違うような気がしているんです。
人間の心の曖昧さとでもいうのでしょうか。そういう曖昧さを、見るものに曖昧さを残した不完全燃焼をさせずに、見事に映像表現した。
そう思って見てました。
感傷的なムードとか安易なヒューマニズムなど寄せつけず描いている。
イージーな内面描写が目立つ昨今の邦画作品の中で嬉しい作品でした。
オカピー
2009年01月24日 01:07
シュエットさん、こんばんは。

仰る通りだと思います。
登場人物の心の揺れを正確に描いたから曖昧なように見えるのでしょう。
その折々では彼ら自身に判断がついていないのですから当然。
しかし、映画はどういう風に迷っているかきちんと描いているので、実は曖昧な描写などないと僕は思いますね。

感傷もヒューマニズムもそれを目標にきちんと描くなら僕は認めますが、昨今の、特にTV局が絡んだ作品は感傷もヒューマニズムも形式的にしか扱っていません。ひどいものです。
2009年01月24日 20:00
こんにちは!
2007年のベストからTBさせていただきました。
「パフューム~」は独特なムードでした。赤ちゃんのときの描写から、スゲーと思ってました。
「グッドナイト~」は後日テレビで見ましたが、なんて、かっこいい! の一言でした。
オカピー
2009年01月25日 01:02
ボーさん、こんばんは!

わざわざ古い記事からTB戴き有難うございました。

「パフューム」は今の映画に必要な要素が大体あったのではないでしょうか。
次のカットが次のシーンが観たくてたまりませんでしたよ。
ボーさんは劇場鑑賞当時評価としてはやや辛口だったようですね。^^

「グッドナイト~」は、目的と手法がばっちり合って膝を打った作品。映画通向きかなという気はしますけどね。こういう映画が解る人が増えれば、いやが上にも良い映画が増えるのですが。
2009年02月12日 18:30
こんにちは。
毎日のようにレヴューされておられるので、本当にすごいなあ、と頭が下がります。
ベスト10面白いですねぇ。
「ヴィーナス」をのぞいて、全部見ていますが、レヴューに書いたのは「題名のない子守唄」の1作だけです。情けない(トホホ)。

オカピー
2009年02月13日 03:17
kimion20002000さん、こんばんは。

>毎日のようにレヴュー
もう30年以上続けていますよ。
数をこなせば良いってもんじゃない、と誰かに言われましたが、質より量という意味では日本でもトップクラスでしょう。(笑)
文章が余り長くないので何とかなっております。
ただ、ブログでは多少体裁も気にするので、時間がかかるようになったのが辛いところ。

>ベスト10面白いですねぇ。
有難うございます。
kimionさんのところと違って、コメント数もTBが少ないですが、僕の周囲にベスト10のような企画に興味がある人が割合少ないということもあるんです。
僕はベスト10は自分を見つめる作業になると思うので、積極派です。

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