映画評「機関車先生」

☆☆☆(6点/10点満点中)
2004年日本映画 監督・廣木隆一
ネタバレあり

一度アニメ化されたことのある伊集院静の同名小説を廣木隆一が実写映像化。色々なところで放映されるので、遂に観ることにした(笑)。

昭和半ば、瀬戸内海に浮かぶ葉名島(はなじま=架空)の小学校に、この島から出た女性(寺島しのぶ、写真と声のみ)の息子・坂口憲二が臨時職員として赴任する。
 剣道の試合での事故で声を失った先生は、体躯が大きく「口をきかん」ということで機関車先生と仇名を付けられてなつかれるが、本土への強い対抗意識を持つ網元・伊武雅刀や腰巾着の青年にいじめられ傷め付けられる。無抵抗主義を理解できない子供たちは失望するが、剣道の試合に無理矢理担ぎ出され、優勝したことから大人たちの反応も変わる。

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二十四の瞳」の男性版の趣で、生徒の自己紹介場面など同作を踏襲した箇所も少なくないが、主人公が後天的な唖であるというひねりを加えている。従って、教師と生徒の愛情交換模様というより教師自身が生徒を教え交わるうちに障害を乗り越え、成長していく様を描くのが狙いと考えられる。剣道という小道具の使い方も上手く、子供たちの信頼だけでなく、大人たちの尊敬を得る展開にしたのもその狙いの実現を図るものである。「月光仮面」で昭和半ば(恐らく33年)を象徴させているのも面白い。
 といった具合に、どちらかと言えば褒めたいのは原作に由来するであろう部分である。

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一方、「ヴァイブレータ」「やわらかい生活」で観る限りセミ・ドキュメンタリー系統の作風と言って良い廣木監督が本作では「二十四の瞳」の木下恵介を見習うように叙情性に腐心しているのが解るが、終盤集まっている子供たちの捉え方などにドキュメンタリー・タッチが顔を出す。これはご愛敬としておきたいが、たっぷり描き込んだ環境の中に人物の心情を溶け込ませていく木下監督の境地に程遠い。1970年代以前日本人監督がお得意としていた演出だが、残念ながら廣木監督に限らず戦後生まれでこれがきちんと出来る監督は殆どいないのが実情。

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総論での問題点はこれくらいにして具体的に僕が最も気に入らなかったのは、先生が小舟で島を離れていく感極まるべき幕切れの場面でくどくどしくも7人の生徒全員に「ありがとう」を言わせていることだ。その前の「先生を見送りに学校へ行こう」と話し合う場面でも同じように一人一人ご丁寧に言わせているし、ここまで【これ見よがし】にやられると鼻白む。各人の先生への愛情を表現する為に必要という考えであろうが、一人をアップで描き、残りは全員同時に言わせるくらいのほうが却って感銘を生み出し得たのではないかと思う。

映画初主演(?)の坂口憲二はなかなか好演。台詞がなかったのが良かったと言えるような気がする一方、なかなか難しい役でもある。

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この記事へのコメント

2008年12月22日 16:32
>台詞がなかったのが良かったと言えるような気がする一方、なかなか難しい役でもある。

という行で「ブログ気持玉」の“なるほど”を押してみましたが、投票できたのやら・・・?

剣道をやっている先生ということなので、突き技による事故の障害かなと思って読んでいましたが違うのですね。
多少演出に不満があってもちょいと見たい気もする映画ですね^^
オカピー
2008年12月23日 02:15
十瑠さん、こんばんは。

>ブログ気持玉
3,4日前から始まった機能ですが、使い方がよく解りません。
残念ながら十瑠さんの投票は入っていなかったので、実験も兼ねて自分で入れてみたら見事に入りました(笑)。
まさかウェブリしか入らないなんてことはないんでしょうな。^^;

>突き技による事故の障害かな
いや、その通りですよ。
「後天的な唖」という僕の表現が悪かったようです。

昭和時代の映画という雰囲気ですが、それらしいムードがもう一つかな。

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