映画評「ベオウルフ/呪われし勇者」

☆☆☆(6点/10点満点中)
2007年アメリカ映画 監督ロバート・ゼメキス
ネタバレあり

ゲルマン人の「ニーベルンゲンの歌」と並ぶ英国の「ベオウルフ」は、舞台が現在のデンマークになっていることから、デーン人(ノルマン一派)の英国における影響力を伺い知る上で貴重な英雄譚である。

本作はこの古い物語に基づきロバート・ゼメキスが映像化した作品だが、題名以外の情報を得ずに見た為人物が実写なのかCGなのか暫く解らずにいた。フロースガール王を演ずるアンソニー・ホプキンズは実写に見えるが、王妃(ロビン・ライト・ペン)はCGにしか見えない。監督名さえ知らなかったので、実写を取り込んだCG映像であろうと考えながら見続け、クレジットで監督がゼメキスと判って彼が普及を目指しているパフォーマンス・キャプチャーを使ったフル3DCG映画と理解した次第。今回若干解像度の落ちるブラウン管TVで観たのが失敗、チャンスがあれば居間にある液晶TVでその辺りを確認してみたい。

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パフォーマンス・キャプチャーの成果については後で述べるとして、まずお話について軽く触れましょう。

6世紀のデネ(現デンマーク)、王様を守る家臣たちを次々と襲う怪物クレンデルを、隣国の若武者ベオウルフ(レイ・ウィンストン)が征伐して黄金の杯を頂戴するが、安心するのも束の間その母親(アンジェリーナ・ジョリー)に家臣たちがやられてしまう。
 征伐に出た彼はその魅力にほだされて黄金の杯がある限り王様でいられるという契約を結んだ後倒したと称して戻り、直後に自殺するフロースガールにより次の王に任命される。契約により永世の君主として君臨するが、家臣の従者である若者により黄金の杯が盗まれた為に怒った美女実は火を放つ竜により攻め込まれ、竜と共に滅びていく。

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怪物の母親と竜を同一の存在とした以外はほぼ原作通りのようだが、この変えた部分が面白い。つまり母親と交わった報いとして二人の王が呪われるという、現代人に受ける要素が発生するのである。

実写映画が絵(CG)を取り込む手法は現在殆どの作品に使われているわけだが、アニメが実写を利用するようになって両者の境は徐々に曖昧になり、やがて実写オンリーの映画は古典芸能のように隅に追いやられてしまう(その代わり確実に生残る)と僕は考えるが、動きの激しいところではパフォーマンス・キャプチャーなる技術もまだまだ改善の余地ありで、一般的なCG映像のほうがずっと滑らか。

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とは言え、allcinemaへの書き込みのように鬼の首でも取ったように大騒ぎするのは極めて馬鹿らしく、動きの拙劣さだけを以って駄作扱いにするのは極端すぎる。映画はSFXやVFX技術の審査の場ではないわけだから、物語その他を加味して全体できちんと評価しなければならない。
 英雄譚として僕はそこそこ楽しんだが、80年以上も前にフリッツ・ラングが「ニーベルンゲンの歌」を特殊撮影を駆使して映像化した「ジークフリート」のほうが遥かにわくわくさせられる。CGでは何を見ても当たり前にしか見えない。況(いわん)や、フルCGをや。

嘘つきは王様の始まり、とか。

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この記事へのコメント

2008年12月20日 17:21
こんばんは。
本作はアニメか実写かどっちでもいいですが、まともな映像で観たかったです。
アメリカも不景気ですから、このような実験的映像は当面作られないでしょうね。
オカピー
2008年12月21日 02:11
hashさん、こんばんは。

パフォーマンス・キャプチャー、「スキャナー・ダークリー」のロトスコープ、方や実写映画はCGの締める範囲と時間が増え、本作など当初CGアニメなのかCGを異様に多く使った実写なのか解らなかったほどですから、変てこな時代になったものです。

>アメリカも不景気
なるほど、そういう風に考えると映画制作もまた違って見えますね。
この場合のギャラは何割引きだべか?(笑)
同じだったら実写映画の方が割りが良いですよね。
2009年01月06日 00:33
むむ、これもご覧でしたか!
たしかに不自然なところもある特撮方法ですが、チャレンジしていくというのが新しい技術の進歩ですよね。
話自体も英雄物語として、わりと楽しく見られるものと思いました。
オカピー
2009年01月06日 03:31
ボーさん、こんばんは。

僕は動きが悪くてもSFX(実写)のほうが好きなんです。
CGである限りは動きはもっと滑らかにも出来そうなものですが、ただCGは実写に近づかない方がお互いの為なんですが。

物語はつまらない観念論が入らずに面白い部類でしたね。

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