映画評「人のセックスを笑うな」

☆☆☆(6点/10点満点中)
2007年日本映画 監督・井口奈己
ネタバレあり

僕は戦後すぐのセミ・ドキュメンタリーではなく、今の所謂セミ・ドキュメンタリーには概して感心しないほうである。そもそも現実を捉えるには現実的な手法に限るなんて発想が馬鹿げている。本作の井口奈己も女性監督に多いその系統に分類されるが、前作の「犬猫」は洒落っ気とユーモア感覚があってなかなか楽しんだ。その意味では本作は期待作である。原作は山崎ナオコーラ。

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舞台はわが群馬の東毛(東群馬)らしいが、実際の東毛には存在しない美術学校の生徒・松山ケンイチ君19歳が新任の非常勤講師・永作博美39歳にモデルに誘われてそのまま懇ろになり、同級生の蒼井優を悩ませるが、その後彼女が結婚していることを知って彼自身が悩むことになる。博美先生は突然辞職してインドへ旅行に出、優嬢は退学する。

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で、作品の結論は「会えなければ終わるなんて、そんなもんじゃないだろう」。構成は現実世界の感覚に極めて近い、即ち、実際の人生に明確な起承転結がないようにはっきりした起承転結がないのである。僕はどちらかと言えばきちんと展開する構成が好みではあるが、好き嫌いと評価は別にしている。

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起承転結を付けないことは、彼女がこの映画を実際に即して作るという宣言である。そこで採られるのが固定ショットの多用。この映画でカメラが動くのは多分3カ所だけだと思うが、彼女の長回し気味の固定ショットは本来出てくる冷たい感じの代わりにどこかユーモラスな感覚を生み出す。登場人物の出入りや描写そのものの可笑しさもあるが、繋ぎの呼吸や構成に工まざるおとぼけ感があるのである。

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実際かなりの長回しもあるが、全体としては言われる程ではなく(推定250カット、昔の一般映画は500~600カット)、「世界」の頃のジャ・ジャンクーや「不完全なふたり」(約40カット)の諏訪敦彦みたいな単調さは余り感じられない。但し、字余り的なショットや不必要と思われるショットもないではなく、そこら辺りを整理して20分くらい短く出来ればもう一つ★を増やせただろう。「犬猫」の幕切れのように膝を打つ面白さがないのも不満。

「犬猫」と併せて、井口監督が分岐路と堤防と猫と犬が好きなことが解ったのが収穫かな。

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この記事へのコメント

カカト
2008年11月11日 21:52
お久しぶりです。
私、この映画すごーく好きなんです。
原作も読みたいのですが、映画のイメージと違ったら・・と、思うとなかなか手を出せずにいます。
そのくらい、この映画が気に入ってます。

「会えなければ終わるなんて、そんなもんじゃないだろう」
なによりこの言葉が大好きです。
つまり、この言葉が出る場面が一番好きな場面です。
なんかちょっと「この映画が好き」というのと違う気もしますが・・。」

「人のセックスを笑うな」
うーん、笑った事、あるなぁ・・。ひどいですよね。
オカピーさんはどうですか?笑

オカピー
2008年11月12日 02:07
カカトさん、お久しぶりです。
現在、ブログの方は休止中ですよね。
僕の周囲でもお休みしている人が多くて寂しいので、
余裕ができたら復帰してくださいね。
それまでは本館を含めて遊びに来てください。
本館では毎月二日に「女優当てクイズ」をやっています。

原作とイメージが違うと嫌だから映画を見ない...
という人は多いと思いますが、まるで逆なんですね。
僕は映画中心だから、そのほうが嬉しいです。^^)v

自分らと何も変わらない親近感に共感を覚える人は
大好きになりそうですし、
「映画は夢である、創造性である」なんて人には
つまらない映画に映るタイプの作品ですよね。

僕は後者に近いですが、井口女史の呼吸は結構好きですね。
何だかとぼけて笑えてくる。

>人のセックス
を笑えるほど性愛に熟練していないからなあ。^^
どちらかと言うと笑われる方だろうな、きっと。TT
2008年11月18日 12:58
こんにちは。
分岐路(Y路)は、横尾忠則なんかも多く作品モチーフにしていますが、不思議な魅力がありますねぇ。
オカピー
2008年11月18日 20:00
kimion20002000さん、こんばんは。

>分岐路
井口女史の作品は、始まりも終わりもなく、大きな事件もないので、撮影などに注視してしまいます。
何となく微笑ましい作風で、セミドキュメンタリーの作家の中では好きなほうです。
カカト
2008年12月05日 17:07
やっと、やっと、映画のこと書きましたー。
久しぶりだったので、お酒の力を借りて執筆。
恐ろしくて読み返せませーん。

私もみるめくんみたいな男の子がいたら、「触ってみたい」と思うかもしれません。←問題発言。
実行にはうつしませんよー。
ちなみに、現在はシラフです。
オカピー
2008年12月06日 02:29
カカトさん、こんばんは。

>お酒の力を借りて
うわっ、能天気に映画のことだけを考えているのは僕だけらしい。
(本当は色々考えております、一応言葉の綾とご理解ください。^^)

>←問題発言
あははは。
「男もすなる浮気というものを、おんなもしてみむとて、するなり」ですね。あのヒロイン、内面は男でしたなあ。
男女同権は良いけれど、男女平等というのは実際には難しいですよね。
嘘か本当か知りませんが、ある脳病理学者の話ですと、男言葉を使うと女性の脳には無理がかかって脳の病気になりやすいとか?

>現在はシラフ
あはは。
僕は仕事での接待を別にすると元来ビールくらいしか飲まなかったのですが、最近は飲むと直後に変調を起こすので飲まないことにしていて誠に寂しい限り。

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