映画評「名誉と栄光のためでなく」

☆☆☆★(7点/10点満点中)
1967年アメリカ映画 監督マーク・ロブスン
ネタバレあり

ジャン・ラルテギーの小説「ザ・センチュリオンズ」をマーク・ロブスンが映像化した戦争映画。

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1954年、フランス軍の中佐アンソニー・クィンはインドシナ戦争で捕虜になりながらも休戦協定により解放され帰国、戦死した上官の未亡人ミシェル・モルガンを見舞って懇ろになり、左遷を避け彼女と結婚する為に、折しも勃発したアルジェリア戦争に出征、インドシナで一緒に戦った歴史家の大尉アラン・ドロン、少尉モーリス・ロネらと一緒にゲリラ一掃作戦に奮闘するのだが、何故か招聘に応じなかったアラブ人ジョージ・シーガルがゲリラのリーダーになっていることが判明、かくしてかつての戦友同士が敵味方に分れて闘うことになる。

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邦題は些か勿体ぶっていて、確かに戦争の非人間性を訴えるような描写もあるにはあるが、基本的には戦略の面白さをフィーチャーした戦闘アクションである。荒涼とした岩山地帯で繰り広げられる戦闘描写はタイトで宜しい。昨今の細切れショットばかり見ていると、一つのアクションが終わるまできちんと見せる、20年前まではごく当たり前だったカット割りすら御馳走に見えてくる。尤もきちんとし過ぎて字余り的になっても駄目なわけだが、そういうこともない。

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闘う相手が正規軍ではなくゲリラにつき、シーガルの妹クラウディア・カルディナーレが町に繰り出してドロンをたらし込み、検閲なしに雷管を拠点に持ち込むスパイ映画的な展開も楽しめるが、双方の立場を真面目に描こうとする狙いがタッチの重さに繋がってしまい、純娯楽映画として観るには不満が残る。独立運動をテーマにした作品であるものの、50年前と現在で東西文明対立の構図は大して変わっていない・・・と勉強になる部分あり。

クラウディア ドロンをとろんと たらし込み

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この記事へのコメント

2008年11月09日 15:04
おおっ!オカピーさん!
わたしが更新記事の修正(ラウール・レヴィについて加筆しています)にやっきになっている間に、このような稀少な映画の記事をアップされていたとは・・・!
わたしも含めてドロン・ファンでも、この作品に関心を持つことって、ほとんどないと思います(笑)が、何だかうれしいですね。
しかも、何と7点も・・・!
>20年前まではごく当たり前のカット割りすら御馳走に見えてくる。
ほんとにそうですよね。なんてリアルな映像なんしょう。現在だからこそ、こういった地味な作品から映画作りの素晴らしさを感じ取ることも価値のあることなのではないでしょうか?
ハリウッド時代のドロン、わたしはファンですから、悪くないと思うんですがね・・・。
では、また。
オカピー
2008年11月10日 01:59
トムさん、こんばんは。

>ドロン・ファンでも、この作品に関心を持つことって、ほとんどない
あくまでアンソニー・クィンの添え物的な扱いですから、ドロンを見るにはつまらない作品かもしれませんね。

>しかも、何と7点も・・・!
今回3回目になりますが、お話が結構面白いので。
ロブスンの演出がもう少し軽ければご機嫌だったでしょう。

>リアルな映像
コンピューター(CGに限らない)を使わない映像というのは実に気持ちが良いです。

>ハリウッド時代のドロン
イエス、サー!^^)ゞ
彼の良さを十分引き出す役は殆どないですし、過小評価されていますが、それなりに面白い作品が多いと思いますよ。
arichanK
2008年11月28日 11:26
初めておじゃまします。アラン・ドロンからやってきました
「太陽がいっぱい」封切りを見てから、数年後にアメリカの田舎町に住むことになって20数年、ハリウッド進出でも見られた映画は少ないのですが、これは映画館で見ました。考えてみると、イタリアにいたとき(65-67年)のイタリア語の吹き替えでした。1960年代のイタリアは識字率が低く、字幕はありませんでした。ミュージカルはオペラシンガーが吹き替えしていたようです。実際にみたのはMy Fair Lady。Rex Harrrisonの声が聴けなかったとアメリカ人ががっがカリしていました。遠い昔です。言葉の壁からよく見る映画はアクション物が多かったのでした。
オカピー
2008年11月29日 00:31
arichanKさん、初めまして。

ということは現在は日本にいらっしゃるのでしょうか?
いずれにしても海外での生活は大変だったでしょうね。

>イタリア語の吹き替え
世界的には吹き替えが多いようですね。
字幕が優勢だった日本も、現在では吹き替え版も字幕版と同時に製作され、ものぐさな観客を甘やかすことが多くなったようです。
吹き替えは情報量が多いのは良いのですけどね。

>Rex Harrisonの声が聴けなかったとアメリカ人ががっかり
それはしますよ。
しかし、オードリーは最初から吹き替えでしたけど。でも、台詞は当然本人ですからやはり吹き替えはまずいです。

>言葉の壁からよく見る映画はアクション物が多かった
特に昔のアクションは割合単純なお話が多かったからうってつけですね。

また、遊びに来てください。
たまには古い映画も記事にしますので。
arichanK
2008年11月29日 11:34
早速お返事ありがとうございました。日本へ帰ってきてから20数年なりました。
イタリア語吹き替えのMy Fair Lady、オードリーの台詞はCockneyのところがナポリ方言であることはわかりましたが
学習したあとのKing's Englishにあたるものががどれほどかは判断出来ませんでした。ナポリ方言よりは外国人にとってはわかりやすかったのですが。勿論、その後、英語で見ました
Neither Glory nor Honor に戻ると、
夫はミシェル・モルガンもういい年なのになんてエロティックで素敵と言っていました
私はA. Queenがアルプスの田舎へ帰ったときに母親から、
「結局将軍にはなれなかったのね」、つまり<栄光なし>と言われるとことが、はじめのDien Bien Huの敗戦の所とともに印象に残っています。
アメリカはベトナム戦争を引き継いで、ひどいことになりましたから。フランスもドゴールがアルジェリア戦争後の財政立て直しをしている時期でもあり、イタリアには高速道路が出来ていたのにフランスはでこぼこ道でした。
オカピー
2008年11月30日 00:59
arichanKさん、こんばんは。

>ナポリ方言
日本なら東北弁になるのでしょうね。一番方言らしい方言、なんて言ったら東北の人に叱責されるでしょうが。

>ミシェル・モルガン
この映画の時46歳。女優さんはやはり凄いと思います。
僕が観た彼女の出演作で一番古いのは「霧の波止場」。この時弱冠18歳でしたが、昔の女優は若くても大人っぽくて迫力があるのには驚かされますね。「田園交響楽」「落ちた偶像」も印象的でした。

>つまり<栄光なし>
アルジェリア戦争に彼が捲土重来をかけるきっかけになる言葉でもありましたね。

>フランスはでこぼこ道
なるほど。
ある意味歴史が感じられる貴重な経験ですね。
10年ほど前に出張した中国は東莞(ドングァン)。当時はまだひどい道が多かったですが、この10年での中国の躍進は凄いですから現在は良くなっているかもしれません。
2016年11月28日 23:32
オカピーさん、こんばんは。
またまた、記事をアップしたのでTBします。父親との想い出を綴ったコラムみたいな内容ですが、暇な時にご高覧ください。最後のほうにオカピーさんのことを記してしまいました。事後報告すみません。
>タッチの重さ・・・純娯楽映画として観るには不満が残る。
こんなに丁寧に撮っていて、オールスターキャストですから、全く惜しい作品となってしまいましたよね。考えてみると、50年代から60年代初めに掛けての娯楽戦争映画は、コロンビアが疾風怒濤だったと思います。
「地上より永遠に」、「ケイン号の叛乱」、「戦場にかける橋」、「ナバロンの要塞」・・・。
ドロン・ファンとしては、この作品、こんな一連の作品に連なって欲しかったですよ。本当に惜しいです。オカピーさんの仰る通り、重すぎるんですよね。
マーク・ロブソン監督は挙げられるところまではいかなかったようですが、非米活動委員会のリストには名前があった人のようですから、ハリウッドの監督としては、かなり生真面目な映画作家だったのかもしれません。パニック映画全盛期には「大地震」なんかもこの監督だったそうです。大作が多かったのでしょうね。もっと、評価されて良い監督だと思います。
では、また。
オカピー
2016年11月29日 22:30
トムさん、こんにちは。

トムさん、この作品については書かれていなかったんですね。
この映画に関しては僕の方が先に記事にしましたか。光栄(栄光ではないですが)です^^/

>丁寧に撮って
ロブソンは仰るように真面目だったんでしょうね。結果的にタッチが重く、娯楽性が高い本作に望まれる軽快さが足りず、快作にはならなかった。そんなところだと思います。

>「大地震」
そうでした。
これは映画館で観ましたが、物足りなかったです。
大作はすぐに駄作扱いされる悲劇性があり、そこまでひどくはなかったと思うものの、「思ったほど面白くなかったなあ」と思って映画館を後にしたのを憶えています。

多分もう少し器用さがあれば、評価されたかもしれませんね。
2016年12月01日 01:09
オカピーさん、連続コメントします。
実は、オカピーさんの既にアップしている「お嬢さん、お手やわらかに!」、「復讐のビッグガン」、「ハーフ・ア・チャンス」も、当ブログではまだ記事にしておりません。
前二作は、あまりにむかしに観た作品ですので、書くのにかなり苦労しております。「ハーフ・ア・チャンス」は、あまりに書きたいことは拡がりすぎて整理しきれていないんですよ。
他にも、デビュー2作品や、「さすらいの狼」、「素晴らしき恋人たち」、「ジェフ」、「栗色のマッドレー」などのほか、人気凋落後の未公開作品も数本あります。
当ブログの今後の可能性と捉えていただければ幸いです(笑)。
ところで、オカピーさんは、私の父親が言っていたドロンと「外人部隊」のイメージ、結びつきますか?
私はジャック・フェデールの古いフランス映画にドロンのイメージがとても良くはまるように思います。「さらば友よ」の地下金庫でブロンソンに語る自分の誤射による親友の死、自分への勲章などの独白は、それだけで映画にできるような気がしているんですよ(笑)。
では、また。
オカピー
2016年12月01日 20:27
トムさん、こんにちは。

>「ハーフ・ア・チャンス」
僕は勝手にこの映画の隠れた狙いなどを考えてみたものですが、専門のトムさんはどう書かれるか。お待ちしておりますよ。
これは書かなければダメですよ(笑)

>「さすらいの狼」、「素晴らしき恋人たち」
消極的な態度を決め込んでいるので、実はこの二本、見ておらんのです。

>ドロンと「外人部隊」
ドロンは傭兵が似合いますよ。「外人部隊」はフランスのもの(?)ですが、傭兵は世界各地に存在するでしょうから。
「外人部隊」はわがライブラリーにありますので、近いうちに見直してみましょうかねえ。

後日そちらの記事に何か書き込もうと思いますが、ここ数日忙しいそうなので、少し後になるかもしれません。悪しからず<(_ _)>

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  • 『名誉と栄光のためでなく』~幻想映画館『外人部隊』

    Excerpt:  私の父親や母親は、1930年代中盤以降(昭和二桁)になってからの生まれで、1950年代後半から60年代初めに掛けて青春時代を過ごした世代です。アラン・ドロンともほぼ同世代で、世代的には映画や音楽が好.. Weblog: 時代の情景 racked: 2016-11-28 23:03