映画評「サンシャイン2057」

☆☆☆★(7点/10点満点中)
2007年イギリス映画 監督ダニー・ボイル
ネタバレあり

28日後…」より「ミリオンズ」のほうが面白かったダニー・ボイルの新作は、近頃珍しいハードSF。

2057年、太陽のパワーが衰えて冷え切った地球から飛び立ったイカロス2号に搭乗する8名が地球にあるだけの核爆弾を投下して太陽を活性化する任務を遂行中。7年前に同じ任務を遂行中に消息不明になったイカロス1号からの信号を受信した為に協議の末に回り道をするが、物理学者キリアン・マーフィーの指示の下に行われた軌道修正の際に航海士ベネディクト・ウォンが計算ミスを犯して壊れた太陽の照射を遮るシールドを修理する際に船長・真田広之が太陽の熱に命を落とす。
 やがて接続した1号を捜索した船員たちは灰だらけになった内部と黒こげになった船員の姿を発見、その後接続が外れる事故などで船員たちは次々と減っていくが、任務遂行までに必要な酸素を計算したコンピューターが不審な人物一人、即ち、発狂して計画を邪魔する1号の船長が紛れ込んでいることを報告する。残ったクルーたちは任務を全うする為に凶暴化したこの人物と対峙する羽目になる。

映画では物語と映像のバランスが大事なので、映像が一方的に優れていても駄目なわけだが、本作の映像は久しぶりにSFとして見応えたっぷり、大げさに言えば40年前に「2001年宇宙の旅」を初めて観た観客の反応もかくやと思えてくるほどである。残念ながら、その映像はパソコンとの接続の関係で採録できない。

映像に満足すれば多少の展開の穴なら目をつぶりたくなるのが人情で、太陽を神と見なす狂人の存在から「2001年」系列の哲学的なSFと捉えると、スペースオペラなら欠点とされるべき穴がさほどではないように錯覚する。
 例えば、1号の船長が太陽の強烈な照射にも拘わらず何故生き永らえることができたのかといった疑問も哲学的解釈で「まあ良いでしょう」ということになったりする。そして、その彼の凶行が引き起こすのは恐怖ではなく、唯一クルーが任務を全うできるかどうかというサスペンスである。何故なら、彼らは任務完了後死ぬことを観客は知っているので通俗的な死の恐怖は眼目になり得ない。

地球の描写が挿入されないことを不満に思っている人が多いようだが、「宇宙における任務の孤独」という映画のテーマに全くそぐわない。カットバックすれば散漫になって純度が下がる。また、任務完了後に初めてクルー以外の人物が出るから余韻的効果が生まれるのである。ハリウッドの大げさな人情冒険映画と混同してはいけない。

気に入らないのは、半ば意図的だが、ショットの繋ぎにぎこちない点が散見されることである。特に最後のゴタゴタは頗る解りにくい。しかし、この終幕は「2001年」のあのサイケな幻想映像を意識したと思われる節があり、そういう意味でなかなか面白く観られるという側面がある。

科学的には、太陽の余命は50億年、その末期には巨星化して地球は飲み込まれると言われております。

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!

ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。

→ログインへ

なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた
面白い
ナイス
ガッツ(がんばれ!)
かわいい

気持玉数 : 1

なるほど(納得、参考になった、ヘー)

この記事へのコメント

この記事へのトラックバック

  • 『サンシャイン2057』'07・米

    Excerpt: あらすじ50年後の近未来、太陽の消滅により地球も滅亡の危機にさらされていた。人類最後の望みを託されたのは、宇宙船イカロス2号に搭乗した船長(真田広之)や物理学者のキャパ(キリアン・マーフィ)ら男女8人.. Weblog: 虎党 団塊ジュニア の 日常 グルメ 映画 ブログ racked: 2008-10-01 21:02
  • ★「サンシャイン 2057」

    Excerpt: ←今年通算70本目。 SFものは大画面で見なくちゃ・・って事で、 今週の週末ナイトショウは、この作品。 主演は、最近よく見るキリアン・マーフィー。 共演に、真田広之、ミッシェル・ヨーなど。 Weblog: ★☆ひらりん的映画ブログ☆★ racked: 2008-10-02 02:16
  • サンシャイン2057

    Excerpt: 作品情報 タイトル:サンシャイン2057 制作:2007年・アメリカ 監督:ダニー・ボイル 出演:キリアン・マーフィ、真田広之、ミシェル・ヨー、クリス・エヴァンス、ローズ・バーン、トロイ・ギャリティ、.. Weblog: ★★むらの映画鑑賞メモ★★ racked: 2010-08-13 02:18
  • 「サンシャイン2057」

    Excerpt: お勧め度:★★★☆☆ 製作年 : 2007年 製作国 : アメリカ 配給 : 20世紀フォックス映画 上映時間 : 108分 監督 : ダニー・ボイル 脚本 : アレックス・ガーランド 出演 :.. Weblog: ドゥル的映画鑑賞ダイアリー racked: 2010-08-22 02:09