映画評「ミッドナイト イーグル」

☆☆★(5点/10点満点中)
2007年日本映画 監督・成島出
ネタバレあり

原発を狙って密かに活動する北朝鮮(作品の中では北東人民共和国とぼかしていた)の工作員に国家が脅威に晒される「宣戦布告」とダムの作業員がテロリストと対峙する「ホワイトアウト」を合わせたようなポリティカル・サスペンス風ドラマ。原作は高嶋哲夫。

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中近東でお菓子を上げた子供が眼前で死んだことに無力感を覚えて帰国、山岳写真でお茶を濁している間に妻に死なれてしまった戦場カメラマン・大沢たかおが彼を慕う新聞記者・玉木宏に引っ張られ、飛行機墜落事故の真相を掴もうと北アルプス山中の目的地に接近するうちに北朝鮮(と言わず、国名なしに留めている)の工作員と思しきグループに襲撃され、並行して現場に向かっていた自衛隊の小隊と遭遇、結局一人残った三佐・吉田栄作と墜落現場へ向かうことになる。
 一方、姉が死ぬことにその最期まで気付かなかった大沢を恨んで甥を引き取っている雑誌編集者・竹内結子は、横田基地に忍び込んだ末に重傷を負って逃亡した工作員と接近するチャンスを与えられる。

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これだけでは何のことだが解らないだろうが、要は、墜落した飛行機が核爆弾を積んだミッドナイト・イーグルと呼ばれる米軍のステルス戦闘機で、その墜落は彼女が接近した北朝鮮工作員が起こしたものであり、内部に残された核爆弾を別の工作グループが爆破させようと企んでいる、という設定である。

小さな疑問点は枚挙にいとまない程あるが、本作の場合小さな疑問が五つだろうと十であろうと採点的には大きな影響はない。
 本作最大の問題点は、サスペンスに向いている題材にも拘らず一向にサスペンスフルに作らなかったことである。それというのも主人公が戦場カメラマンたる自分を見失ってそれをどう克服していくかといったサブ・テーマを盛り込むなどしてドラマとしても作ろうとした為で、サスペンスにするかドラマにするか最後まで焦点を定め切れない。半端な作品になるのは脚本の段階で見えている。

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サスペンスとしてはなっていないと言うしかないが、サスペンスにおいては重視するに及ばない<作品の主張>を探っていればそう退屈もしない。恐らく、原作者はいざ知らず、脚本家二人組には「日本はアメリカに頼らず自力で国を防衛しなければならない」という主張を展開しようとした様子が伺える。【様子】に留まったのは結局最後にアメリカのトマホーク(ミサイル)に頼るという首尾一貫しない結末が待っているからである。
 しかも、この幕切れはまるで「アルマゲドン」の終幕の如く余りに美談調すぎて感心しない。美談調でも構わないわけだが、「過ぎたるは猶及ばざるが如し」という孔子の言葉は、勿論、映画にも当てはまるのだ。

この記事へのコメント

2008年10月14日 19:16
何だかちっとも緊迫感のない映画でしたね。 成島出監督って独特の雰囲気の作品を作る方だと感心してしまいました。
オカピー
2008年10月15日 01:59
みのりさん、こんばんは。

>緊迫感のない
サスペンス演出の力云々ではなく、人間ドラマ的に作るという意識が強すぎたのでしょう。
しかし、あれれだけ異常な状況を見せながら人間ドラマを作るのは、最初から企画として失敗ですよ。
苦笑するしかないです。

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  • <ミッドナイト イーグル> 

    Excerpt: 2007年 日本 131分 監督 成島出 原作 高嶋哲夫「ミッドナイト イーグル」 脚本 長谷川康夫  飯田健三郎 撮影 山本英夫 音楽 小林武史 出演 大沢たかお  竹内結子  玉木宏 .. Weblog: 楽蜻庵別館 racked: 2008-10-14 18:43
  • ミッドナイト イーグル

    Excerpt: 高嶋哲夫の同名ミステリー小説を原作とした雪山を舞台にしたサスペンスアクション。先日、テレビで放映されていたのを録画して見ました! 監督は成島出、キャストは大沢たかお、玉木宏、竹内結子、吉田栄作、袴田吉.. Weblog: Yuhiの読書日記+α racked: 2009-03-22 23:04