映画評「初春狸御殿」

☆☆★(5点/10点満点中)
1959年日本映画 監督・木村恵吾
ネタバレあり

2004年に鈴木清順が「オペレッタ狸御殿」で蘇らせた和製ミュージカル「狸御殿」シリーズだが、その創案者である木村恵吾監督自身最後(5作目)の「狸御殿」である。

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カチカチ山の泥棒狸(菅井一郎)と娘・お黒(若尾文子)が猟銃の音に驚いて番傘に化けたところに狸御殿の越元たちが逃げて来てにわか雨の中をその化け傘を差して帰った為に、狸御殿はてんやわんやの大騒ぎ。折しも若君・狸吉郎(市川雷蔵)との結婚を嫌がるきぬた姫(若尾二役)が人間界に逃げ出した為、見合いが出来ぬと頭を抱えた家臣たちが瓜二つのお黒を身代りに立て、上手く行っても「若君にお黒に惚れて貰っては困る」と苦労は絶えない。
 一方、出世を狙う泥棒狸は、帰郷し一夜の宿を求めた本物のきぬた姫の暗殺を企むが、悪行を嫌うお黒は姫を逃がす。

ドロンと消えることができるのにあたふたと逃げ回る必要はないだろうとか、変身は得意なのだから誰にでも化けられようとか、そもそもナンセンスを土台にしたファンタジーに一々茶々を入れてもつまらず、替え唄民謡やムード歌謡まで多彩なナンバーが登場する和洋折衷のキャバレー的ミュージカル・レビューを素直に楽しむべし。

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シリーズ初のカラー映画ということで工夫されたであろう、全編に渡って登場するセットや書割が眼にも鮮やかで誠に楽しい。お話も鈴木版と違って極めて単純明快でぐっと陽性、ユーモアもそこはかとなく冴えている。例えば、姫の名前が<たぬき>をひっくり返した<きぬた>だったり、番傘に<大映>という文字が見える楽屋落ちがあったり、或いは「捕らぬたぬきの皮算用」といったたぬき絡みの諺が次々と出で来たり。

星は控えめにしたが、なかなか面白い。残念ながら他作は観ていないが、シリーズのうち一本ぐらい観る価値は十分あるでしょう。

【尻尾を出す】という成句はこんなお話から生まれたのに違いないですな。

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    Excerpt: 若尾文子さん主演の歌謡ミュージカルだ! Weblog: 或る日の出来事 racked: 2015-02-21 22:45