映画評「魔笛」(2006年版)

☆☆★(5点/10点満点中)
2006年イギリス=フランス映画 監督ケネス・ブラナー
ネタバレあり

今までシェークスピアを映像化してそこそこ良かったり平凡だったり、世間で言われる程は評価してこなかったケネス・ブラナーがシェークスピアにも飽きて(笑)今度はモーツァルトに挑戦してみたくなったらしい。彼は「ハムレット」や「恋の骨折り損」で試みたように時代を現代に近い近代に変えるのがお好きで、今回も第一次大戦中の欧州に舞台を変えている。

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兵卒タミーノ(ジョゼフ・カイザー)が毒ガスで気を失ったところを、三人の従軍看護婦が助ける。実は夜の女王(リューボフ・ペトロヴァ)の手下である彼女たちは女王の娘パミーナ(エイミー・カースン)の写真を見せて心をとろかせ、誘拐した悪漢ザラストロ(ルネ・パーペ)から姫を救い出すように仕向け、魔法の笛を授ける。兵卒のパパゲーノ(ベン・デーヴィス)を伴って救出に向かったタミーノは、しかし、ザラストロが悪人ではなく、寧ろ夜の女王こそ悪の権化と気付かされ、ザラストロの課した試練を乗り越えて姫と結ばれる。夜の女王たちは地獄に落とされる。

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音楽的な面は専門家に任せるとして、映画として気になった点を指摘しておきたい。

一つは、オリジナルでは王子だったタミーノが兵卒に変えられた為にパパゲーノが従者ではなく戦友に、恋に落ちるのが王子と王女ではなく兵士と王女になり、物語の流れがぎこちない印象あり。
 また、近代戦争戦時下という設定の為にかなり散文的な場面と、魔法が絡む幻想的な場面とが交互に展開するのも有難くない。序盤姫の写真を見てタミーノが一目惚れする場面などコンピューターを駆使して鮮やかに処理しているが、散文的な戦場場面が大きく足を引っ張っる。
 その一方、三つの試練を克服する場面が手薄なのは原作から由来するものだと思う。

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平和を訴えたいという意図は解るが、第一次大戦下に背景を変えた積極的な意義を見い出せず、結論から言えばマイナス面が目立ってがっかり。

モーツァルトのこの有名なオペラは、イングマル・ベルイマンの映像化が素晴らしかった。オペラには全く疎いので舞台との比較はできないが、物語の展開ぶりがひたすら簡潔で素晴らしいと感じ入ったのである。映像化での比較で言えば、ベルイマン版に程遠い。

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この記事へのコメント

シュエット
2008年08月06日 13:31
>オペラには全く疎いので舞台との比較はできないが、物語の展開ぶりがひたすら簡潔で素晴らしいと感じ入ったのである。映像化での比較で言えば、ベルイマン版に程遠い。
舞台を知っているだけに、げんなりでした。よくまとめたとも思うのですけどね。終わってからもオペラを知っている人たちからはロビーで
結構ブーイング聞きましたね。
ベルイマンは良かった!
あわせてベルイマンの「魔笛」もTBしますね。
オカピー
2008年08月07日 01:47
シュエットさん、こんばんは!

>舞台を知っているだけに
おおっ!
似非インテリの僕とは違いますね(笑)。

>ブーイング
何故にブラナーは第一次大戦に拘るのか。
That is the question!
シュエット
2008年08月08日 16:39
第二次大戦でなくって、第一次大戦なんですよね。
それも途中から戦下での物語りっていうのがどんかに飛んでしまってましたけどね。
夜の女王との戦いを戦争に置き換えたんだろうけれど、まぁ、第一次大戦は「塹壕戦」が主流だったから、冒頭の塹壕を生かしたかったから?なんて単細胞的な発想も出てくるわ(笑)
第一次大戦は帝政時代の終結でもあるわけで、そんな辺りもあるのかな?
しかし作中で戦争についての視点など皆無でしたから、やはりこの設定は無理があったかも。ただ、この原案ってもともとはオペラ側からのものらしいんだけど…。この後ベルイマンの「魔笛」観て本当に堪能しました。
オペラの楽しさを知っ照るんですね。ベルイマンは。でももともとはオペラって庶民にも分かるものとしてあったんですよね。
ブラナーもベルイマンに対抗して新しい解釈とセンスでつくろうとしたんでしょうね。
オカピー
2008年08月09日 00:19
シュエットさん、こんばんは!

>第一次大戦
仰るように、まだ白兵戦の要素(塹壕)があったということもあるのでしょうけどね、余りそれが生かされているわけでもないですし。
「恋の骨折り損」での扱いを考えても、ブラナーは反戦主義者ですね。

>オペラって庶民にも分かるものとしてあったんですよね
シェークスピアにしても日本の歌舞伎にしても大衆演劇でした。それがいつの間にか高級文化になってしまったのは、大衆側の理解力が落ちているという側面もあるのでしょうね。

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