映画評「ボルサリーノ2」

☆☆☆(6点/10点満点中)
1974年フランス=イタリア=西ドイツ映画 監督ジャック・ドレー
ネタバレあり

前作の幕切れでアラン・ドロン扮するロッコ(ロック)・シフレディの行方は<杳として知れない>となっていたのに、続編が作られた。今回も製作はドロン自身で、監督は再びジャック・ドレー。しかし、ジャン=ポール・ベルモンドが演じたフランソワ・カペラの葬式から始まることに象徴されるように、この続編はスター映画の作風が影をひそめ、終始即実的でフィルム・ノワールらしい重苦しいトーンに支配されている。

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ロッコはカペラ暗殺の黒幕がイタリア系のヴォルポーネ兄弟(リカルド・クッチョーラ二役)であると知る。何故か共感を持って接してくれる警察署長(ダニエル・イヴェルネル)からその強敵ぶりを暗に示唆されるがひるまず、まず弟を列車から突き落として殺し、その兄に劇場を爆破されカジノを放火されると、報復の為に単独で殴り込みをかける。
 しかし、格好良いのはそこまでで、敵の落とし穴作戦に文字通り車が嵌って敢えなく囚われの身となり、アルコール漬けにされて町に放り出される。こうした格好悪さはいかにもフランス映画らしく、後で主人公がヴォルポーネ一味と手を組んでいる新しい署長らに同じ手口で報復するのがそこはとなく可笑しい。前作と違って意図的な笑いではなく内面から滲み出る可笑し味である。

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さて、一味により精神病院に送り込まれたロッコは忠実な部下(リオネル・ヴィトラン)が用意した棺に入って抜け出し雌伏三年、彼を慕って寄って来る名うてのギャングたちを集めて猛烈な反撃を開始する。

一言で言えば報復合戦に明け暮れるお話で、中盤にちょっと間が抜けたりのんびりしすぎているところがあるのはドレーらしいと言う以上にフランス犯罪映画に共通する持ち味だが、その一方で終盤における猛烈なバイオレンス描写の畳み掛けには「ゴッドファーザー」で沸き起こった空前絶後のマフィア・ブームに影響された部分があるようだ。

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酔いどれドロンなど見たくないと仰るドロン・ファンの方は終盤のボルサリーノ帽にストライプのスーツ姿に溜飲を下げてください。断然格好良い伊達男ぶりと言うべし。
 また、第一作に続いて時代風俗の再現が本格的で、特に30年代の自動車が大挙出てくるのは自動車マニアにはたまらないだろう。序盤と終盤に二回出てくる蒸気機関車もクラシックな気分を大いに盛り上げる。

しかし、<続く>と出たのに続編は結局作られなかった。或いはロッコの人生が<続く>という意味だったのだろうか。

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この記事へのコメント

2008年08月31日 20:35
こんばんは。「ボルサリーノ」はアラン・ドロン好きの母のお蔭で、中高生の時にTVのノーカット字幕で1も2も観ました!
たしかNHK-BSの深夜枠か何かだったような?
当事、絵を勉強し始めた頃で、かつファッションに関心を持ち始めた年頃でしたので、映画のストーリー以上に主役2人のファッションから小道具まで、どこまでもスタイリッシュでレトロなカッコ良さにすっかり心を奪われた記憶があります。
2本とも楽しめましたが、やっぱり「1」が良かったですね。

映画の完成度やスタイルからすると、同じノワール映画でもドロン主演作は「サムライ」の方が9点献上ですが、「ボルサリーノ」にはどこかB級な香がして、そこが妙に魅力的ですね。
この映画を万が一、今、リメイクしたとしても、主演2人を演じられるような俳優が思い浮かばない・・・というところにベルモンドとドロンの偉大さを感じます!
オカピー
2008年09月01日 01:28
RAYさん、こんばんは。

>中高生の時にTVのノーカット字幕で
この辺にちょっと世代の差を感じますねえ。^^;
僕が映画に目覚めたが丁度70年頃で、ドロンの全盛期です。しかし、映画館で観たのは意外と少ないのが、今思うと残念。

>「サムライ」
ある意味別格で、ドロンが演じた人物像の中でも「太陽がいっぱい」のトム・リプリーと「サムライ」のジェフが一番好きなんです。
それでも「サムライ」は8点。相当厳しく採点しています。

>主演2人を演じられるような俳優が思い浮かばない・・・
これは全世界的な傾向で、アメリカのジョン・ウェイン、日本の三船敏郎などに代わる役者など永久に出てこないのではないかと思いますね。
スターシステムの庇護の下にベールに隠されて育てられた俳優の強みでしょう。スターシステムの良い面と思います。
尤もフランスにスターシステムがあったか定かではないのですが(恥)、もしなかったとしたらドロンやベルモンドはもっと評価されても良いでしょう!
2008年09月13日 15:44
>オカピーさん、こんにちは。
本当に久しぶりにこの「ボルサリーノ2」を観ましたよ。ドロン・ファンとしては、いろいろと多くの発見がありました。
案外と相手方のボスをゴダールに見たてていたのではないかと?ベルモンドのお葬式もヌーヴェル・ヴァーグ(ゴダールやシャブロル)から離れた彼を皮肉っていたようにも思います。
また、ドロンの再生・復活のテーマも後のゴダール=ドロンの「ヌーヴェルヴァーグ」のテーマにも関係してくるような。
BGMもジャズではなくシャンソン、こんなところも、やっぱルイ・マルやロジェ・ヴァデムじゃなくデュヴィヴィエ&ギャバンですよね。
そして、アメリカを目指して出航するラスト・シークエンスから次作「ゾロ」を想起します。「ゾロ」はフランス・イタリア合作映画でしたが、恐らく当時の映画化権はハリウッドですよね。
「ゾロ」の次もクラシックな刑事役でトランティニャンを迎え入れているし。
でも、ドロンの人気も「ゾロ」以降、このあたりから低迷します。
2008年09月13日 15:45
>続き
特有の「死」への美学からも脱皮しちゃってます。この3作後の「ル・ジタン」でも野垂れ死にするラストを放浪・逃亡に変えてますし・・・、転換期のドロン、わたしはこのころにファンになったんで、いろいろな思いがこの続編のほうに湧き上ってきてしまいますよ。
では、また。
オカピー
2008年09月14日 01:41
トムさん、こんばんは。

トムさんは、僕の「フィルム・ノワールらしい重苦しいトーン」という表現が些か不満ではないですか?(笑)
フィルム・ノワールと表現すると、メルヴィルなどの作品も入ってしまいますし、ちょっと方向性が違いますからね。
しかし、「暗黒街映画」という表現もぴったし来ないし・・・

「ハーフ・ア・チャンス」では当方も色々あることないこと考えましたが、トムさんの分析も凄いことになっていますね。^^
最後のアメリカへの出航では鈍い僕にも多少引っかかるところがありましたが。

>ドロンの人気も・・・特有の「死」への美学からも脱皮
「死」への美学が人気の秘密だったと、言えないこともない?
トム(Tom5k)
2008年09月14日 12:13
オカピーさん、こんにちは。
>フィルム・ノワールらしい重苦しいトーン
フランス映画のフィルム・ノワールの定義も難しいですよね。アクション映画やギャング映画も含めてハリウッド40年代より広い定義で良いんだと思っています。ただフランス映画ではサスペンスが別体系になっていてハリウッド40年代は「イブの総て」や「サンセット大通り」なんかも含みますものね。ところがクレマンとの「危険がいっぱい」はフランスではフィルム・ノワールとは言わないような・・・。
>トムさんの分析も凄いことに・・・
我ながらあほかという感じですが、ドロンがいろんな意味でハリウッドにこだわっていたことは間違いないかな?当初「ボルサリーノ3」の企画もあったそうです。実現していたらアメリカが舞台だったのは間違いないでしょうね。
「ゾロ」も5年後の「エアポート80」もその当時のこだわりだったような?
>「死」への美学
70年代って「あしたのジョー」、「高倉健」、そして「アラン・ドロン」?
では、また。
オカピー
2008年09月15日 01:50
トムさん、こんばんは。

>「危険がいっぱい」はフランスではフィルム・ノワールとは言わないような・・・
今ならコン・ゲーム映画と言われるでしょうね。
あの作品は基本が面白いので、アメリカ以外の国の誰か再映画化しないかな。市川崑辺りならうまく・・・

>「ボルサリーノ3」
舞台はアメリカでしょうね。
ただ、あの時代のギャングを描いたアメリカ映画は腐るほどあるので、企画としては魅力薄だったかもしれません。

>「あしたのジョー」
第1シリーズは最後まで見ましたが、この辺りで僕のTVアニメ人生は終わり。専ら興味は映画に占められるようになりました。
2008年11月06日 01:25
オカピーさん、この間は取り急ぎ失礼しました。
いま、ほっと一息、ようやく「ボルサリーノ2」アップしたので、TBします。
こちらのオカピーさんとのコメントを基本にしたので、目新しい内容はないですけれどアップしました。
では、また。
オカピー
2008年11月06日 02:21
トムさん、こんばんは。

多少は時間が取れるようになりましたか。

>目新しい内容はないですけれど
事前に予習していたおかげ(笑)で、すんなりと読むことができました。

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