映画評「ロッキー・ザ・ファイナル」

☆☆☆★(7点/10点満点中)
2006年アメリカ映画 監督シルヴェスター・スタローン
ネタバレあり

「ダイ・ハード」シリーズが復活した時も多少は驚いたものの、「ロッキー」の新作が出ると聞いた時は腰を抜かした。何しろシルヴェスター・スタローンは製作当時60にならんとする年齢である。50を過ぎたばかりのブルース・ウィリスとは比較にならないし、スパンも16年と「ダイ・ハード」の12年より長い。調子づいて「ランボー」の新作にまで出演したところを見ると、開き直ってチャールズ・ブロンスンの境地を行くことにでもしたと見える。

一方、製作の背景に思いを馳せると、ハリウッド映画の深刻なネタ不足に行き着く。リメイクやシリーズもののオン・パレードの今、新しいシリーズでも間に合わなくなったので、古いおもちゃ箱を掻き回し次々と繰り出して来たのであろう。
 それはともかく、原題はRocky Balboaと極めてシンプルで、第1作のクラシックな気分が蘇ってくる。

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愛妻エイドリアン(タリア・シャイア)を失って数年、彼女の名を使ったレストランのオーナーとして客に武勇談を語る日々を送るロッキーは喪失感に責め苦しめられ、一介のボクサーとしてリングに上ることを決意してライセンス再交付に漕ぎ着ける。
 方や無敵過ぎて人気がない現役チャンピオンのメイソン・ディクソン(アントニオ・ターヴァー)側が行き詰まりを打破すべく、復活したかつての王者とエキシビション・マッチを企画し、遂に実現の運びとなる。

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実年齢60のスタローンをリングに立たせるお話を成立させる為に、強いが人気のない現チャンプと年を取ったが人気絶大の元チャンプをエキシビションで格闘させるというアイデアが上手い。

これに「ロッキーV」で出てきた息子ロバート“ロッキー・ジュニア”を絡め、些か説教臭い台詞が多くなっているが、故人となった愛妻や義兄、元不良娘の母子を交えて豊かに醸成した人情によりそうした臭いをうまく中和しているのも宜しい。人情を基調にした第一作を踏襲した作風の効果である。人の感情を沈潜させるロングショットの使い方を観れば、如何にスタローンがジョン・G・アヴィルドセンの演出を勉強したか伺えよう。

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彼はディクソンと戦ったのではない。自分を打ちのめそうとする人生と戦ったのである・・・そう思って元気づけられる老若男女の方々も少なくないはずで、そこに本作の価値を見出すのは間違いではない。芸術ファンを満足させる作品だけが良い映画にあらず。

これで本当に見納めになりますかな。

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この記事へのコメント

2008年07月12日 00:53
こんばんは。
>自分を打ちのめそうとする人生と戦った
そうですね。
そして、S・スタローン自身の戦いでもあったと思います。
その点も含め、予想外に感動してしまいました。
オカピー
2008年07月12日 22:28
hashさん、こんばんは!

予想以上に良かったですね。
教訓臭い台詞が立て続けに出るのには些か鼻白むところがある一方で、人情を上手く絡めて巧妙に作られた、ある意味大変プロフェッショナルな出来栄えでしたよね。
2008年07月15日 09:15
 こんにちは!
 劇場で観たときには否定的に観てしまいましたが、WOWOWで放送されたときに再度見たときには考えが変わりました。スタローンが原点に戻ってロッキーを見つめ直している感じに好感が持ってますし、自身のキャリアを総決算している風でもあり、自分を見捨てかけたハリウッドへのリベンジのようにも見えました。
 
 バート・ヤングとの絡みも良く、ランボー・シリーズや勘違いしているロッキー5とは違う家族との人情にスポットを当てたのも正解でしたね。

 ロッキー、そしてランボーのお葬式に参加できたのは良かったのかもしれません。あのまま両シリーズの完結編を作る機会も与えられずに老いてしまえば、元スターという汚名とともに生きていかねばなりませんでした。最後の華を咲かせてくれました。

 上映時間が100弱くらいと、少し短い気もしましたが、押し切っていくにはあれくらいの時間で良いのでしょうね。ではまた!
 
オカピー
2008年07月15日 23:21
用心棒さん、こんばんは!

 僕は根が素直だから(笑)、構図的に単純化された「ロッキー」シリーズ第2作以降も深読みせずに純粋に楽しんだ記憶がありますが、こちらは第1作の感覚が見事に蘇っていて、大変嬉しかったですね。
 格別に凝ってはいないカメラワークも、ロングショットを多く交えて、味わい深いものがある。勘ですが、アヴィルドセンの第1作での手法を相当研究したのではないかな。

>ハリウッドへのリベンジ
 僕はハリウッドというか、世の中の要請で作ったのではないかと思っていましたが、内容から鑑みて、用心棒さんのような推理も成り立つような気がします。
 とにかく、結果は大成功でした。
zebra
2016年05月31日 07:09
オカピーさん お久しぶりです。
DVDで見ましたが。いろいろな登場人物の それぞれのおかれた状況から見れる作品でした。
まず チャンピオンとして君臨した日々も今は昔、妻のエイドリアンも亡くなり レストランのオーナーとして細々とした日々を送るロッキー。
思い出の場所に何度も来るのもエイドリアンを愛してたからにほかならない。義理の兄ポーリーとの言い合いでも

 ポーリー「オレは あいつには ひどいアニキだった こんな思い出・・・オレには ゴミだ。」
 ロッキー「愛するエイドリアンとの思い出はオレにとっては宝だ。」

 その義理の兄ポーリーも 長年つとめてきた精肉店から とうとう解雇されてしまい・・・ロッキーの店で やり場のない怒りと悲しみをぶつけていた。

<些か説教臭い台詞が多くなっているが>
そうなんですよね。父親の”バルボア”の名で 会社でさえない日々を過ごしてた息子ともギクシャク気味。
そんな息子には ”自分のふがいなさを 人のせいにするな、それは卑怯者のすることだ”
 それだけじゃない、対戦相手で 現役の若いチャンピオン メイソンにしても 秒殺KOばかりで 観客からのブーイングばかりで 実力があるのに不遇な扱いばかりで いら立ちの日々を送り  ロッキーとは違う形で 行き詰まりの思いを抱えていた。

<強いが人気のない現チャンプと年を取ったが人気絶大の元チャンプをエキシビションで格闘させるというアイデアが上手い。>
 このエキシビジョンマッチは 世間から 茶番のお遊びだろといわれて設定されたのが きっかけたけども  ロッキーはもちろん 家族たち それに 対戦相手のメイソンにとって 戦わないと 人生の転機を迎えれなかったと思ってます。 
オカピー
2016年05月31日 21:04
zebraさん、こんにちは。

シルヴェスター・スタローンは、なかなか才能がありますよね。
演技力もライバル視されるシュワちゃんとは比較にならないと思っています。
「ロッキー」シリーズの中でも僕は第1作に続いて、その影響の強いこの第2作が好きですね。

>妻のエイドリアンも亡くなり
タリア・シャイアが出演したがらなかったのかあ(笑)。エイドリアン、死んでしまいましたね。
蟷螂の斧
2020年09月13日 10:54
こんにちは。この映画が公開されたのは、もう14年も前なんですね。第6作が製作されると聞いた時は冗談かと思いました。
でも脚本家としてのスタローンはやっぱり大したもんです。愛妻エイドリアンが既に他界と言う設定が凄い!タリア・シャイアは「回想場面でもいいから出演させて欲しい」と頼んだけど、スタローンは断ったそうです。

元不良娘マリー の存在も良かったです。彼女とロッキーが良き友人として付き合っていくのも好感が持てました。マリーを演じたジェラルディン・ヒューズ。北アイルランドのベルファストにある労働者階級の家族の出身。舞台の演劇でも活躍しているそうです。
オカピー
2020年09月13日 20:30
蟷螂の斧さん、こんにちは。

>でも脚本家としてのスタローンはやっぱり大したもんです。

演出も立派なものです。ジョン・G・アヴィルドセンの影響は大でありますけど。ショット感覚がなかなか良い。

>タリア・シャイアは「回想場面でもいいから出演させて欲しい」と頼んだ

僕の想像とはまるで逆ですね。意外な感じがしました。

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