映画評「モーパッサン・ブラン:首飾り」

☆☆★(5点/10点満点中)
2007年フランス映画 監督クロード・シャブロル
ネタバレあり

フランスのTVシリーズ「モーパッサンの家」の第1回放映分第2話。
 監督はジャン=リュック・ゴダール、フランソワ・トリュフォーに次ぐヌーヴェルヴァーグの旗手的存在だったクロード・シャブロルだが、近年は「ボヴァリー夫人」などクラシックなお話を正攻法に描くスタイルが目立つ。

「首飾り」はモーパッサンの短編の中でも古く日本で紹介された著名作品で、僕も小学6年の時にこの作品を読んで相当強いショックを受けた。勿論結末にである。ヒロインのマチルド・ロワゼルの名もよく憶えているし、僕のフランス文学好きはこの作品から始まったのかもしれない。

マチルド(セシル・ド・フランス)は下級官吏の夫シャルル(トマ・シャブロル)の働きが認められて大臣も見えるパーティーに招待されるが、饗宴にふさわしいお洒落ができない。夫の資金で何とかドレスは間に合わせたものの豪華な首飾りがないので、恥を忍んで同級生ジャンヌから借りる。
 が、パーティーが終わり家に帰った時首飾りの紛失に気付き、急遽借金して作らせて返品、その後10年間赤貧洗うがごとき生活を続けてやっと返済する。数日後彼女は町で見かけたジャンヌに声を掛けるが、相手は無視する。それもそのはずで、マチルドはもはや老婆同様なのである。その理由を知ったジャンヌが答えて曰く、「可哀想に。あの首飾りは偽物だったのよ」と。

原作ではマチルドは単に老け込んだだけでなく肉体的に鍛えられ精神的にも荒くれた世話女房的な女性になったという説明があり、これがひどく想像をかき立てて全く切なくなったものだが、ドラマでは単に10年という歳月以上に年を取った彼女の様子を表現しているだけである。しかも、映像で経年を示さざるを得ない以上、原作のように若い可憐な女性が突然不潔な老婆になって現れたが如きショックを感じさせることはできない。

とは言え、幕切れの残酷さには変わりがなく、身分不相応の夢を追うべからずといった戒め風のお話ではあるが、やはりマチルドへの同情は禁じえないのである。

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この記事へのコメント

2008年06月16日 09:38
TBとコメント有難うございます。モーパッサンは恥ずかしながら、全然読んだことがありません。この作品で、原作も読んでみたくなりました。しかし…最後のオチがなんとも残酷な話です。現状の幸せに満足せず、果てしない欲を持ち続けてしまうとこうなってしまうという戒めが描かれていて、自分も反省される思いがしました^^;)。
オカピー
2008年06月17日 02:04
ぶーすかさん、こんばんは!

>モーパッサンは恥ずかしながら、全然読んだことがありません
ええっ!(と大げさに驚く)

冗談はともかく、モーパッサンは短編の名手などとも言われていますが、僕は長編が好きで、「女の一生」「ベラミ」「ピエールとジャン」「死の如く強し」では堪能しましたねえ。
「首飾り」は小学生の時に偶然読んだのですが、純情な小学生にはショックが大きかったです。人生って残酷なものだな、などと思いましたものですよ。
それ以来暫くフランス文学を中心に読んでいたわけです。
モカ
2019年11月05日 16:20
こんにちは。

このシリーズは期待値が高かったのでちょっとがっくりきた記憶があります。 なんだか真面目に作りすぎ?

「人生は残酷」の入り口はモーパッサンにゾラでしょうか・・・
「首飾り」もですが「脂肪の塊」! なんてタイトルじゃい!
 
オカピー
2019年11月05日 21:47
モカさん、こんにちは。

>「人生は残酷」の入り口はモーパッサンにゾラでしょうか・・・
僕の印象ではモーパッサンは“残酷”で、ゾラは“厳しい”。似たようなものですが(笑)。少し前のバルザックも“残酷派”ですね。
モカ
2019年11月06日 12:02
こんにちは。

バルザックを忘れてましたね。 仰せの通りでございます。
ゴリオ爺、可哀そうすぎです。バルザックは何だか時代掛かってる感じがして読みにくかったような記憶があります。ゴリオ爺しか読んでませんが・・・
「マチルド」といえば、ハリー・ベラフォンテじゃなくて(笑、
ベラフォンテのは「マティルダ」)
「赤と黒」を思い出します。 バルザックよりはスタンダールですね。比べちゃいかんか・・・
まぁ、十代でモーパッサンやらゾラを読んで架空世界で苦労しておくのも良かったかも? でも現実に対処する力はあんまりつかなかったかなぁ。 
とりあえず大学入ってラディゲを読んで色んな意味でホッとしま
したよ。
でも私には暗い本を呼び込む力があるみたいで、その後も暗いお話との縁が切れません。 好きなんでしょうね。
オカピー
2019年11月06日 21:25
モカさん、こんにちは。

>バルザックは何だか時代掛かってる感じ
本論に入る前の助走が長い感じがしますね。しかし、ゾラ、モーパッサン、スタンダールと並んで好きな作家です。人生に対して厳粛な気持ちを抱かせてくれる作家です。

>「赤と黒」を思い出します。
好きでしたなあ。高校の時以来読み直していませんが。
「恋愛論」も面白かったなあ。

>でも現実に対処する力はあんまりつかなかったかなぁ。
そんなものでしょうねえ。僕も2009から2014年まで5年間辛かった時期に同じようなことを思いましたよ。

>でも私には暗い本を呼び込む力があるみたい
あはは。そういう言い方も良いですね。
そう言えば、今まで紹介して貰った本はそれが伺えます。

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