映画評「300<スリー・ハンドレッド>」

☆☆☆(6点/10点満点中)
2007年アメリカ映画 監督ザック・スナイダー
ネタバレあり

シン・シティ」で一般映画ファンの間でも一躍有名になったフランク・ミラー原作のグラフィック・ノベルを若手ザック・スナイダーが映像化した歴史スペクタクルで、素材は紀元前5世紀のペルシャ戦争の中でも有名な“テルモピュライの戦い”である。

ペルシャのクセルクセス一世の軍勢に攻め込まれたギリシャ連合軍のうちスパルタ王レオニダス(ジェラード・バトラー)率いる重装歩兵部隊300人だけが、託宣者の言葉に逆らって、総勢100万人と言われるペルシャ軍に戦いを挑む。
 陽動作戦で数万人から成る敵の先遣隊を狭隘な山道に導いて全滅させ、翌日も奮闘するが、やがて兵に徴用してもらえなかったせむし男の裏切りにより後ろに回られて全滅する。

というのが本作が描く部分で、史実としては、その後レオニダスの勇気に影響されて士気の上がったギリシャ連合軍がサラミス海戦で勝利し、約30年後半世紀近くに及んだペルシャ戦争はギリシャの勝利に終わるのである。

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僕はナレーションは嫌いである。スローモーションをアクションの軸にする作品は嫌いである。CGに頼る実写映画は嫌いである。個人的趣味の問題ではなく、映画をつまらなくする可能性が高い要素だからである。
 つまり、この作品は僕の考える三大ネガティヴ要素が目いっぱい詰まった作品なのだ。が、だからと言って一方的に貶すつもりはない。

スナイダーが原作の絵の質感をそのまま動画にしようとした狙いはよく理解でき、上手く実現している。実写部分のコントラストを極端に変化させてざらついた劇画的な質感に仕上げ、そこに同じような質感のCGを合成させているので、映像の一体感はこれまで作られた実写+CGの作品より遙かに高い。今後成立するにちがいない<動くグラフィック・ノベル>なるジャンルの嚆矢となるであろう。新しい映像美と言って良く、少なくとも現在のフルCGではここまで見せることはできまい。

その一方で、かくもCG的であるならわざわざべらぼうに高いギャラを払って有名俳優を使う必要性に疑問が湧く。しかし、本作の技術的成功は或いは実写映画ファンにとって僥倖なのかもしれない。臨界点を超えた時にこうした【何ちゃって実写映画】はフルCGの方向に向かい、完全実写映画と差別化される日が来るような気がするのである。

画像

僕は歴史スペクタクルは好きだが、本作は物語の面で甚だ物足りない。両軍の位置関係等を示す環境描写や地理的関係を示す説明が全くなく、権謀術数や作戦面の面白さが基本的に味わえないからで、ひたすらアクションそのものに頼った形。それもスピードの変化により見せる部分が多く、戦闘を踊りのように見せる狙いがあったようなスローモーションの使用に一定の興味を覚えるものの、踊りはミュージカルで観せて貰えば結構でござるよ。

ナレーションで滔々と説かれる勇気を軸とする精神性はテーマとしては皮相で、映像ならともかくナレーションで強調されると鼻白む。

総じて、数年前に再鑑賞した「エル・シド」のようには興奮できない。鍛錬された実技と選ばれたロケ地と精巧に作られたセットをカメラを介して統合し編集することでそれ自身固有の素晴らしさを数段高めていく境地に、CGとコンピューターによる合成は到底及ばないという印象を覚えるのである。

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この記事へのコメント

2008年05月25日 03:40
>今後成立するにちがいない<動くグラフィック・ノベル>なるジャンルの嚆矢となるであろう。

そうかもしれないですね。
僕は、この作品の教訓めいたナレーションの部分は嫌いですが、ポストプロダクションの扱い方は、楽しめました。
肉体派俳優大集合も、原作がアメコミだから、かえって大袈裟で面白いなあ、と(笑)
2008年05月25日 21:20
これも、鑑賞したものの記事にしていない作品。娯楽としてかなり面白いし、オカピーさんがおっしゃるとおり、新しいジャンルにもなりうる高品質な作品だと思いますが、映画としての感動とちょっと違うような気がする。あくまでもこれは、漫画だと思って割り切ってみたほうがわかりやすいかもせませんね。ネガティブな意味ではありません。
シュエット
2008年05月25日 22:45
これ劇場で観たときは300」映像は確かに質感など良くってそんな映像に見惚れて、興奮したんだけど…記事も書いたけど恥ずかしいからTBなし!(笑)
そして「エル・シド」!
私は数ヶ月まえにCSで初めて観ました。
あの海岸での戦闘シーン。あれだけの人間と馬と…これ観たときは、やはり実写の迫力。向き合って対峙したシーンなんて本当に興奮しました。
ベン・ハーにしろ本作にしろ、他にも…。少々荒っぽい映像でも、映像に感情というか血肉が感じられるなってつくづく思う。
といって、チャン・イーモウ作品なんか観ると、人数だけそろえればいいかって言うとそうでもないんですよね。確かに迫力は出るけど、感動とは違うんですね。「エル・シド」などは言葉でいわなくても人間の尊厳といった重みが感じられる。人間に対するアプローチとか、描く視点が深いのか…。何が違うのかなって思う。

オカピー
2008年05月26日 00:38
kimion20002000さん、こんばんは!

>ナレーションの部分は嫌いです
ですよねえ。
本作の場合説教臭いというのがさらにつきますが、最近のサスペンスやSFのナレーションは、説明的で本当に嫌いです。あれはゲームにおける設定の説明部分に相当するんでしょうね。
昔の腕の良い監督なら数分であざやかに映像と僅かな台詞だけで描いてしまうであろうと思うと、情けなくなって来ます。

>ポストプロダクション
作っている時がまた大変だったでしょうね。役者はブルーバックの前で監督に言われるまま演技しなければならない。これはSFX時代も同じですが、本作の場合殆どそれでしょうからね。

一般的に、映画はバランスであると考えると、この作品は歴史ものとして物語が弱い。僕はその辺りが不満でしたね。作戦と言えば、あの裏切り者が間道を教えるくらいですから。
オカピー
2008年05月26日 00:39
FROSTさん、こんばんは!

>映画としての感動とちょっと違うような気がする。あくまでもこれは、漫画だと思って割り切ってみたほうがわかりやすい

全くその通りと思います。
映画としては不満だから星は<まあまあ>程度に留め、映画としての新しいジャンルというより、新しいサブカルチャーになっていくのではないか、と愚生は考えたりもしますね。

いや、映画としてはネガティヴに判断しても良いでしょう(笑)。
オカピー
2008年05月26日 00:54
シュエットさん、こんばんは!

シュエットさんの感動は、恐らくFROSTさんが感じられたことだと思いますよ。
僕は映画としては感激できませんでしたが、新しいサブカルチャーが生まれるのではないかとは思いましたね。それが真の実写映画の復権となればこれほど喜ばしいことはないです。

>何が違うのかなって
持論ですが、CG(VFX)は作家たちをしてCG映像の為に話を考えさせる。CGが先にある(ことが多い)。SFXではそういう発想は基本的に起こらない。SFXは場面の為に<利用>される。
勿論それだけではないですが、その差が古い映画ファンに与える印象の差になっていると思います。
「エル・シド」に関して言えば、チャールトン・ヘストンという稀有なスペクタクル役者の存在もあるでしょうね。彼の晩年は嫌いですが。
豆酢
2008年05月27日 11:15
どうも~。
ご無沙汰しております、プロフェッサー。

実はわたくしめ、勇んでこいつを劇場まで観にいったんざんすよ。
するとどうでしょう。不思議なことに、映画開始20分以降の記憶が抜け落ちているのです!!なぜ?私は映画途中で、宇宙人にでも攫われてしまったのでしょうか?!

…正解は、『寝た』でした(・∀・)。

そうなんです、寝たんです私。熟睡でした。気がついたら場内が明るくなっていて、お客がぞろぞろ退出するところでした。そのときには、“上映中になんぞ事故でもあったのか?!”と焦ったのですが、事故っていたのは他ならぬ自分自身でしたよ。

“CG偏重映画”や、“まずはCGありき映画”が、実写映画と別の潮流を作って、早いとこ別ジャンルを確立して欲しいものですね。
オカピー
2008年05月28日 00:48
豆酢さん、こんばんは!

そりゃ不思議な事件でしたねえ(笑)。
ボンビーなオカピーは勿体ないので映画館では少ししか眠りません(笑)が、TVではよくやりました。最近はかなり真面目に観ておりますですよ。ちょっとくらいはやりますけどね。

本作も試みとしては悪くないでしょうが、基本は“CGありき”ですから、眠くもなりますよね。
そうですか、豆酢さんは同意でございますか。^^)v

CGそのものえはなく、使い方が嫌いなのです。背景のCGは、昔の書割りと大して変わらないわけで、何を嫌う必要がありましょうや。

要は動く部分ですよ。
CGは基本的に、作者をして“CGありき”にしやすいんですよね。人間は誘惑に弱い生き物ですから。
その何が問題なのか言えば、やはり話の練り不足に繋がることです。SFXが場面を表現する為に使われるのと根本的に違うわけです。カメラを通しませんので、工夫が現場からなくなっていく。
面白い映画ができにくいんです、“CGありき”の実写映画では。

早く独立したサブカルチャーになれば、僕らみたいな人種は楽になりましょう。

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