映画評「unknown/アンノウン」

☆☆☆(6点/10点満点中)
2006年アメリカ映画 監督サイモン・ブランド
ネタバレあり

新人のオンパレードの昨今、またまたお初になるサイモン・ブランドという人が作ったサスペンスである。

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出だしは「ソウ」か「CUBE」といったところで、5人の男たちが記憶のないまま、廃棄され密閉された工場に閉じ込められている。
 最初に目覚めたジム・カヴィーゼルはかかってきた電話に出て適当に応対する。残る4人は椅子に縛られた男ジョー・パントリアーノ、銃撃され手錠で宙吊りになっている男ジェレミー・シストー、作業着の男バリー・ペッパー、鼻が折れた男グレッグ・キニアーで、やがて残されていた新聞からどうも実業家と経理担当二人の誘拐が絡んだものと判明するが、誰が被害者で誰が犯人グループの一味なのか解らない為に互いに疑心暗鬼になる。

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という趣向で、記憶喪失の原因が特殊ガスによるという設定は些か細工の為の細工という印象が強いものの、どなたかのように「ガスの比重によって云々かんぬん」などと言っても仕方なく、素直にそういうものと思って観るほうが賢い。そういう過度に科学者的な見方は、信心深い人の宗教絡みの映画に対するがごとく、本質を見誤らせる。

外部の描写が入ることでこの作品のサスペンスは二重構造になっている。
 内部における互いに疑心暗鬼になる心理サスペンス、外部における官憲が主犯二人に接近していく一般的サスペンスである。5人全員が自分の正体が解らない為に主犯が帰還する前に工場から抜け出したいと思い始めることで、この二重のサスペンスは時限サスペンスに統合されていく・・・のだが、描写が弱い外部の部分は環境説明程度の役しか果たさず、構成と描写次第では重量級サスペンスも可能であったものが軽量級に終わったという感は否めない。

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また、夫々が記憶回復する模様を主観ショットで表現しているが、本来の主観ショットなら思い出す本人の顔は映らないわけで、この辺は解り易さよりショットの扱いに正確性を期したいところである。

どんでん返しものなので終盤の詳細は言わないでおくが、「ソウ」や「CUBE」のように背景が観念的なものでなく一般犯罪なので、幕切れは曖昧さがなくすっきりしている。

この監督、有名ブランドになるか、全くunknownだね。

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この記事へのコメント

シュエット
2008年05月16日 20:07
TBありがとうございます。そろそろP様もレビューされるんではと思ってました。これね、昨今、「SAW」が当たってからか、えぐい作品が多い中で、出ている役者みても正当派サスペンスかな?って気もして期待して観たんですけどね…。
>構成と描写次第では重量級サスペンスも可能であったものが軽量級に終わったという感は否めない。
ですよね。ラストのどんでん返しも面白い要素だけど、
>一般犯罪なので、幕切れは曖昧さがなくすっきりしている。
すっきりし過ぎです(笑)
監督がプロモーション・フィルムを手がけていると知り、納得してしまった。発想は面白いけど、突っ込み不足だし、もう少し人間心理をひねってほしかったです。
オカピー
2008年05月17日 02:25
シュエットさん、こちらこそ有難うございます。

>すっきりし過ぎです(笑)
この監督さん、正直なんじゃないでしょうか。
ハッタリ、誤魔化し、マヤカシが多い中で、終盤の展開はストレートですから。結構好感を持ったりしましてね(笑)。
今回は軽量級ですが、この類は良い脚本を得ると、凄い作品を作りそうですよ。
2008年05月29日 00:19
こんばんは。
>本来の主観ショットなら思い出す本人の顔は映らない
私はこういうところには全然気付かないので、オカピーさんのブログを読んでは、感心しています。
>この監督、有名ブランドになるか、全くunknownだね。
次回作が重要ですね。
オカピー
2008年05月29日 03:43
hashさん、こんばんは!

>主観ショット
サスペンスでは主観と客観の組み合わせが文法的に大事なので、気を付けてみているせいですね。
特に最近の作品では出鱈目が多いせいで、目を皿にして見ておりますよ(笑)。

>ブランド
洒落も笑ってくださいませ。^^

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