映画評「輝ける女たち」

☆☆★(5点/10点満点中)
2006年フランス映画 監督ティエリー・クリファ
ネタバレあり

「8人の女たち」を意識している邦題が喚起するイメージとは違う内容である。

キャバレーを経営していた老人が自殺、その遺言を確認する為に、老人に引き取られて可愛がられたマジシャンのジェラール・ランヴァン、その娘ジェラルディン・ペラス、息子ミヒャエル・コーエン、娘の母親ミウ=ミウが一堂に集まる。という展開は「愛する者よ、列車に乗れ」と「ブッシュ・ド・ノエル」に似ている。

と思ったら「ブッシュ・ド・ノエル」のクリストファー・トンプソン(ジェラルディンの夫君)が本作の共同執筆者で、「ブッシュ」の脚本を共同で書いた彼の母親ダニエル・トンプソンは「愛する者よ」を共同執筆している。さもありなん。

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ランヴァンと元内妻ミウ=ミウはキャバレーに関する全ての権利を子供たちに持って行かれ当てが外れてがっかり、しかも、子供達はキャバレーを続ける気がないので益々落ち込むが、彼は突然現れた息子の母親で元妻カトリーヌ・ドヌーヴと<焼けぼっくいには火が付きやすい>状況になって慰めされる。
 かくしてランヴァンが現在の恋人エマニュエル・べアールの後を追って渡米する気になる一方、母親の秘められた過去を知った後息子は店の続投を決意する。

邦題から主体のように思われる女性陣は、格好を付けながらも真の自立ができない男性二人に、知らず人生行路の道筋を作ってあげる先導者であり、男たちを反映する鏡のような存在である。配給会社の担当者が本来支流である彼女たちを本流のように扱って「輝ける女たち」とタイトルに付けたくなったのもむべなるかな。
 厳密に言えば、息子も先導者で、ランヴァンは息子がキャバレーを維持することを決意したのを見極めてやっと自立できる、というお話である。

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キャバレーの大人っぽい耽美的な雰囲気は良い。人間模様の紡ぎ方に味わいもある。しかし、僕には不満の方が大きく残った。

トンプソン母子が書き上げた旧作と同じような顔ぶれ、似たような物語ということもあるが、一番問題なのは息子が店の続投を決意するのが【デウス・エクス・マキナ】のように感じられてしまうことである。ここがピンと来ないと、主役たるランヴァンの後姿を延々と捉えるラスト・シーンの余韻も響き切らない。
 精密に観ていけばそのヒントになる言動や描写があったのに、洪水のような台詞に寧ろ集中力を失い僕が見落としてしまったに違いない。きちんと観てきた人からは「怪しからん」と文句を言われるだろうが、そういう結果をもたらすところに台詞劇としての面白味に頼った構成の脆弱さを感じてしまうのも事実である。

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ジェラルディンの歌う「ローズ」フランス語版やエマニュエルが歌う歌曲にはいかにもシャンソンと言った気の利いたものが多く良いムード。

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この記事へのコメント

シュエット
2008年04月24日 14:05
やった~!一番のり。ってこれって私ぐらいかな?
結局ね、私もこの作品、みていてそれほど感動とかってなかったんですよ。だから記事にも書いたように、椅子にゆっくりもたれて…って言う感想にとめたんだけど、男性とは違って、女性ってウィンドウ・ショッピングだけで大いに楽しめる動物なんですよね。これは観ていてこれはきっとそういう類の映画だなって思ったことは確か。フィーリングで楽しませてもらった。だからリラックスして楽しみましょうと、楽しんだところをとり上げて。それにねブログ始めたころって、そんなに自分の鑑賞眼って自自信なかったし、ちょっと謙虚に持ち上げて…今では、開き直ってズケズケ書いてますけどね(笑)、その分、ちっと風も感じるけど。
>ジェラルディンの歌う「ローズ」
こんなんも良かったの!
台詞の多さって感じなかったから。あまり作品そのもの見てなかったのかな?
で、思ったんですけど、オープニング作品って打ち上げ花火みたいなもん?って思いもしたわ。
シュエット
2008年04月24日 14:11
>「愛する者よ、列車に乗れ」と「ブッシュ・ド・ノエル」に似ている。
そうか、2作品とも観ていますし、よく似たパターンだわって思ったけど、ここまでチェックしなかった。結局愛する者よ、列車に乗れ」から着てるんだ。愛するものの原案はパトリス・シェローでしょう。
なんか、堂々巡りの使い回し。やめてくれ!(笑)ちなみに、また好みは別れるかもしれないけど「愛する者よ~」はなんか好きなんです。シェロー作品の中で案外と一番好きかも。

2008年04月24日 18:55
>台詞劇としての面白味に頼った構成の脆弱さを

全く、プロフェッサーに同感。

人物がごっちゃり入れ替わり立ち代り
出てきますが、だいたいが、その台詞も
全然“大したこと、言ってない”のよ~(笑)

耳に残る言葉のないまま
ぶっつ、ぶっつ、切れたように
次のシーンへ、行っちゃう。

みっちみっち、隙間無く詰めた
おかずでいっぱいの見場だけいい
“幕の内弁当”映画って言ったら
怒られるかな~(--)^^

お腹はふくれるかもしれませんが
味わいに欠ける・・・

>エマニュエルが歌う歌曲

彼女が歌ったのはジャズのスタンダード
ナンバーを仏語にしたものがほとんど。
歌うシーンが多いので最初はオファーを
断ったエマニュエル・ベアール。
かなりレッスンしたみたいですが
ベイシンガーやファイファーなどから
比べると、ムードのみ先行で
歌は、イマイチ・・・ですね~(--)^^
(「8人の女たち」の時よりは
まだ、聴けましたが^^)
オカピー
2008年04月25日 01:51
シュエットさん、こんばんは!

>台詞
絶対量としては必ずしも多くないと思いますが、映像がムードに流れるので相対的にそう感じさせてしまうのでしょう。
脚本家二人(トンプソンと監督自身)が決めようと思って格好良いのを書いたつもりのに、viva jijiさんも仰るように、その割に実がない。

>堂々巡りの使い回し。やめてくれ!
あははは。僕もそう思います(笑)。
私めは、「ブッシュ・ド・ノエル」の軽妙さが好きです。「愛する者よ」はちょっとどろどろした感じだったなあ。

歌は割合良いと思いましたが、採点は厳しいままでした。^^;
オカピー
2008年04月25日 02:00
viva jijiさん、こんばんは!

いやあ、ブログで幾つか当たりましたら、結構評判宜しいので困ったなと思いましたが、いや、そう仰って戴いて安心致しました。
強い味方になってくれました。^^)v

>幕の内弁当
なるほどね。ぼくにゃあこういう表現は絶対できまへん!

>ジャズのスタンダード
不思議とフランス語にすると、シャンソンそのものになってしまうんですなあ。

>エマニュエル・・・歌は、イマイチ
そう思いますです。
でも、下手ウマということにしておいでください。<(_ _)>

キム・ベイシンガーとミシェル・ファイファーは本格的にお上手。
performed by Kim Basingerには正直驚きましたね。

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