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zoom RSS 映画評「不都合な真実」

<<   作成日時 : 2008/04/23 15:12   >>

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☆☆☆★(7点/10点満点中)
2006年アメリカ映画 監督デーヴィス・グッデンハイム

本作に関しては個人的にも特殊な作品なので、従来の映画評とは趣を異にすることを予め記しておきます。

生まれついて物を大事にする性格ではあったが、小学高学年の時であったろうか、植物が二酸化炭素を吸って酸素を吐き出す光合成を行うと知ってから僕は木を大事にしようと心に決めた。勿論現在のような深刻な問題が地球に起ころうとは夢にだに思わず、生物は酸素を吸うという単純な理由からだが、言わば直感が働いたのだ。その一環としてメモ程度の為にはノートを使わずに広告の裏を最大限利用することにし、今でもそれは続けている。
 電気の無駄を省く為になるべく長い時間家族全体でいるようにしているが、効果的に省エネするには大家族推進法案を作るべきだと夢みたいなことを考える。
 昨年購入したエアコンも一夏20時間使っただろうか。大体室温が34℃にならないと付けないので、今年が一昨年並みになれば半減。僕らが子供時代の気温なら使う必要すら感じない。また、僕の部屋には暖房器具が一切なかったが、さすがに寒くて仕事にならないので、一昨年やっとこたつを買った。それも常に最低にしているので、冷蔵庫ほども消費しない。

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かく40年くらい前に人為的な環境破壊への危機感を直感的に覚えた僕だから、1990年代半ばに京都議定書やISO14001などで世の中が騒ぎ出したのを「遅い」と苦り切って眺めていた。生き延びる為とは言え企業に相当の努力が認められる今、本作が市民を啓蒙しようと発表されたことに素直に拍手を送りたい。
 本作においては啓蒙が全世界というよりは危機意識の薄いアメリカ国民に向けられたものであることは容易に理解できる。先日の新聞によれば、日本人の過半数が「二酸化炭素削減の為に金をかけても良い」と考えているという。その落差は大きい。一方で、その日本人とて全員が環境問題に関心があるわけではないのは事実で、日本人が観る必要はないなどということにはならない。

しかし、僕の拍手は映画としての完成度に対して送られるものにあらず。
 ドキュメンタリーとは言え、啓蒙に努める余りに映画としての潤いに欠け、格別に目新しいことをやっているわけでもないので、映画としてそう褒めたい気になるほど素晴らしいとは言えない。が、それはあくまで純粋に芸術としてである。

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さて、フロリダの余りに不透明な選挙結果により2000年の大統領選に敗れ去ったアル・ゴア元大統領候補は全世界を回って1000回以上も地球環境を激変させる温暖化の怖さについて講演を行っているという。本作はその講演の模様の収録し再現することを目的としたもので至って単純な構成なのだが、実はこの作品の一番の殊勲はそこにある。余分な要素を極力排除して観客を瞬時にその講演会場に連れて行き、いやが上にも環境について考えざるを得ないような気にさせるのである。
 セミ・ドキュメンタリーの「ユナイテッド93」、ドラマ映画の「それでもボクはやってない」に近いタイプの作品と言って良いのではないか。従ってゴア個人に関する部分はもっと少なくて良かったと考える。

一部の学者が現在の温暖化は地球自体によるよくある変動の一つの波にすぎないと言うのを聞いたことがあるが、18世紀の産業革命以降漸次気温が上昇しているのも見ても<変動の波>というのはいかにも嘘っぽく、ゴアは温度上昇と関連付けられる二酸化炭素の量は過去65万年の最高値を遙かに超えていると論破する。中世以降に限れば、二つの上昇カーブは見事に一致している。
 二酸化炭素が多かった恐竜時代との比較は建設的ではない。余りに物事を大きな尺度で考えすぎると、地球が壊滅するのも成り行きという極論にまで行きかねないからだ。また、どこかの大学教授は「無駄な抵抗は止めた方が良い」と言うが、それなら学問など必要ないということになる。

あるいはゴアの選挙運動の一環であると指摘する人もいるが、そんなことはどうでも良い。仮にゴアの発言が欺瞞であっても、数字が多少不正確(海面が6m上昇するのは大げさ)であっても、観客の多くに地球を守るには我々の心がけが重要であると知らしめることが出来るか否かが大事なのである。

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懐疑派が唱える「環境問題の前にすること(例えば熱帯地域の感染症・伝染病患者の治療)がある」というもっともらしい意見を、二酸化炭素と地球温暖化の関係が100%否定されない限り、僕は一顧だにしない。仮に二酸化炭素が温暖化の最大の原因であった場合、将来感染症は現在の温帯地域にまで蔓延する。環境問題を二の次にすると、いたちごっこになってしまう。
 この論説をぶつ人は温暖化でダメージがあるのは熱帯だけで、温帯・寒帯には寧ろ恩恵をもたらすと言うが、西ナイル熱がアメリカで、マラリアが日本で流行ることを恩恵とでも言うのだろうか。専門家ではないので正確には解らないものの、人間以上にダメージを受けるのが動植物で、産業革命以降絶滅する種が加速度的に増えているのは事実であろう。

自国の経済が成立しなくなると京都議定書への不参加を決めたブッシュ大統領はイラク戦争を始めて、地球破壊に大貢献した。ゴアが2002年あの状況でイラクに派兵しなかったとは断言しにくいが、少なくとも企業に対しては何かしらのアクションを起こしたであろう。派遣しても撤兵の時期が早かったであろう。僕は別にゴアに与するわけではないが、ブッシュほど地球にマイナスになることはなかったと確信する。

芸術として考えた場合プロパガンダ映画は論外だが、本作の場合芸術として評価しないでおこう。人間として幸福を求めつつ地球の環境は保全できるという本作の主張は、僕の40年来の行動に一致するので、素直に認めたいのだ。40年前と同じ直感である。

映画評ならで、「不都合な真実」を擁護するの巻、でした。

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コメント(4件)

内 容 ニックネーム/日時
本作が世に出て1年半弱・・・
私が思うに、なぜこの映画の欠けている部分
だけでも良いから補填するような続編が
できないのでしょうね?・・・やはり
商いにならないからでしょう。(--)^^

ゴア氏というネームバリューが俄然
集客数に貢献したということですわね。^^

国際的には『紙より薄い危機意識』の国と
揶揄されているニッポン。

自分さえよければいい、という傲慢さが
闊歩する現代・・・紙より薄いものが
まだまだ他にもたくさんありそうですが。^^;

力強いプロフェッサーの記事に
後押しされて、この間終わったばかりですが
(笑)、今年もストーブを使わない冬に
私、トライしますわよ〜〜〜(^^)
viva jiji
URL
2008/04/23 16:00
先日はお気遣いありがとうございました。
本作、結局、劇場には行かなかった。見れば改めて思い知ることは多々あるとは思うのですが、逆に思い知らされることに疲れている…といってもいいかな?そんな気持ちがちょっと作用して、結局観にいかなかった。マスコミが元副大統領っていう冠にも少し反撥したのかも。こんなうたい文句でつらんと見に行かない問題か!って、ちょっと拗ねたとこもあった。でもWOWOWで4月放映していたんですよね。時間合あわずにみれず5月に見るつもり。ちょっと依怙地になって劇場に観にいかなかった本作。P様の熱きメッセージ読んで、ちょっと感動。
シュエット
2008/04/23 20:28
viva jijiさん、TB&コメント有難うございます。

>ゴア氏というネームバリュー
でも政治力でも何でも良いから、話題になってアメリカでも高い評価を受けたのは良いことです。
意地の悪い学者が意地の悪い言い方でCO2犯人説に色々と反論を試みていますが、まあ90%の学者が90%の確率で間違いないと言っているので、これがひっくり返ることはないのではないかな。

所謂エコロジーの考え(エコロジーとは本来生態学で別の意味)も人類のエゴと言われていますが、人類のエゴが生み出したことを排除・緩和しようというわけだから、エゴと言われようが、努力した方が良いですよね。^^

十分使えるのに省エネの為に新製品を買うことは、ゴミを大量に出すことになるのでお勧めできませんが、環境問題への意識が最終的に別の問題への資金源にもなると思います。
オカピー
2008/04/24 00:26
シュエットさん、コメント有難うです。

>元副大統領っていう冠にも少し反撥
別にゴアでなくても良いわけですが、マスコミの喧伝は別問題として、姐さんへのコメントでも申したように、知名度で観る人が増えるなら、芸術性ではなく啓蒙が目的ですから、それで良いと思いますね。

日本では既に繰り返し言われている程度のものでしかなくとも、初心に帰って地球温暖化というより環境問題について考えたくなると思いますよ。

>熱きメッセージ
子供の時から親に資源は、紙は大事にしないといけないよと言っていたのを、母親が憶えていて、よく思い出話になりますよ。
環境問題については黙っていられません。^^
オカピー
2008/04/24 01:42

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