映画評「ドレスデン、運命の日」

☆☆☆★(7点/10点満点中)
2006年ドイツ映画 監督ローランド・ズゾ・リヒター
ネタバレあり

ドイツの東西分断をテーマにした社会派サスペンスの大作「トンネル」を作ったローランド・ズゾ・リヒターの戦争メロドラマで、実はTV映画ということである。
 南北戦争を背景にした「風と共に去りぬ」のドイツ第二次大戦版と思えば当たらずとも遠くない。

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ナチス・ドイツ敗戦直前1945年1月のドレスデン、父親の病院に勤める看護婦フェリシタス・ヴォールは外科部長ベンヤミン・サドラーと恋仲だが、墜落して病院に逃げ込み地下室に潜んだ英軍パイロットのジョン・ライトを世話するうちに愛し合うようになる。

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婚約発表の2月13日、彼女は父親がモルヒネを横流ししたことを知り協力したサドラーに腹を立てライトと逃げ出そうとするが計画は頓挫、時を同じくして英空軍は聖母教会の立つ美しい街にして軍事的にも要衝だったドレスデンを徹底的に空襲、彼女は結局ライトやサドラーと共に燃える街を彷徨し防空壕に逃げるが、防空壕にも猛烈な熱やガスが襲ってくる。

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言わば三角関係に陥る看護婦の些か大味なメロドラマをベースに、彼女やその家族や友人夫婦の人生模様が繰り広げられるが、終盤の30分以上に渡って手に汗を握らせる戦火からの逃走場面が断然の見どころということになる。
 そのクライマックスはスペクタクルとしては見事だが、前半からの展開ではスケール大きく雪崩れ込んでいくのだろうと予想された群像劇が意外にこじんまりと推移して人間ドラマとしては薄味となり強い印象を残し得えていない。特に映画の<だし>として使えそうだったユダヤ人の夫を持つ親友の扱いにはもっと工夫の余地がある。

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エピローグの現在の場面を見ると、ドレスデンの復興に思いを寄せた作品らしく、その象徴的存在なのが2005年に再建が終わった聖母教会。だからこそ、このCG時代なのに破壊される前の教会の麗しい姿を遠方からではなく寄りの絵で捉えておかなかったのは勿体ない。特に外国人にはそのほうが感慨が湧いたはずだ。

といった次第で、一番の収穫は時にイングリッド・バーグマンを思わせる瞬間のあるフェリシタス・ヴォールという女優に出会えたことで、内容と併せて60年くらい前に戻ったようなクラシックな気分にして貰った。

モルヒネの行先はヒトラーなのでした。

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この記事へのコメント

シュエット
2008年03月11日 20:10
こじんまりまとまりすぎている感はありましたが、ただ、ドイツが自国の悲劇を描いた作品ということで、ちょっと感動しました。この監督は、前作のトンネルという作品もそうですけど、やや固さがあって、ドイツらしいなって思う。21世紀になって、本作や「善き人のソナタ」のベルリンの壁崩壊とか、先日外国語映画賞をとった「ヒトラーの贋札」など、こうやって少しずつドイツも第二次大戦とそれ以後の自国の歴史を語っていけるようになってきたと言うことでしょう。数年前のサッカー・ワールドカップでドイツが2位になった時、「これでドイツもヨーロッパで胸を張れるでしょう」というアナウンスに、まだ戦後は続いているんだって痛感しました。だから余計にこの映画には、作品レベルとは別に、ちょっと思いが入りました。
オカピー
2008年03月11日 23:26
シュエットさん、こんばんは!

こじんまりとしているのはTV映画ということもあるのでしょうが、日本のTV映画とはレベルが違いますねえ。
昨年TV映画版「点と線」を見ました。最近の作品としては力作の部類なんでしょうが、やはり描写力が弱くて腰が足りない不満がありました。

<続きますです>
オカピー
2008年03月11日 23:28
日本は国民の総意的に反戦映画を作れないんですよ。ヒトラーやナチスのような都合の良い悪役がいない。
一昨年の話題作「男たちの大和」なんて映画も反戦メッセージはありますが、「日本万歳!」的にも捉える人も出かねない。現に出演した俳優の中にはそれらしい発言をした方もいらっしゃったとか。

中国や韓国の煽りを受けて、祖国の悲劇も碌に知らないナショナリストが増えつつあるのも問題です。どちらが先なのか解りませんが、一方が右傾化すれば必ず片方も右傾化する。国民が、対外国ではなく対政府を常に意識しないと、国に利用されることになり、悲劇はまた舞い降りることになるでしょう。
19-20世紀型帝国主義の戦争はもう起こらないとは思いますけどね。

やはり東西統合により過去を見直せる余裕が出来て来たんでしょう。ドイツから入ってくる戦争・政治絡みの作品には優れたものが多く、邦画はちょっと引き離されましたね。
通りすがり
2009年02月04日 21:17
http://www15.ocn.ne.jp/~oyakodon/newversion/yudayasensou.htm

↑ユダヤ金融資本と第二次世界大戦の関係について書かれています。
 ホームページの作りがやや胡散臭く感じられるかもしれませんが(笑。

ちなみに、記事の元はここです↓

http://dokuritsutou.main.jp/

リチャード・コシミズという方がやってるこのサイトには、911やオウム事件の真相と背景、ユダヤ金融資本による世界と日本の支配構造、世界のエネルギー問題を一発で解決する「常温固体核融合」という技術の紹介、日本国内に巣食う二大カルト宗教の実態などなど、本当にためになる情報があります。

お時間ありましたら、是非。

突然の厚かましいコメント、失礼しました。

では、さようなら!!

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