映画評「ミクロの決死圏」

☆☆☆☆(8点/10点満点中)
1966年アメリカ映画 監督リチャード・フライシャー
ネタバレあり

CGで何でもありの今の映画しか知らない人にとっては地味にすら映るのではないかと思うが、様々な意味で素晴らしいSF映画である。

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某国(多分東欧であろう)から亡命してきた科学者が妨害工作員たちに襲撃され、脳を損傷してしまう、というのが始まり。
 これを手術する為に潜航艇共々5名、即ち、アーサー・ケネディ、ドナルド・プレズンス、ラクェル・ウェルチの医療関係者3名と、操縦者ウィリアム・レッドフィールド、彼らを危険から守る為に起用された情報部員スティーヴン・ボイドがミクロ化され、体内に送り込まれる。

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とにかく人間に人体内部を冒険させるという発想が得点源である。厳密には手塚治虫が遙か昔に着想していたらしいが、僕が最初に触れたのはこちらだから減点する理由にはならず、それより、この手の作品は視覚効果が駄目では素晴らしい着想も【無用の長物】になる。
 しかるに本作はその点も問題なく、当時のSFXの粋を集めて作り上げた色彩豊かな視覚効果が断然宜しい。赤血球だの白血球だのまともに観たことがないので何とも言えないが、僕らも体内を旅している気分に満ちる。

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それに加えて、医療関係者の中に妨害工作員が潜り込んでいたり、1時間でサイズが戻るようになっているので時限サスペンスが生じたり、手に汗を握らせる展開が続く。血管から心臓、耳から脳へという展開は言わば海中探検ものと宇宙探検もののヴァリエーションであるわけだが、夫々の場所でサスペンスフルな見せ場があり、見応え充分。
 リチャード・フライシャーの実録風のきちんとした作風は作品によって散文的につまらなく感じられることもあるが、本作ではその面が良い方に出て秀作になった。

人間の内部なのに明るすぎる、などという批判をする方もあるが、こういう奇想天外な話を余り現実に照らして観てもつまらず、そういう科学者のような見方しかできない方は不幸と言うべし。

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この記事へのコメント

豆酢
2008年02月25日 12:47
なんといっても、白血球に襲われ(溶かされ?)そうになるシーンが今でも目に焼きついています。
私がこれを観たのは子供の頃だったと記憶していますが、映画から受けた印象が強烈でした。多分この作品が、将来生物科に進む原動力になったのではないかと推測しています(笑)。

しかし、ラクウェル・ウェルチ姐さんが出てたんですねえ…覚えてないなあ(^^ゞ。
オカピー
2008年02月26日 02:15
豆酢さん、コメント有難さんです。<(_ _)>

>白血球に襲われ
悪役ばかりのドナルド・プレズンスがやられていました。

>生物科に進む原動力
それは凄いじょ。
僕は高校でひどい目に遭っているので、学問としての
生物は余り好きじゃないなあ。
しかし、遺伝は得意でした。^^)v

因みに、当方は完全無敵の文系でございます。

>ウェルチ姐さん
冒険ものには、悪役の男優と色添え役の女優は欠かせません。
演技はダメでも、肉体はなかなか素晴らしい。^^)/~
シュエット
2008年02月26日 19:31
これねぇ、やっぱり面白いですよね。これって。人体の中に入っていくっていう発想。何回も観ましたね。とってもリアル。何回見ても面白い。今回の放映ではちょっと録画していなかったけど、また放映されるでしょう。やっぱり観てみよう。
オカピー
2008年02月27日 02:38
シュエットさん、こんばんは。

>人体の中へ入っていく

これ、視点の転換でしょ?
宇宙にばかり目が行っている時代に、小宇宙に目を向けた。
面白いことに、人間が小さくなってみれば、小宇宙も大宇宙とそっくり。そんな発想ですよね。
ある意味哲学的ですらある。
しかし、ハリウッドは娯楽に徹する。こういう作品はそれで正解ですね。^^
十瑠
2008年03月04日 08:37
ちょっと出遅れましたが、BS放送の録画を観ました。

思い起こすに、映画館で観なかったのが、返す返すも悔しいです!!

オカピー
2008年03月04日 21:25
十瑠さん、こんばんは。

viva jiji姐さんも仰っているように、スケールの大きな作品であればあるほど映画館で見る重要性は増しますよね。
2008年03月17日 11:50
TB有難うございます。サイケな色彩の体内世界がとても美しかったです。船のデザインも今見ても格好良いです。これらのデザインはマイベストに入れたいですねー。
オカピー
2008年03月18日 02:33
ぶーすかさん、御苦労さまです。<(_ _)>

>サイケな色彩
世界でサイケがブームになるのは、もう1~2年がとこ後になりますが、派手派手で素晴らしいです。

>デザイン
そういう要素も大事ですね。
僕はすっかり着想と構成の見事さにしてやられてしまいました。
オンリー・ザ・ロンリー
2008年09月01日 11:03
「海底2万哩」、「ソイレント・グリーン」と本作品で同監督のSF三部作にしましょうよ。
オカピー
2008年09月01日 22:55
オンリー・ザ・ロンリーさん、こんばんは。

>SF三部作
します、します。
と言いますか、この作品の監督に選ばれたのは、「海底2万哩」の実績だったのかもしれないと思わされました。
シュエット
2009年06月12日 22:16
私一度コメントだけでお邪魔してたんだ。
子どもの頃に観て以来、数十年ぶりで観ました!
最近のCG映像見るたびにこの作品を思い出していました。
原題は「Fantastic Voyage」なんですね。今回記事あげて初めて知った。
この邦題には拍手だわ。
さて数十年ぶりに観たけれどP様も画像をあげてられる血管の中とか内臓とかリアルなCG画像よりもずっと観る側の想像力を引き出してくれる映像だわって今回観てつくづく思いました。だから私、息子が子どもの時に竹内均さんが編集されていた雑誌「ニュートン」をよく買ってあげてた。ニュートンの絵ってイラスト何ですよね。それが想像力を引き出すなって思う。それも振り返れば本作の影響だなって思います。体内という小宇宙の神秘と、生命を守るための戦いのメカニズムが見事に描き出されていて、手術が軍事と直結していて、いやぁ最鑑賞して改めてよく出来ているなって思って嬉しい限り。TBもってきました!
オカピー
2009年06月13日 00:53
シュエットさん、こんばんは。

>CG
はリアルですが、夢がなく造形の面白さがないので、昔のスタッフがこつこつ作った美術には楽しさという点で到底及ばない。
「“不足”が映画を良くする」が僕の持説。CGで何でもできるようになれば却って映画がつまらなくなるのは、僕にとっては、火を見るより明らかなのでした。

>小宇宙
宇宙というだけに体内冒険は大宇宙にも似ていて大変面白い。どちらかと言えば、大宇宙以上に地底冒険ものの雰囲気ですね

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