映画評「スキャナー・ダークリー」

☆☆★(5点/10点満点中)
2006年アメリカ映画 監督リチャード・リンクレイター
ネタバレあり

四半世紀前に亡くなっているのに未だに映画化が続いているフィリップ・K・ディックの映画化ということで注目するSF好きの映画ファンもいるだろうが、芸術タイプと娯楽タイプの二刀流になっているリチャード・リンクレイターが「ウェイキング・ライフ」に続いて実写をアニメ化するロトスコープを使っていることに着目するのがごく一般的と言えるのではないかと思う。

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近未来のアメリカ、脳を破壊する幻覚剤Dの密売を取り締まる為に街には監視システムが構築され、スクランブル・スーツと呼ばれる次々と容姿が変わっていく衣装を身にまとって身を守るおとり捜査官が闊歩している。その一人フレッド(キアヌー・リーヴズ)は、ジャンキーの恋人ドナ(ウィノーナ・ライダー)と付き合っている中毒者アークターとして振舞ううちに麻薬に冒され、自分を見張るという行為を押し付けられても解らなくなる。

というお話で、わざわざ高いコストと長い時間をかけて作った割に効果がないと思わせた極めて哲学的な「ウェイキング・ライフ」に比べれば、ロトスコープ固有の揺らぎが主人公の脳内の渾沌に重なり、かつてのLSDとサイケデリック映像の関係と同じように、効果としては認められるものがある。しかし、殆どが実写をベースにしていることを考えれば実写で十分だったのではないかという疑問を拭えず、馬鹿馬鹿しいほどの時間とコストを掛けるのは勿体ない。

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翻って内容については、煙草すら吸ったことのない僕には麻薬に興味が湧きにくい上に、主人公の頭の中と同じようにもやもやしたはっきりしない場面が続くので退屈感が先に立つ。
 お話として俄然興味深くなる終盤の展開に関しては本作の性格上、説明してしまうと面白さが減るので控えるが、少なくとも表面的には世間で言われるほど解りにくいとは思えない、とだけ述べておきます。

ところで、原作を読んでから見た方が面白くなる、という意見を本作の感想に限らず目にする機会が増えている。しかし、鑑賞者の頭脳を一定とした場合事前に情報を得ないと解らないようでは映画の作り方が悪いと考えるべきである。
 深遠な内容だから再鑑賞して理解を深める方が良い作品と、作り方が悪くて難解だから再鑑賞せねばならない作品は、似て非なるものだ。
 ただ、同じ金を払うのだからより楽しめる方法を取るのは健全であり、評価と別に考えれば良いとは思う。

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この記事へのコメント

シュエット
2008年02月18日 16:51
ハ、ハ、ハとのっけから笑ってしまってすみません。
いえ、私この映画、ミーハーで久々のキアヌとウィノナが出てるんでいようかなと、ちらっと頭をよぎっていたもんですから。結局、P様が言われるような<わざわざ高いコストと長い時間をかけて作った割に…>と見る時間が惜しいかなと思って見なかったんです。先日放映していて見ようかなとも思ったけれどみませんでした。お疲れ様でした。
オカピー
2008年02月19日 00:47
シュエットさん、こんばんは!

1分作るのに数十人がかりで30日も掛かると吃驚しましたが、製作上の苦労を映画の評価に加味するのは邪道です。
実写でも大して評価は変わらないと思うんですよ。
それどころか同じ世界観が実写でできたら「文句なし」というご仁もいらっしゃるくらいでして。

ご覧になっていない作品へのコメント、有難うございました。
2008年02月22日 22:30
はじめまして、こんばんは。
>馬鹿馬鹿しいほどの時間とコストを掛けるのは勿体ない
同感です。
だったら、最初からアニメで作ればいい話ですよね。
オカピー
2008年02月23日 03:51
800さん、初めまして!

効果がないとは言えないまでも、気の遠くなるような作業と聞きました。

実写を撮っているのですからそのまま使えるわけですし、仰るように完全なアニメでも良いわけですよね。
何だか勿体ないなあ。

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  • スキャナー・ダークリー

    Excerpt: A Scanner Darkly (2006年) 監督:リチャード・リンクレーター 出演:キアヌ・リーブス、ロバート・ダウニー Jr.、ウィノナ・ライダー フィリップ・K・ディックの原作を実写映像.. Weblog: Movies 1-800 racked: 2008-02-22 22:11