映画評「プラダを着た悪魔」

☆☆☆★(7点/10点満点中)
2006年アメリカ映画 監督デーヴィッド・フランケル
ネタバレあり

「マイアミ・ラプソディー」以来の日本劇場公開作となるデーヴィッド・フランケルの“ロマンティック・コメディ”であるが、ジャンルについては評価に関係しているので改めて後述したい。

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ジャーナリスト志望の娘アン・ハサウェイが冴えない服装に身を包み、腰掛けの仕事として超一流ファッション誌「ランウェイ」の編集長メリル・ストリープの助手を志願する。
 ファッションにうるさいはずの編集長という噂なので見込みなしと思いきやその場で採用されるが、人使いの荒さにすぐに音を上げてしまう。編集ディレクターのスタンリー・トゥッチに用意して貰った高級服に身を包むと仕事運が上向き、恋人エイドリアン・グレニアとの時間を割いた結果、やっと一人前の助手として認められるようになるが、パリで仕事の為に私生活や家庭を犠牲にしている編集長の姿に考えさせられ、結局辞職して彼の許に戻り一般出版社でジャーナリストの道を歩み始める。

流行は全く追わないが、「ファッション通信」を20年間も観ているのでこのタイトルの意味はよく解るし、本作に出てくるデザイナーの名前は全員知っているおかげで結構楽しく観られた。しかし、楽しめたということを前提に作品の性格の曖昧さにちょっと文句を言わねばならない。

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幕切れを見ればヒロインのサクセス・ストーリーを軸としたロマンティック・コメディである。しかるに、本作でメリル扮する編集長は才能も影響力もあり、確かに生活を犠牲にしている面もあるが、子供やペットの世話を別にすればキャリアウーマンとしてほぼ当然の立場を主張しているに過ぎないように見えるし、<悪魔>とは言いにくい。
 純粋にロマンティック・コメディとしての立場であれば彼女をもっとデフォルメして大いに不幸な悪女として描くべきだが、本作のメリルは最後まで格好良い。すると本作は恋と仕事の狭間で悩むキャリア・ウーマンをテーマに据えた女性映画として理解したほうが落ち着く。そうであるなら寧ろ私生活より仕事を選ぶという幕切れにして新味を狙う手もあったのだが、幕切れで大した熟慮もないまま私生活を重視した人生を選ぶというロマ・コメ的な立場に戻ってしまう。かと言ってそうした曖昧さを意図したとも感じられず、「帯に短し襷に長し」という印象を免れないのである。
 そもそもあの段階で私生活を選ぶようでは、ヒロインのジャーナリストへの道は厳しいのではないだろうか。

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アン・ハサウェイは外見的に好みではないものの適材適所。(演出意図が不鮮明なので評価しにくいものの)メリル・ストリープはさすがの貫録と言っておきましょう。

因みに、デザイナーの名前こそ知れ、ファッションについての含蓄は全くないので言及できない。悪しからず。

編集助手版「パリの恋人」。

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この記事へのコメント

2008年01月05日 19:54
こちらへは今年初めてのコメント&TBでございますね。
あらためて本年もよろしくお願いいたします。

本作はプロフェッサーがおっしゃるように
まるで敵役のような描き方のミランダ側は至極真っ当であり
ハサウェイはどこにでもいそうな現代娘っこなのね。
原作がこうなんでしょうが、各所に詰めが甘いホンで
終盤は、なんですか、コレ?ってつぶやきたくなるほど
ダラシのない終わり方でございましたわ。^^

きらびやかなブランドの衣類や小物でホッペタ撫で撫で
されても当方こないなチャチイお話では不満足モード。(--)

時代の先端を行くファッション業界や芸能界など
華やかに見えれば見えるほど、その陰では多大な
犠牲が払われているはず。

目にはあざやかでしたが、結局、
何も残らないファッション雑誌のような映画でした・・
っと言ったら言い過ぎかしらん?(笑)
2008年01月05日 21:06
こんばんは。

あけましておめでとうございます。

この映画、深く考えなければ
テンポもよくけっこう楽しいのですが、
ラストで、あれっ?って感じ。

二兎を追うもの、なんとやらってことでしょうか。
オカピー
2008年01月06日 01:56
viva jijiさん

>ミランダ
当方も長い間会社でこき使われた口で、結構理不尽なことも経験しましたから、あのくらいは当たり前とまでは言わないまでも十分有り得るでしてね、「ハリー・ポッター」騒動はまあ別格として。
全くまとまりのない中国人十余名を抱えて、東京巡りをした時は大変でしたよ。TT

映画に戻れば、ファッション業界なんて「生き馬の目を抜く」業界の典型でしょうね。その点我々は多少は楽だったかも。

>ファッション雑誌のような
ヒロインが柱を通り過ぎるたびに服装が変わる早変りのような演出はなかなか良かったと思いますが、それ以上のものではなかったかな。^^;
オカピー
2008年01月06日 02:02
えいさん、こんばんは。

全くその通りですね。

逆に曖昧さを出していかにも現在の映画というアプローチもあったのでしょうが、ハリウッドの喜劇仕立てのメジャー映画ではそれは「木によりて魚を求む」ことかもしれませんねえ。
2008年01月07日 23:38
こんばんは♪
ミランダは理不尽なことも言ってましたが、それでも「悪魔」というほどではなかったなと思います。
自分自身あの業界で努力してあそこまでに上りつめた人ですし、最後は懐の深さを見せましたよね。
ラストはあれれ?とはなったものの、衣装を見ているだけでも楽しく、音楽もとても好みだったので、一昨年のベストテンに入れちゃいました。
オカピー
2008年01月08日 02:48
ミチさん、こんばんは♪

>ミランダ
そうでしょう?
僕の上司だってあれくらいのことは言いましたよ。
最後は、ちょっと悪党ぶってその上にあんなお墨付きを与えちゃって・・・本当に有能な人に描かれていましたね・・・だから最後はちょっと物足りないのですが。

>ベスト10
おおっ、そうでしたか
僕も楽しみましたよ。
でも、癖で色々と文句を垂れて観るわけです。(笑)
悪しからず。^^;

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