映画評「老親」

☆☆★(5点/10点満点中)
2000年日本映画 監督・槙坪夛鶴子
ネタバレあり

癌で入院中の父(米倉斉加年)を世話していた東京の主婦・成子(萬田久子)は、奈良の姑が倒れた時長男である夫(榎本孝明)の代りにいの一番に駆けつけ、その死後残された舅(小林桂樹)の介護をし、その悪戦苦闘ぶりを書き綴ってノンフィクション作家として収入を得、いつしか7年の月日が経つ。
 夫の大阪転勤が決まったので「もう大丈夫」と離婚を決めるが、半年後羽を伸ばしていた成子の許に独立したはずの娘(岡本綾)だけでなく舅がやって来て、結局同居することになる。家事のことを何にも知らぬ老人ではあるものの、少しずつ成長して家事をこなし、互いに相手を必要と思う迄に至る。舅の死後はいじめられ続けてきた実母(草笛光子)の看病が待っている彼女である。

ノンフィクション作家・門野晴子の実体験を教育映画を作っていた槙坪夛鶴子監督が初の商業映画として映画化したドラマで、基本的に日本各地で少なからぬ主婦の方々が似たような経験をしていると思われるお話だが、離婚してせいせいしたと思ったところへ舅が姿を現すのには些かびっくり、「事実は小説より奇なり」の感あり。

幸か不幸かヒロインは勝ち気ではっきりした性格で感情をすぐに表に出すから上手くやって来られたという部分があるだろうし、映画もその辺のコミカルさを前面に出して構成し、老人問題につきまとう陰鬱な印象を回避しているのは宜しい。
 その関連で面白いエピソードが多くて退屈させないが、それがドラマとして一本にうまくまとまっているとは言い難く、商業映画としては今一つ物足りない。換言すれば、即実的すぎて映画的な味わいや潤いが不足しているのである。

介護を含めた家事を誰がどう扱うべきかというのはなかなかデリケートな問題で、一部の女性学者(?)の考えには賛同しかねるところがあるものの、女性だから或いは長女だからと介護を押し付けられるヒロインが不平等感を覚えるのは当然至極で、そうした立場の人に一方的に介護を任せるような国民全体の態度では、来るべき超高齢化社会において悲劇が多く生まれるのではないかと不安にかられる。

だからこそ舅が元嫁の厳しく温かい指導の下に家事ができるようになり、お互いに信頼を置くようになる過程は大変感動的である。映画としての物足りなさとは別に、考えるべき内容を多く含んだ作品と言うべし。

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  • 「老親」

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  • 老親 #1097

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