2007年私的ベスト10発表~または1年遅れのベスト10~

群馬の山奥に住み、体調も万全とは行かず、WOWOWを中心にした映画鑑賞生活ですので、私の2007年私的ベスト10は皆様の2006年にほぼ相当する計算でございます。初鑑賞なら何でも入れてしまうので、時々古い作品も入ったりします。

因みに2007年の鑑賞本数はほぼ例年並の425本、再鑑賞作品は89本。つまり、336本が初鑑賞。新作鑑賞数は昨年より28本増え、例年に近付きました。


1位・・・ブロークバック・マウンテン
同性愛を、特に男性のそれを描いた作品は苦手ですが、本作では美しい映像に登場人物の心理が深く沈潜して見事でした。主人公たちに同性愛に傾倒していく心理が曖昧ではないかという批判も、彼ら自身でさえはっきりしていないのだ、という推理が成立するので「特に問題なし」でありましょう。「いつか晴れた日に」以来のアン・リー監督の傑作。

2位・・・サラバンド
今は亡き人物に支配される危うい家族関係を描いた完成度に加え、イングマル・ベルイマンの逝去という理由もあり、1位にしようかと迷ったのですが、まだ内容が掴み切れていないと思うので、この位置にしました。その代わり部門賞の監督賞と脚本賞をベルイマンとこの作品に捧げます。合掌。

3位・・・善き人のためのソナタ
監督の名前が長くて憶えにくい、ええと、フロリアン・ヘンケル・フォン・ドナースマルクですかね。主人公の少しずつ変わっていく心理を鮮やかに浮かび上がらせて見事、映画学校卒業作品とは俄かに信じることのできない出来栄えでした。主人公を演じたウルリッヒ・ミューエも文句なし。最近のドイツ映画の躍進は凄い。新人・若手ばかりでうんざりの映画界に楽しみな人が出てきました。

4位・・・ユナイテッド93
ドキュメンタリー・タッチの臨場感に圧倒され、観た当初はこれを1位にしようと思ったですよ。構成に若干の不満がありますが、飛行機の中の撮影も実は大変計算されているのに感心しましたね。つまりあの映像の揺れ方・乱れ方の一つ一つが全て綿密に計算されたものだから凄いんです。乗客が手を取り合って云々という感想はこの描写力なしにはありえない。

5位・・・ブロークン・フラワーズ
現在40~60くらいの年齢の男性なら心を掴まれそうになるジム・ジャームッシュの名編。その証拠に女性の反応は極めて否定的でした。「ストレンジャー・ザン・パラダイス」の頃とタッチは殆ど変わっていないけれど、良い意味での低回性が出てきて誠に感慨深い。音楽も抜群でしたね。

6位・・・麦の穂をゆらす風
戦争絡みの作品がベスト10に入らない年は殆どなく、2007年はケン・ローチのこの作品に胸を揺さぶられましたね。どんな戦争も良いわけがないですが、同国人同士の内戦はなおさら悲劇性が増す。豊かな自然を眺めるうちに、欲望に縛られる人間がつくづく愚かに見えて来ますよね。

7位・・・人間の条件
観たと思っていましたが、勘違いだったようです。五味川純平の原作も有名ですが、9時間を超えるこの大作の迫力には声を失いますよ。これも反戦映画の名作と言って良いでしょう。
新作の日本映画では山田洋次の二本「武士の一分」「隠し爪 鬼の剣」がベスト10の考慮に値するくらいでしたね。そこまでは行かないまでもほやほやの新作「犯人に告ぐ」は世間的に実力に見合った評価がされたとは思えず残念。

8位・・・天空の草原のナンサ
実際の親子を役者として起用したドキュメンタリー的なドラマで、モンゴルにおける現在の遊牧生活の一端を描き出す。厳しい面に殆ど触れられていず偏った印象があるものの、肉親間の細やかな情愛の交換に良い気持ちにさせて貰いました。

9位・・・マッチポイント
ウッディ・アレンが現在英国版「陽のあたる場所」若しくは「太陽がいっぱい」を、「罪と罰」をモチーフに作ったようなシリアス・ドラマ。しかし、英国上流階級への視線には米国人ならではの諧謔性があり、アレンらしい皮肉は健在。指輪の扱いが抜群に上手く、ご機嫌になりました。そのせいでベスト10に食い込んだとも言えましょう。

10位・・・M:i:Ⅲ
入り組んだ作品以外はなかなか評価して貰えない時代ですが、2007年は直球的な娯楽作品に良いものが多くて何とかリストに加えたいという気持ちを捨て切れず、見せ場のオンパレードにご機嫌になった本作を入れました。但し、スパイの私生活を描くのは基本的に宜しくない。その他「スーパーマン・リターンズ」「X-MEN:ファイナル・ディシジョン」が優秀でした。


次点・・・悪い男(良い映画ですが、キム・ギドクには期待するものが大きいので、敢えて圏外に)

画像

ワースト・・・アンダーワールド:エボリューション(ゲーム以上のものではない)



****適当に選んだ各部門賞****
監督賞・・・イングマル・ベルイマン~「サラバンド」
男優賞・・・ウルリッヒ・ミューエ~「善き人のためのソナタ」
女優賞・・・ミシェル・ウィリアムズ~「ランド・オブ・プレンティ」「ブロークバック・マウンテン」
脚本賞・・・イングマル・ベルイマン~「サラバンド」
撮影賞・・・ロドリゴ・プリエト~「ブロークバック・マウンテン」
音楽賞・・・(ジム・ジャームッシュ)~「ブロークン・フラワーズ」

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この記事へのコメント

2008年01月15日 12:09
オカピーさんのベストテン楽しく拝見しました。 こんなふうにベストテンを発表するのって大変時間がかかったのではないですか? それとも意外とすんなりだったのかしら。 わたしも「善き人のためのソナタ」と「麦の穂をゆらす風」大好きです。
オカピー
2008年01月16日 00:59
みのりさん、こんばんは。

昨年のベスト10ではたくさんのコメントを戴いたのですが、今年は何だが反応が鈍いです。
みのりさんのおかげで【コメント0】を回避できました。^^)v

30年くらい前から25年間ほどベスト40を選出していましたから、ベスト10選出は比較的楽です。
それでも下位になるほど競合作品が増えるので、迷いに迷って「えいやっ!」となるまでに時間がかかるわけですが。

>「善き人のためのソナタ」「麦の穂をゆらす風」
人間の複雑性を感じさせる両作品ですね。良い作品でした。
カカト
2008年01月16日 19:48
オカピーさん、こんばんは。

このベスト10の中で私が観た事のある映画は「ユナイテッド93」のみです・・・。
最近はお母さん友達との映画の話すらついていけません・・。寂しい。

「ユナイテッド93」は、もし私があの事件になんらかの関わりがあったなら、とても大事に、遺品を眺めるような特別な映画になったのではないかと思います。
不謹慎な考え方かもしれませんが、私なりに映画に敬意をはらって観た作品です。
オカピー
2008年01月17日 03:42
カカトさん、こんばんは♪

何だかお忙しいようですね。
良く書き込んでくれたブログ友達の方々と相次いで音信不通になって、非常に寂しい思いをしております。
カカトさんもお時間を作って上のうち何本かでも観て戴けると嬉しいですね。好みはあろうかと思いますが、いずれも上質の作品です。「ブロークン・フラワーズ」は女性に受けないのですが。

>「ユナイテッド93」
映画ファンとしての僕は、「映画化には時期尚早」といった否定的な意見を悲しく思いましたね。映画化することが不謹慎なのか、出来た映画を<楽しむ>のは不謹慎なのか、と。
そういう方は事実と映画を余りにも混同しているのではないでしょうか。映画でも小説でも、大概の作品は、特定のものに代表させて普遍的なものを描いているのに過ぎません。この作品にしても、特定の人々ではなく、彼らを含め、遍く人間を描いているわけですよね。
豆酢
2008年01月17日 13:37
コメントが遅くなりまして<(_ _)>

「ブロークン・フラワーズ」、女性に不人気だったのですね。気づきませんでした(笑)。私自身は、主人公ドンと自分の間に共通点が結構あったので(苦笑)、なんだか笑うに笑えないというか…我が身を見せられているようでいたたまれなくなるというか…(しくしく)。

「善き人のためのソナタ」と「ユナイテッド93」は、もう一度じっくり鑑賞してみようと思っています。先日映画館にて鑑賞できた「ジェシー・ジェームズの暗殺」は、「ブロークバック~」に似たニュアンスの作品でした。ハリウッド映画らしくない雰囲気で、私自身は気に入ったのですが、懸念したとおり一般的には賛否両論のようです(笑)。

「マッチポイント」は未見です。今度観てみますね。
2008年01月17日 20:19
な、な~んとわたしはオカピーさんイチオシの「ブローク・バック・マウンテン」をいまだ見ておりましぇ~~ん(汗)
アン・リー監督は「ラスト、コーション」がひかえてますよね。
原作読んだのですが???よくわかりません。
これをどのようにあれやこれやくんずほぐれつにしてくれるのか、今から楽しみにしているのですが・・・・(笑)

「善き人のためのソナタ」と「ユナイテッド93」が入ってるのが嬉しいですね。
時間はかかるかもしれませんが、この10本は押さえておかないといけませんね(再汗)
オカピー
2008年01月18日 02:27
豆酢さん、こんばんは。

やっと格好がついてきました。コメントかたじけないです。

>ブロークン・フラワーズ
昨年「キネマ旬報」の記録を調べてみましたら、女性ではたった一人ベスト10に入れていただけで後は全て男性なのでした。
僕は特別男性の為の作品とも思えなかったのですが。

>ジェシー・ジェームズの暗殺
ジェームズさん、相変わらずの人気ですね。
ニューシネマ以降で有名なのはウォルター・ヒルの「ロング・ライダーズ」ですね。
今世紀に入っても一本ありました。
かつてタイロン・パワーとヘンリー・フォンダがジェームズ兄弟を演じた「西部への道」なんていうのもありましたよ。

>マッチポイント
傑作という感じではないのですが、スリラーとしてもきちんと作っていて気に入りました。
オカピー
2008年01月18日 02:39
しゅべる&こぼるさん、こんばんは。

コメント有難うございます。

>ブロークバック・マウンテン
あらま。ご覧になっていない、とな。(笑)
特殊な世界と言えるかもしれませんから、観客を選ぶ作品かもしれませんが、素晴らしいですよ。

>ラスト、コーション
Last Cautionなのかと思いきや、Lustなんですね。まあ「欲」といったところですか。勘違いも起こしやすいですし、カタカナでない邦題を望みたいですね。

>この10本
色々なタイプの作品が入りましたので、ラインアップとしては満足しました。一度は観ておくべき作品群と言って良いと思います。
豆酢
2008年01月18日 23:28
タイロン・パワーとヘンリー・フォンダ共演のジェシー映画(笑)は、「地獄への道」…でしたよね(^^ゞ?「西部への道」というジェシー映画もあるのでしょうか。

プロフェッサーも、来年ぐらいには(笑)ちょっと観てやってください。ご意見をうかがってみとうございます。はい。現在の段階では、大層不人気な評価でございます。
オカピー
2008年01月19日 00:20
豆酢さん、こんばんは!

>地獄への道
あわわわ! マイCPUが老化してしもうた。
豆酢さん、凄いじょー。^^;
リメイクが「無法の王者ジェシー・ジェイムス」、バッファロー・ビルの伝記映画が「西部の王者」で・・・
といった流れで、マクラグレンの「大西部への道」と題名が混同したようです。^^;

>来年ぐらい
そう言われると映画館へも行きたくなりますが、それが無理ならDVDで早めに観るのも良いかな。
とりあえず、早めに観るリストに入れました。

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